「育児を育“事”と割りきるとラクになれた」カーリング・本橋麻里の気づき

ロコ・ソラーレ代表・本橋麻里さんインタビュー「スポーツと育児の相乗効果」2/4 ~育児と育事編~

竹田 聡一郎

サロマ湖畔にて。「常呂町は何もないけれど大自然だけはあります」(本橋麻里さん)
写真/森清 『0から1をつくる 地元で見つけた、世界での勝ち方』(講談社現代新書)より引用

2006年のトリノで五輪に初出場し、2010年バンクーバー、2018年平昌(ピョンチャン)では銅メダル獲得と、アスリートとして成功しながら、ひとりの女性としても妻となり母となり、人生のステップを進めてきた本橋麻里さん。その度に「当事者にならないと分からないものがたくさんありました」と振り返ります。

そして現在、カーリング選手として第一線で活躍できる理由のひとつに、「割り切り」があると語りますが……。

平昌五輪のメダル獲得ができた原動力に家族の存在があった

本橋麻里さんは競技者として第一線でカーリングを続けながら、2012年に結婚。2015年には第一子となる長男を出産します。
カーリング界に先輩ママさんはたくさんいて、事前に育児の経験やアドバイスをもらっていたのですが、本橋さんは「もちろん、すべて役に立つありがたいものだった」としながらも「どこかピンと来てない部分もあった」と振り返ります。

「どんなに大量の情報を仕入れていても、やっぱり実体験に勝るものはなかったですね。私は不器用なので当事者になってみないと本質的には理解できなかったんです。おそらく小さい頃、何千回も言われた『おもちゃ自分で片付けなさい』って、『ああ、私も実際に言うんだ』と思って、ちょっとおもしろくも不思議な感情でしたね」

初めての育児に奮闘しながらも、2018年には自身としては三度目の五輪に出場を果たします。さらにその平昌五輪では日本カーリング史上初のメダルを獲得するなど、競技でも結果を残しました。
このときも先輩からの「家族の存在は力になるよ」というアドバイスを当事者として実感したと本橋さんは語ります。

「五輪というものは良くも悪くも本当にすごいエネルギーが発生する場所で、大きな楽しさやうれしさがある一方で、それに比例する形でプレッシャーや疲労も増すことがあります。

それまでの2大会はそれらを自分の中で消化と処理をしないといけなかったのですが、平昌五輪には家族ができていました。旦那さんが当時3歳になるかくらいの長男とはじめての父子旅行として韓国まで来てくれて、オリンピックパークを一緒に散歩したり、選手村のそばの焼肉店で食事をしたりと、ささやかですが、その思い出は間違いなく、私が五輪という大一番で踏ん張れる原動力になってくれました」

平昌五輪で家族に会えたことについて「私が憧れていた家族のカタチが実現できた」(本橋麻里さん)
ZOOM取材にて
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