幼児教育「やりすぎ」「セーフ」の境界線 10 のチェックポイント

『やりすぎ教育』著者・武田信子が警鐘を鳴らす「その教育、本当に子どものため?」#1

「子どものため」と願う気持ちは同じでも、熱心でOKな親と、やりすぎアラートが出る親の違いとは。
写真:アフロ

昨今、幼児教育が白熱化しています。「子どもにたくさんの選択肢を与えたい」、「6歳までに脳の約9割が作られるといわれているから」などと意気込み、低年齢からアート、英語、プログラミングなどの習い事に通わせる親も増えています。

それも、これも、“子どものため”。

でも、それって本当? 世間の情報や常識に惑わされていない? 
著書『やりすぎ教育 商品化する子どもたち』(ポプラ新書)が話題の臨床心理士・武田信子さんが、一石を投じます。

習い事でも本人が“本当に”楽しんでやっているならOK

武田さんは、「習い事をさせること自体は決して悪いことではない」と前置きしたうえで、こう話します。

「その教育は、本当に我が子のためになるのか? もしかしたらやりすぎではないか? ということを忘れず、ときどき自問してみてほしい」。

とはいえ、私たち親はどこからが「やりすぎ」なのか、見極めるのはなかなか難しいこと。
「教育熱心」と「やりすぎ」の境界線を把握するための10のチェックポイントを、武田さんに教わりました。

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2021年夏の東京オリンピックでは、多くの日本人選手がめざましい活躍を遂げました。

スポーツの世界をはじめ、幼少期からの英才教育が社会的な成功につながった事例は数多くありますし、身につけたことが後の人生に役に立つ場合は少なくありません。ですから、幼少期から何か特技を身につけさせること自体は否定しません。

本人が数ある中から「これをやりたい」と選んだ習い事や、周囲の子どもにつられてやりたくなったというような習い事は、好んで通っているならノープロブレム。親の役割は、子どもが選べるように「いろいろな楽しい世界を知る」機会を作ることです。

そうして始めてみて、本人が楽しんで進んで取り組んでいる場合。これならば全く問題ありません。例えば、1日5分の英語番組視聴も30分の楽器練習も、積み重ねてやることでわかっていくのが楽しいからと自発的にやっているならいいのです。

ただし、子どもが嫌がっているのに強制させているならば、考えもの。始めてはみたもののやってみたら思っていたのと違っていた、先生と相性が合わなかったということは大人にでもあることで、ましてや子どもには先の展開の予測がつきません。

ですから、始めてしばらくした段階や一定期間ごとに、本人の継続の意思確認をする必要があるでしょう。

また、習いごとはしばしばスタート時点で入会金や道具の購入などの出資が必要ですが、始めるとしたら、止めるときのリスクや大人同士の関係性まで計算に入れておかなければなりません。お金や大人の都合のために子どもに無理やり続けさせるのは本末転倒ですから。

せっかくだからやり遂げさせたいという思いが強すぎると、例えば「課題が終わるまでごはんは絶対にあげない」「睡眠時間をけずる」などして、精神的、身体的に極度の我慢を強いていたり、子どもが親から1対1でずっと監視されていて、どこにもストレスのはけ口がなく追い詰められていたりする状態を作り出しがちです。

これは子どもの心身の発達にも脳にもよくありません。

つまり、本人が耐えられないほど、それによって心身や脳の発達を阻害するほど強制している場合は、レッドゾーン。明らかに「やりすぎ」といえます。

一方で、子どもが「嫌だ、嫌だ」と言いながらもなんとか続けている場合、それも精神的にも身体的にも支障のない範囲でできている場合は、子どもが落ち着いているときに、本人の意見、気持ち、事情を、問い詰めずにじっくりと聞きます。

それを理解した上で、子どもが抵抗を感じている点を調整し、条件をできるかぎり整えて、しばらく続けて様子を見ましょう。

実際、「あのとき親が無理やりやらせていなかったら、今の私はなかった」と、過去を肯定する大人も少なくないので、子どもの言う通りにすぐやめるのがいいとも限らないのです。

さて、以下に、ご自身の教育が「やりすぎ」になっていないかを見分けるための10のポイントをまとめました。

【親の行為や考え】は1つでも当てはまっていたら、親のあり方を振り返ってみましょう。
【子どもの様子】は、家庭内外のあらゆるストレスも原因となるため、該当していたら「やりすぎ教育」も含めて、一日の生活を見直してみましょう。

【親の行為・考え】
① 習い事やその練習をさせるために、自由時間がほとんどない生活をさせている

②子どものすることを、子どもの意見を聞かずに親が決めている

③子どもが泣いたり怒ったり元気がなかったりして、サインを出していても「まただ」と思って流してしまう

④自分の言うことを聞かない子どもは悪い子だと思ってしまう

⑤子どもを自分の所有物のようなものと思っている。

⑥子育てに確固たる信念を持っていて、自分は絶対に正しいと思っている

【子どもの様子】
⑦いつもちらちらと親の機嫌をうかがって行動している

⑧親に対しおどおどした様子や緊張した様子を見せ、笑顔がぎこちない

⑨進んでいいことをして、大人びたいい子のようにふるまう

⑩食が細くなる、熱を出す、夜尿、寝つきの悪さ、指かみなどのチック症状など精神的症状が見える

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