ダメだとわかっているけど…「わが子とほかの子を比べてしまうとき」におすすめの絵本

大人に効く絵本〔11〕『ぼくだけのこと』『ぞうのエルマー』『あなたのすてきなところはね』がおすすめ

東條 知美

優秀じゃなくてもいいとは思っても、お利口な人の子どもと、我が子を見比べると、親はついあせってしまう。そんな考えを思い直させてくれる絵本とは。  写真:maroke/イメージマート
美しい絵に癒やされたり、ハッと気付かされたりと、大人にとっても感動がいっぱいの絵本。この連載では、“絵本のプロ”がパパママにこそ読んでほしい絵本をテーマに合わせてピックアップ。

第11回は、絵本コーディネーター・東條知美さんが「わが子とほかの子を比べてしまうとき」におすすめの3冊をご紹介します。

ネガティブな感情は早めに取り除こう

――ついつい、わが子とまわりの子を比較してしまう。こんな経験のあるパパママは多そうです。

SNSの広がりは、こういったネガティブな感情を増幅させましたよね。日本中、世界中のキラキラ家族が目に入るようになって、自分たちとの違いをイヤでも感じる時代になりました。

まず、私たちが強く意識しなければならないのは、SNSの中のすべてが、事実ではないという点。これについては、パパもママも頭に置いておかなくてはなりません。

とはいえ、気になってしまうのが親というもの。自分の子とほかのお子さんを比べてしまうこともあるでしょう。なぜなら、<子どもには幸せになってほしいから>。

親と子どもは、別の人間。それなのに、知らず知らずのうちに、自分の理想像を子どもに押しつけてしまうのですね。

一方で子どもは、成長するにつれて自我が確立していきます。すると、実際の自分と、親が理想とする自分の姿との間にギャップを感じるようになり、常に苦しい状況になります。

以前、あるインタビューの中で、有名芸能人の方が「親の期待は呪い」とおっしゃっていて、なるほどと思いました。親はただ子どもの幸せを願っているだけなのに、子どもを苦しませている。

このままでは、思春期にかけて問題が出てきてしまうかもしれません。ネガティブな感情は、早いうちに何とかしておきたいですね。

――絵本を読むことで、この感情を取り除けるのでしょうか?

取り除くためのヒントとなりそうな絵本は、たくさんあります。今回ご紹介する3冊は、大人はもちろん、親子で一緒に読むのもおすすめですよ。

いいことも悪いことも<僕のオリジナル>

最初にご紹介するのは『ぼくだけのこと』(作:森絵都、絵:スギヤマカナヨ/偕成社)。作者は、直木賞作家の森絵都さんです。
<ぼくだけのこと>って何だろう? 主人公の小学生・ようたくんは、自分自身の言葉で<ぼくだけのこと>を私たちに教えてくれます。

「さんにんきょうだいの なかで、ぼくだけ、みぎの ほっぺに えくぼがある。」

「ごにんかぞくの なかで、ぼくだけ、いつも かに さされる。」

「しちにんぐみの なかで、ぼくだけ、さかだちあるきが できる。」

「にじゅうごにんの なかで、ぼくだけ、げいのうじんの サインを もっていない。」


うれしいことも困ったことも、得意なことも、悲しいことも、<ぼくだけのこと>。それを、ようたくんは誇りに思っています。すべてが僕のオリジナル。僕が僕である理由なのです。哲学的ですよね。読み方によってその人の胸に降りてくるものが違う絵本だなと思います。

――いいことだけじゃなく、悪いことも誇りに思っているところに、ハッとさせられます。

走るのが遅いとか、笑顔が少ないとか、短所と思われがちな部分も<その子らしさ>と思えたらいいですよね。わが子にはわが子だけの<こと>がある。

大事な大事な、たったひとつの存在。ならば、親は丸ごとそれを受け入れ、寄り添うだけでいい。そう思わせてくれる1冊です。
ぼくという存在は、世界でただひとりだけ。ほかの子と違う<ぼくだけのこと><わたしだけのこと>を探したくなる『ぼくだけのこと』(作:森絵都、絵:スギヤマカナヨ/偕成社)。

あなたはあなたらしく!

続いてご紹介するのは、『ぞうのエルマー』(文・絵:デビッド・マッキー、訳:きたむらさとし)。1989年にイギリスで出版され、2002年に日本語版が発売されたベストセラー絵本です。

主人公は、体がパッチワークみたいな模様のゾウ・エルマー。明るくて楽しいエルマーは、群れの人気者です。エルマーがいると、みんなが笑顔になります。けれど、エルマーは、自分だけ体の色がゾウ色ではないことに悩んでいました。

「どうして ぼくだけ みんなと ちがってるんだろう」

ある日、こっそり群れを抜け出したエルマー。森で見つけたゾウ色の木の実を体中に塗りたくると、たちまち、ほかのゾウと見分けがつかなくなりました。

誰もエルマーだとは気が付きません。いつも笑っている群れのみんなも、静かに押し黙っています。「なんか、ちょっと へんだな」。ついにガマンができなくなったエルマーは、ある行動に出ます――。

「エルマーだ!」「きっと、エルマーだ!」

「みんなと おなじふりしたって、すぐ ふざけるから、エルマーだって わかってしまうんだ」


みんなは、エルマーに気づいて大笑いしました。

エルマーは、「みんなと同じがいい」「みんなと違うと落ち着かない」と思っていたはず。でも、すぐに思い直しました。

自分がいることでみんなが笑顔になれるんだ!

あなたは、あなたらしくあっていい。
そんな作品のメッセージが伝わってくる1冊です。

――親がこう心に留めておくと、わが子への接し方が変わってきそうです。

そうですね。ただ色鮮やかなだけでなく、構図や彩色、ストーリー運びも素晴らしく、深い印象を残す絵本です。子育てに悩んだとき、こんな絵本を思い出してくれたらいいなと思います。
世界20ヵ国以上で翻訳されている、パッチワーク模様のカラフルなゾウ・エルマーが活躍するエルマーシリーズの1冊、『ぞうのエルマー』(文・絵:デビッド・マッキー、訳:きたむらさとし/BL出版)。
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