絵本新人賞受賞・はっとりひろきの『いっぺん やって みたかってん』制作日記

第39回 講談社絵本新人賞受賞作家の受賞からデビューまで 第1回「はじめまして」

はっとり ひろき

※この記事は、講談社絵本通信(2017年12月)掲載の記事を再構成したものです。
はじめまして、『いっぺん やって みたかってん』で、第39回講談社絵本新人賞をいただいた、はっとりひろきです。あらためまして、選考委員の先生方、編集部の方々、応援していただいている方々、本当にありがとうございました。制作日記を、まさか自分が書かせていただけるなんて夢のようです。受賞の通知をいただいてから、4月の刊行までの様子をお伝え出来たらうれしいです。よろしくお付き合いください。

締め切り間近の6月に入ったころ、仕事もすごく忙しかった時期で、なんと原画が1枚も完成しておらず、締め切りまでの2週間、毎日夜中の3時頃まで絵を描いて、また朝から仕事に行き、夜帰ってきてから夜中までまた絵を描く、というのを繰り返していました。

同じく、四日市のメリーゴーランドの絵本塾にも通っていたので、そちらに持っていくラフを並行して描いていた時期はさすがに倒れそうになりました。

そんな時のお供が、大好きなチョコレート!! 高級なチョコレートよりも、駄菓子屋で売っているような昔ながらのチョコレートが好き!(どうでもいいですかね?)日中は家族に、夜中はチョコレートに癒されながら、何とか締め切りにギリギリ間に合いました。諦めなくて本当に良かったです。

8月の受賞の知らせをいただいたとき、ちょうど家族旅行に行っていたのですね。晩御飯を食べて部屋に帰って、ひと休みしようかとしたその時に携帯電話が鳴ったのです! 気がつくのが遅く、着信履歴を見ると、見慣れない「03」から始まる番号が入っているではありませんか!!

プルプルプルプルプル……。

電話の着信音なみに手を震わせながら、掛けなおすと今回の受賞の通知だったのです。ひっくり返りました。2日間眠れず、旅行どころではありませんでした。

今回、公募ガイドという雑誌に、受賞の言葉の依頼を頂きました。仕事として、初めて文章を書いたのですが、何度も何度も考え直しました。文字数の制限があって悩みましたが、楽しくできました。この制作日記は、文字数の制限は無いということなので、とにかく楽しく書きたいです。


さて、9月に贈賞式がありました。その式の前に担当編集者の(シ)さんと初めての打ち合わせをしました。(シ)さんから、いろいろアドバイスをいただき、特にラストの展開を練り直すことにしました。

自分では気がつかない部分もあり、とても勉強になりました。原画はこのままでも大丈夫なところもあると言ってもらったのですが、今回の作品の原画は、締め切りが迫り時間がなかったので納得していなかった所が多々あり、わがままを言って全部描きなおす事にしました。

打ち合わせが終わって、プロフィール写真を(シ)さんに撮影してもらうことになりました。なんと(シ)さんはカメラマンもされていたということで、お任せしたのですが、僕がね、緊張してしまって……顔が引きつりっぱなしになっていました。近くの公園で、(シ)さんの力で何とか奇跡の1枚を撮って頂きまして、ホッとして贈賞式に向かいました。

式の中で、先に児童文学新人賞の方々の表彰&スピーチがあったのですね。受賞された皆さんのお話が上手で楽しく聞いていたのですが、いざ自分の番が来たら……またまた緊張してしまいまして。(膝だけは笑いっぱなしだったんですけど。)

家族も式に参加してくれていたので、スピーチをしながら必死で家族を探してしまいました。式が終わってからも、選考委員の先生方をはじめ、多くの方々から、たくさんの暖かいお言葉をいただき、感激しっぱなしでした。今でも思い出すたびに胸が熱くなります。本当に感謝しております。


そして今は12月上旬、どのような作業をしているのかといいますと、ラフの直しです。打ち合わせの時に(シ)さんに教えていただいた点を練り直しています。

特にラストにかけての展開を、絵でどこまで表現できるのか、あらゆる角度から考えて、自分の思いも込めて提出しています。物理的に遠く、郵送でラフを送るため、(シ)さんの意見を聞けるのに数日かかり、その間ずっとドキドキして待っています。

今回の作品は公園の遊具たちが動き出すお話しですが、顔も無く、表情や感情や動きをどのようにしたら、見ていただく方にも伝わり、そして楽しんでいただけるのか、頭の中にあるイメージをどの方向から描いたら面白いのか、悩みながらも少しずつですが、前に進んでいきたいです。
ボツになったラフたち(右)と、長いこと使っている手作りライトテーブル(左)
写真は、描きなおして溜まった、ボツになったラフたち(右)と、長いこと使っている手作りライトテーブル(左)です。ボツのラフは、たまに見直すと1周回ってこれいいね! というのも出てくることもあります。ライトテーブルは、近くに売っていなかったので作っちゃいました。これで下から光を当ててラフのラフから、ラフへ描き移したりします。ものすごく役にたちますよ。

もうひとつ取り組んでいることは、新人賞受賞者が描くことが恒例となっています、幼児図書編集部の年賀状の絵です。歴代の受賞者の作品を見ると、完成度が高く、自分に出来るのかと不安でした。来年は戌年。公園。犬。遊具……。絵本は前後の流れがあって描いているので、その流れの中で表現できるものもあるのですが、1枚絵で物語を表現するというのがこれ程大変なことだとは思いませんでした。いろいろなアドバイスをいただきながら、絵本の絵にもつながる、とても良い経験ができました。OKが出たときは、ほんとに嬉しくてほっとしました。その年賀状は、次回の制作日記でお見せできるかと思いますので、どこに戌がいるのか探してみてくださいね。

次回は原画制作の真っ最中かと思います。ラフの仕上がりから、原画に取り掛かる様子をお伝えできるかと思いますので、また、見ていただけたらうれしいです。
それでは、よいお年を。

こちらができあがった絵本です。

今日はあめふり。せやから、公園にはだ~れもおりまへん。そんなときに、砂場から出てきたのは……。遊具たちが自由に動いて遊びまわる!?

『いっぺん やって みたかってん』 
作:はっとり ひろき 講談社

はっとり ひろき

絵本作家

1978年岐阜県海津市生まれ。小さいころから絵を描くことと、F1が好きだった。高校卒業後、建設機械及びフォークリフトの整備士として勤める傍ら、絵本作家を目指す。2016年よりメリーゴーランドの絵本塾に通う。 2017年、『いっぺん やって みたかってん』で第39回講談社絵本新人賞受賞。三重県在住。2児の父。

1978年岐阜県海津市生まれ。小さいころから絵を描くことと、F1が好きだった。高校卒業後、建設機械及びフォークリフトの整備士として勤める傍ら、絵本作家を目指す。2016年よりメリーゴーランドの絵本塾に通う。 2017年、『いっぺん やって みたかってん』で第39回講談社絵本新人賞受賞。三重県在住。2児の父。