【別居・離婚を決意】子どもへの伝え方と絶対言ってはいけないこと

社会福祉士・小森雅子氏「大離婚時代の子どものメンタルケア」#2〜別居・離婚の伝え方編〜

「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」理事・社会福祉士:小森 雅子

幼い子どもを傷つけず、「親の別離」を話すにはどうしたらいいのか。社会福祉士の小森雅子氏に話を聞きました 写真:アフロ

ある日突然、片方の親が家からいなくなった――。小学校低学年くらいまでの幼い子どもは、この事実をどう受け止めるのでしょうか。そして親は、子どもにどう事実を伝えたらよいのでしょうか。

厚生労働省の統計(※1)によると、2020年の離婚件数は年間19万3253件。そのうち未成年の子どもがいる離婚件数(※2・3)は、11万1335件と約6割に及びます。
※1=「令和2年(2020年)人口動態統計(確定数)の概況」
※2=年次別にみた夫妻が親権を行う子の数別離婚件数及び百分率・親が離婚した未成年の子数及び率(未成年人口千対)
※3=内閣府男女共同参画局「結婚と家族をめぐる基礎データ」

別居や離婚に関して多くの相談を受けている、NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむの理事で社会福祉士の小森雅子氏が、夫婦の別離時「子どもへの伝え方」について答えます。

別離を伝えるときに気をつけたい2つのこと

別居や離婚は子どもにどこまで具体的に伝えるか。聞かれるままに全部正直に答えていいのか。悩みますよね。

そもそも未就学の子どもは、結婚制度自体を理解していませんよね。ですから、幼いうちは、「離婚」という言葉を使うよりも「パパとママは一緒に暮らせなくなった」「パパとママが話し合って決めたんだよ」という平たい表現で十分だと思います。

ただ、気をつけてほしいことが2つあります。

【1】できるだけ事実を話すようにする
【2】もう片方の親を非難しない

これは、子どもと同居して養育する親(以下、「同居親」)、子どもと離れて暮らすことになった親(以下、「別居親」)両者への共通のお願いです。

【1】できるだけ事実を話す からご説明しますと、同居親の中には、子どもが物心つく前に別れ、子どもの記憶が全然ないからということで、パパ(ママ)はいないことにしたり、亡くなったことにしようとする人もいます。

祖父母や親族にそうするよう提案されることもあり、昔はそういった例が多かったのかもしれません。ですが、これはタブー。子どもは、今は小さくても必ず大きくなり、真実を知る日が来ます。

タイミングは人それぞれですが、例えば、進学、就職、結婚など、子どもにとって人生の節目に戸籍を見たとします。その時、他界したはずの片親が実は生存していたと知ったら、どんな気持ちになるでしょう。

大きなショックとともに育ててくれた同居親への不信感がわいてくるのではないでしょうか。しかも、大きなライフイベントを前に事実を知ったら、その影響も心配ですね。

もちろん、状況によっては、子どもに事実を伝えたくないと思う場合もあります。一度にすべてを伝える必要はありません。「もう少し大きくなったら話すよ」でもいいのです。

多くの子どもは成長するにつれ、事実を受け入れられるようになります。本人の成長や心理状況をよく観察しながら、真実を伝える準備をしておきましょう。

【2】もう片方の親を非難しない ですが、離婚を伝える時、セットで話した方がいいのは、「パパとママが一緒に暮らせなくなったのは、あなたのせいではないんだよ」ということ。

幼い子どもは、親の病気でも何に対しても、「目の前の出来事は自分のせいでこうなったのではないか」と考える傾向があります。それゆえ、両親が離れてしまったのは「自分が悪い子だからだ」などと思ってしまう。

だからこそ、同居親、別居親を問わず、親は子どもに「あなたは何も悪くないんだよ」「パパとママが話し合って決めたんだよ」としっかり伝えてほしい。

そのうえで、「パパとママは今、仲良くできないけれど、二人ともあなたのことをすごく大事に思っているよ」ということを話し、安心させてあげてください。①「あなたは悪くない」と、②「あなたは大事」、このどちらも必要です。

子ども自身が「自分は二人に大事にされている」という思いを持つことで、「別居親が自分のことを嫌いになって見捨てたのではないか」といった不安が減り、安心感につながります。

もし子どもが片方の親から「大事にされていない」と感じているようなら、過去の話を引っ張り出してもいい。「あなたが生まれた時、パパもママもすごく喜んだんだよ」など、何か一つでもエピソードを話すといいでしょう。

子どもにとって親は自分の一部

もう一つ、子どもに離婚の事実を伝える時、相手の悪口や愚痴を言いたくなってもできるだけ言わないように。言いたくなったら、子どものいないところで、友人など大人に話してください。

身近に話せる人がいなければ、私どもの団体「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」の電話相談でもOKです。

なぜかというと、子どもにとって親というのは、単なる「好きな人」「信頼できる人」以上の存在だから。自分を形作っている要素の一部、いわば自分の一部のような存在なんです。

ですから、たとえ自分から見てどんなにひどい親やパートナーであったとしても、そのことを子どもと分かち合おうと思わないで。自分から見た相手と子どもから見た親というのは、存在として違う。そこは分かってあげたほうがいいですね。

夫婦は別れたら他人ですが、親子は別居しようが離婚しようが親子のままですから。

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