0歳児のお世話 一体どうすれば良い? パパママの不安に榊原洋一先生が明快回答

【オンラインセミナーレポート】榊原洋一先生「0歳児にしてあげたいこと」#1

小児科医/お茶の水女子大学名誉教授:榊原 洋一

生まれたばかりの赤ちゃんに親ができることはいったい何でしょうか。  写真:アフロ

0歳児の育児に、人知れず悩みを抱えているパパママはいらっしゃいませんか。またはこれから生まれてくる子どもにどう向き合えばよいのか、漠然とした、けれども大きな不安を抱えているプレママ・プレパパはいませんでしょうか。

自分の意思を話すことができない赤ちゃんを目の前に「いったい何をしてあげたらいいのだろう?」と戸惑ってしまいますよね。育児情報が溢れていて何を信じたらよいのかわからない、という声も多く聞かれます。

子育ての問題解決サイト「コクリコ」の会員サービス、「講談社コクリコCLUB」では、会員を対象としたオンラインセミナー「正しく知って安心! 『0歳児』にしてあげたいこと」を開催しました。

講師は子ども発達研究の第一人者であり、現在も小児科医として診察を続けているお茶の水女子大学名誉教授の榊原洋一先生です。

第1回では0歳児を持つパパママ、またこれから赤ちゃんを迎えるパパママに「これだけは知っておいてもらいたいこと」をお話ししてもらいました。

参加者から「榊原先生の話を聞いて、気持ちが楽になった」との声が多く寄せられた、必聴セミナーの内容を公開します。

榊原洋一先生プロフィール

榊原洋一(さかきはら・よういち) 1951年東京生まれ。小児科医。東京大学医学部卒、お茶の水女子大学子ども発達教育研究センター教授を経て、同名誉教授。チャイルドリサーチネット所長。小児科学、発達神経学、国際医療協力、育児学。発達障害研究の第一人者。著書多数。監修を手がけた年齢別知育絵本「えほん百科」シリーズは大ベストセラーに。現在でも、子どもの発達に関する診察、診断、診療を行っている。

ずっとそばにいるからこそ感じる漠然とした不安

0歳児の育児には、漠然とした不安を抱く親御さんが多いように思います。

幼稚園や小学校に行く年齢のお子さんなら、学校教育、お稽古事、食育などとやるべきことに焦点を絞って考えることができます。ところが、まだしゃべらず歩きもしない0歳児に対しては、「一体何をしてあげたらいいのだろう?」と、フォーカスすべきポイントが見つからない。

だから、なんだか不安を感じてしまいます。

幼稚園児や小学生は、昼間は登園・登校して生活のリズムがありますが、0歳児は一日中、家にいます。そして、泣いたり笑ったり、さまざまな反応を見ながら、いろんなお世話をしてあげる必要があります。

ずっとそばにいるからこそ、常に何かをしなければいけないという気持ちになってしまうのもわかります。

「0歳児」を赤ちゃん視点で考えてみる

はじめに、あらためて0歳児とはどういう時代なのか? 赤ちゃんの視点から考えてみましょう。

お母さんのお腹の中にいるときは、完全に他人任せの生活でした。体温調節はいらない。呼吸する必要もない。ごはんを食べることもなく、排泄もしない。何もしなくていい快適な環境だったのです。

それが、オギャーと生まれた途端に、いろんなことを自分でやらなければいけなくなります。自分で呼吸をする。水分を摂る。

案外見過ごされがちですが、体温も自分で36~37℃にコントロールしています。そして、何より大変なのが自分で栄養を摂ること。体力の大半を使って母乳やミルクを吸い、栄養を摂取する必要があります。

何もしなくてよかった胎内からやってきた赤ちゃんは、まったく異なる外の世界に慣れなければならない。それが、生後まもない赤ちゃんの仕事なのです。

親の仕事は“環境を整えてあげること”

では、赤ちゃんが世界に慣れようとしている過程で、親は何をすべきでしょうか?

母乳やミルクをあげる。おむつを交換する。沐浴をさせる。つまり、赤ちゃんが過ごす環境を整えてあげるのが親の仕事です。

生後4~6ヵ月になると、赤ちゃんはキョロキョロまわりを見て、触れたものを握ったり、それを口に持っていったりするようになります。早い子はお座りをして、自分からおもちゃを触りにいくようになるかもしれません。これは赤ちゃんが自分の身のまわりの世界が何であるかを探る行動です。

赤ちゃんは外部の情報をどんどん吸収して、身の回りの世界を学習していきます。  写真:アフロ

6ヵ月を超えると大きな変化が訪れます。赤ちゃんは自分で移動できるようになります。ごろごろと寝返りを打っている状態から、ずり這い、そしてハイハイができるようになります。

こうなると、赤ちゃんの世界はぐっと広がります。部屋の中を探検して、新しい知識を吸収していくようになります。

手が自由になる体勢がとれるようになると、おもちゃなどのモノを操作するようになります。0歳児の終わりになると、つかまり立ち、そして、歩くようになります。

歩き出すと、視点が高くなり、行動範囲も広くなるので、情報吸収量も一気に上がります。

赤ちゃんが得る情報は大きく2つに分けることができます。「モノ」と「人」です。

赤ちゃんのまわりにある家具やおもちゃなどの「モノ」は無機的な存在です。一方、親や祖父母、兄弟姉妹、保育士さんら「人」にはさまざまな有機的な反応があります。

話しかけてくれる、さわってくれる、抱っこしてくれる……、語りかけてくれる喃語を次第にマネするようにもなるでしょう。

いろんな反応を体験しながら世界を理解し、慣れていく。それが、0歳児の1年なのです。

特別なことはしなくていい

これを踏まえて、「0歳児には何をしなければならないか?」の結論を申します。

特別なことは何もしなくていいんです。

もちろん、ミルクをあげる、おむつを替える、寒ければ暖かく、暑ければ涼しくしてあげる、泣いたら抱っこしてあげる、危険なことはないかチェックしてあげるなど基本的な育児は必要です。

でも、逆に言えば、それだけでいいんです。

「ゆりかごの中の科学者」と呼ばれるわけ

0歳児の1年は、赤ちゃんが自分で探検しながらまわりを理解し、新しい世界に慣れようとする能動的な活動の期間です。親は、赤ちゃんが活動できるように環境を整えてあげるだけでいいのです。

赤ちゃんは「ゆりかごの中の科学者」と表現されます。科学者は問題を発見し、仮説を立て、証明することで物事を解き明かしますが、赤ちゃんも同じことを行いながら自分で学習していくことが、発達心理学の研究でわかっているのです。

基本的な育児以外に、楽器にふれさせるとか、自然の中に連れていくとか、一般的によいとされる行動もありますが、それは必須なことではありません。もちろん、プラスでしてあげたいことがあれば、してあげて結構です。でも、赤ちゃんが安全に過ごせる環境を提供すること。それだけで、親がすべきこととしては十分なのです。

ミルクをあげる、おむつを交換する、服を替える、沐浴をさせるといった基本的なお世話だけで、必要な刺激は十分に与えることができています。赤ちゃんは、お腹がいっぱいになったな、お股の冷たいものがなくなったなと、いろんな情報をキャッチして十分に刺激を受け、学習しています。

刺激よりも“関わり”

第二次世界大戦後、ハンガリーのロッツィ乳児院という主に戦争孤児のお世話をする乳児院が注目を集めました。そこで育った子どもたちは社会への適応力が高いということがわかったのですが、その背景には乳児の世話の仕方にある方針があったのです。

それは、とてもシンプルなこと。ミルクを与えたり、おむつを替えたりするなどのお世話の際に、赤ちゃんに積極的に話しかけるということでした。

大切なのは刺激というより、“関わり”なんだと思います。赤ちゃんはいろんなお世話をしてもらう“関わり”を通じて、人の表情を見たり、声を聞いたり、自分に起きていることの変化を感じ取りながら学習していきます。

繰り返しになりますが、基本的なお世話だけで十分なんです。そのお世話の際には、できるだけ赤ちゃんの目を見て、たくさん話しかけてあげましょう。

それででは、ここからは皆さんから事前にお送りいただいた質問にお答えしていきたいと思います。

第2回【0歳児のお世話Q&A 子どもの発達の専門家に聞いた目からウロコの真実14(前編)】に続く)


構成・文/渡辺 高

さかきはら よういち

榊原 洋一

小児科医・お茶の水女子大学名誉教授

小児科医。1951年東京生まれ。小児科医。東京大学医学部卒、お茶の水女子大学子ども発達教育研究センター教授を経て、同名誉教授。チャイルドリサーチネット所長。小児科学、発達神経学、国際医療協力、育児学。発達障害研究の第一人者。著書多数。 監修を手がけた年齢別知育絵本「えほん百科」シリーズは大ベストセラーに。現在でも、子どもの発達に関する診察、診断、診療を行っている。

小児科医。1951年東京生まれ。小児科医。東京大学医学部卒、お茶の水女子大学子ども発達教育研究センター教授を経て、同名誉教授。チャイルドリサーチネット所長。小児科学、発達神経学、国際医療協力、育児学。発達障害研究の第一人者。著書多数。 監修を手がけた年齢別知育絵本「えほん百科」シリーズは大ベストセラーに。現在でも、子どもの発達に関する診察、診断、診療を行っている。