子どもが暗算十段に6歳で合格! ママの試行錯誤がスーパーキッズを育てた

「子どもに何を教えていいのかわからない」から教育をスタート 子どもの力を伸ばしたママに聞く教育術#1

スポーツや楽器など、子どもの習い事はさまざまありますが、右脳を育てるそろばんは隠れた人気を誇ります。画像は全国暗算技能検定で最高位の十段に合格した際の旺汰くん。  画像提供:中澤祐香

子どもの教育に関しては、今も昔も誰もが試行錯誤をしています。

育児書などでは「子どもの個性を幼いころに見極めて、子どもの持つ力を伸ばしてあげましょう」などと書かれているものを目にしますが、子どもを観察して、その興味思考をバッチリ見抜ける親はどれほどいるでしょうか。

仙台市在住の中澤祐香(なかざわゆうか)さんは、公益社団法人 全国珠算教育連盟が行っている全国暗算技能検定で最高位の十段に6歳10ヵ月で合格した旺汰(おうた)くんの母親です。

子どもの素質を幼いころに見定めた結果、旺汰くんのスーパーキッズとしての才能が開花したのかと思ったら、実はそうではないよう。

周囲の親と同じように、子育ての過程で不安を感じたり、迷ったりしてきたそうです。試行錯誤をしてきた中澤家のこれまでの教育を、母親の祐香さんにうかがいました(全2回の1回目)。


■中澤祐香さんのプロフィールーーーーーーー
宮城県仙台市在住。全国暗算技能検定において、最高位の十段に当時6歳10ヵ月で合格した中澤旺汰(おうた)くんの母。「そろばん日本一」を目指す息子の夢を叶えるため、普段だけではなく、大会や検定前の厳しい追い込み練習にも付き添い、できうる限りのサポートをしている。子どもの教育で大切にしていることは、好きなことをやりたいだけ挑戦できる環境を整えてあげることと、大人になったときに子どもが興味を持った道に進めるように土台を作ってあげること。

中澤家の最初の教育方針は「元気に育ってくれればそれでいい」だけ

今や珠算界だけでなく、さまざまなメディアで注目されるようになった旺汰くんの活躍。中澤家には確固たる教育方針があり、それに沿って幼いころから学んできたからと思う人が多いかもしれませんが、母親の祐香さんはそうではないと話します。

「うちは夫が会社員で私が専業主婦という家庭です。子どもが生まれる前に夫と教育方針をしっかり立てていたかというとそんなことはなくて、強いていうなら『健康であればいい』ということだけでした。

息子は現在、そろばんの世界で注目されていますが、習い事は2歳5ヵ月ごろから始めた幼児教室が最初で、そろばんがスタートではありません。

しかも、幼児教室に通い始めた理由は、親として子どもにどんな順番で何を教えていいのか、どうやって教えていいのかわからなかったからです。

それ以前、自宅で子どもにひらがなや数字、アルファベットを読めるように教えてはいたんですが、親のほうが教えることに行き詰まりを感じたことが教室通いのきっかけです。

“子どもが数字に興味があったから”が先立っていたわけではありません。

勉強系の習い事から始まったので、頭と体のバランスを偏らせたくないとの思いと、溺れない程度に泳げればいいかなという気持ちもあって、幼稚園の年少時にはプールも始めました。

こんな感じで我が家の教育は、自宅での簡単な勉強や習い事を始めた中で次第に向かい合うようになったといえます。

また、子育てをしていると子どもの興味がめまぐるしく変化する場面に遭遇します。

息子の好奇心が高まるのに伴って、子どもが大人になったときに、本人が興味を持った道を自由に選択できる土台を作ってあげようという方向性も自然と見えてきました」(祐香さん)

親はそろばんができない! そろばんとの偶然の出合い

旺汰くんが幼稚園の年中になると、中澤家では経験の幅を広げるために運動・勉強を問わず、さまざまな習い事にチャレンジしていきます。旺汰くんを一躍有名にし、目覚ましい活躍の場となるそろばんは、年中になって最初に増えた習い事だそう。

「実は、夫も私もそろばんはできないんですよ(笑)。そろばんとの出合いは偶然です。

きっかけはすでに通っていた幼児教室で、年上のお友達がフラッシュ暗算をやっていたのを目にしたことです。

ママ友に何をやってるのか聞いてみたら、『そろばん教室でやっている計算なの。右脳の発達にいいんだよね』というので、ちょっとのぞいてみようぐらいの気持ちで体験教室に行ってみたのが始まりです」(祐香さん)

頭の中でそろばんをイメージして処理する珠算式の暗算は、右脳育てとして知られています。旺汰くんも計算するときは、頭の中にそろばんが見えているそう。  写真:アフロ

フラッシュ暗算とは、コンピュータの画面にパッパッと瞬間的に表示される数字を暗算で計算していく算術です。

暗算には学校で習う筆算式と、頭の中でそろばんをはじいて計算する珠算式の2種類があり、筆算式は左脳を、珠算式は右脳をそれぞれ多く使うといわれています。

左脳は論理や数字、言語などの論理的思考力を、右脳は音楽や空間、発想などの発想力を司っています。

そろばんは計算技術だから左脳を鍛えているのでは? と思われがちですが、珠算式の暗算は、読み取った数字を右脳でそろばんをイメージして処理し、左脳で数字情報に変換するそう。

このため、そろばんは意識的に右脳を育てる習い事として注目されています。

「体験時はごく簡単なフラッシュ暗算が出たんですが、とにかく息子が楽しそうに参加している姿が印象的でした。

授業が終わると、先生が『楽しんでいましたね、数字に強いみたいですよ』なんていってくださったのですが、私は先生がいう“数字に強い”という実感は、正直その時点ではピンときていませんでした。

とにかくいろいろなことに触れさせてあげたかったし、何より子どもが楽しいというので、そろばん教室に通うことにしました」(祐香さん)

中澤家では旺汰くんの成長に沿って、手探りで教育環境を広げ、かつ整えてきましたが、そろばんとの偶然の出合いが旺汰くん自身はもちろん、中澤家の教育に大きな影響を与えていきます。

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