漫画家・東村アキコさんが語る ディズニー「メアリー・ブレア」の世界

<働くママ>だった、初の女性「ディズニー・レジェンド」の物語

ライター:星野 早百合

東村さんが敬愛するメアリー・ブレアとは

漫画家・東村アキコさん

『海月姫』『東京タラレバ娘』など、数々の大ヒット作を生み出してきた人気漫画家・東村アキコさん。その東村さんが「愛にあふれたアーティスト」とリスペクトするひとりの女性アーティストがいます。

その名も、メアリー・ブレア。

『シンデレラ』『ふしぎの国のアリス』など、ディズニークラシック映画のコンセプトアート(※注)を手掛けた、ディズニーの<伝説的>アーティストです。

※注 作品のトーンや世界観を固めるために描くイラストのこと

メアリーの代表作『シンデレラ』。今でも多くの人に愛され続けている、永遠のプリンセス。ⒸDisney

メアリーが<伝説的>と称賛されるのは、1991年、ディズニーに大きく貢献した人物に贈られる名誉ある称号「ディズニー・レジェンド」を、女性で初めて受賞しているから。

2011年には、スタジオジブリ主催で『メアリー・ブレア原画展』が開催され、メアリーの描くチャーミングで個性あふれる作品たちは大きな話題となりました。東村さんはその原画展の図録に寄稿し、トークイベントにも参加。メアリーとは、それ以来の縁だといいます。

そんなメアリー・ブレアの生誕110周年を記念して、メアリーの生涯を描いた絵本『Disney メアリー・ブレア イッツ・ア・スモールワールドができるまで』(講談社)が発売されました。

多くの人々に影響を与えた一流のアーティストであり、実生活ではふたりの男の子の母でもあったメアリー・ブレア。メアリーと同様、キャリアと子育てを両立し、創作活動を続けてきた東村さんに、メアリーの魅力、作品について語ってもらいました。

『イッツ・ア・スモールワールド』も、実はメアリーのデザイン!

東京ディズニーランドを代表する人気アトラクション『イッツ・ア・スモールワールド』。世界各国の子どもたちが歌う「小さな世界」を聴きながら、船でめぐる世界一周の旅。このアトラクションをデザインしたのも、実はメアリー・ブレアです。

東村さんにとって『イッツ・ア・スモールワールド』は、特別なアトラクションだといいます。

外観もインパクト大! 子どもから大人までファンが多い『イッツ・ア・スモールワールド』。ⒸDisney

東村アキコさん(以下、東村さん):小学生のときに東京ディズニーランドができて、親に頼み込んで、わざわざ宮崎から連れていってもらいました。そのとき、いちばん印象に残っているのが、『イッツ・ア・スモールワールド』。アトラクションの前に立った瞬間、ふぁーっとパステルカラーの世界が広がって、ふしぎの国にきたような、異世界転生したような、ものすごい衝撃を受けましたね。

それから20年以上が経って、息子の5歳の誕生日、久しぶりに東京ディズニーランドへ行ったんです。大人になってからメルヘンな世界とはずいぶん遠ざかっていて、『イッツ・ア・スモールワールド』も、小学生のとき以来。

で、息子と手をつないで船に乗ったのですが、かわいらしい世界の中を進んでいくうち、驚いたことに、私の両目から涙がボロボロこぼれてきたんです。それも星飛雄馬ばりに(笑)。息子もドン引きするぐらいに。自分でも信じられませんでしたね。

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