ラン活スタートは春! 工房系ランドセル4社の新作キーワードは“多様性”

最旬!ラン活2023〜#1 工房系ランドセル編〜

ライター:遠藤 るりこ

親子ともども納得のいくランドセルを見つけるには? 工房系4社に2023年度向け新作ランドセルと、近年のラン活の動向をうかがいます。 写真提供:黒川鞄

新生活がはじまる春。新しいランドセルを背負った新1年生が入学式を迎える頃、その次の学年である来年度向けのランドセルのラインナップが各社からリリースされます。

「男の子は黒」「女の子は赤」が定番色だったのは、もはや昔のこと。近年ではいろいろなカラーやデザインのランドセルが見られるようになりました。

そこで子どものランドセル選び(通称:ラン活)に役立つ、2023年度向けランドセルのラインナップ紹介と、そこから見えてくるトレンドや時代背景、ランドセルの選び方・向き合い方を考えます。

第1回は、ラン活ブームのメインストリームとされる「工房系ランドセル」を販売する4社にインタビューしました。
※連載全5回の1回目

男の子の10人にひとりが「赤」を選ぶ

工房系ランドセルとは、独自の工房を持つメーカーが素材や製法にこだわって作ったランドセルのこと。

創業125年、由緒正しき老舗の鞄工房で、工房系ランドセルの人気メーカーが有限会社黒川鞄(以下黒川鞄)です。

子どものランドセル事情を見つめてきた黒川鞄が2021年に行ったアンケート調査(※全国約800名の親子向けに行われたインターネット意識調査)では、子どもが好む色の傾向が見えてきました。

「子ども800人(男女それぞれ400人ずつ)を対象に、『何色のランドセルがほしいですか』というアンケートをとりました。

親世代では男の子は黒、女の子は赤が定番色でしたが、現代では男の子の10人に1人が『赤』を選択していることが判明。ランドセル選びにも多様性が感じられる結果になりました」(黒川鞄代表取締役社長・黒川由朗さん)

このような背景をふまえ、黒川鞄では定番ランドセルシリーズの「シボ牛革 キューブ型」(各78,000円・税込)に、2023年度向けの新色を追加。

ジェンダーニュートラルを意識した新色は男女どちらでも選べる「グレージュ」と「ピスタチオ」。「手縫い・手作り・天然素材」で少量限定製作という老舗工房の伝統をしっかりと継承しながら、現代の空気感もまとった新しい配色です。

「シボ牛革 キューブ型」は各78,000円(税込・送料無料)。新色は、グレージュ(写真左)、ピスタチオ(写真右)。黒川鞄公式オンラインショップにて発売中。 写真提供:黒川鞄

ジェンダーフリーシリーズを“あえて”作ったワケ

昨今のラン活ブームを牽引(けんいん)しているといっても過言ではない、人気工房系メーカーが株式会社土屋鞄製造所(以下土屋鞄)です。もともと土屋鞄では、男女の性別を分けた製品作りや、売り場の展開などはしていなかったといいます。

「しかし、店頭では例年のように、『戦隊モノや消防車が好きだから赤がいいんだけど、女の子カラーだから……』とあきらめる男の子や、『ダークカラーがいいけど、変じゃないかな?』と気にされる女の子家族などがいらっしゃいました」(土屋鞄PR担当・高橋夏生さん)

そのような声をうけ、2021年(昨シーズン)に「性別にとらわれない好きな色選び」をより後押しするジェンダーレスシリーズ《RECO》を発売。2023年度向けとして、「RECO プレミアム」3色(各83,000円・税込)を追加しました。

2021年に登場した、RECOシリーズ ベーシックは全5色。写真左から、プリズムブルー、ディープレッド、ブラック 写真提供:土屋鞄
2023年度向けとして追加された新シリーズ「RECOプレミアム 牛革ハイブリッド」(各83,000円・税込)の新色3種。ベーシックと合わせ、全8色展開。土屋鞄公式オンラインショップにて発売中。 写真提供:土屋鞄

また、土屋鞄が2021年に行った、ランドセル選びに関する親向けアンケート調査によると、「購入時に重視していること」として《子どもが好きな色・デザインであること》をあげた親が71.5%いたといいます。

「店頭でも、親御さんの意見ではなくお子さまの意見を尊重している傾向が見られます。

私たちは『子どもが好きな色を選び、その選択を認めてもらえた経験は、その子の価値観や自分らしさの形成につながる』と考えています。

そんな環境作りや世の中の価値観の提案が、RECOシリーズを中心に、ランドセル選びを通してできればうれしいです」(土屋鞄・高橋さん)

子どもの好みを尊重する親が増えている

株式会社池田屋(以下池田屋)の2023年度向けランドセルのラインナップは、全85色にも及びます。

牛革、人工皮革ともに全モデル同じ構造のため機能・性能に差がなく、性別を問わず自由に好きな色のランドセルを、たくさんの選択肢のなかから選べるのが池田屋の特徴です。

「近年、ランドセルの色の選択肢が増えましたよね。今年は人気が高いパステルカラーながら、あえてツヤを抑えた防水牛革を使用。高学年になっても飽きずに使っていただけるよう、落ち着いたトーンに仕上げた新色を3色、追加しました」(池田屋子ども思いの森事業部部長・寺本昌平さん)

池田屋の2023年度向け新作ランドセルは、「防水牛革パステル カラーステッチ」(各69,000円・税込)の3色です。

「防水牛革パステル カラーステッチ」各69,000円(税込)。新色は左から時計回りに、ミント×サックス、ラベンダー×ピンク、ミルク×ベージュ。池田屋公式オンラインショップにて発売中。 写真提供:池田屋

子どもたち自身に性別による色のイメージは薄く、店頭でのランドセル選びでも、「まずは子どもの好みを聞き、それを尊重する親が増えてきた」と池田屋の寺本さんは言います。

「男の子がアクアブルー(水色)やアンティークワイン(濃いワインレッド)を選んだり、女の子が紺、グリーンを選ぶことが年々増えていると感じます。

ほんの数年前でしたら親御さんがそれを止めたりする場面も目にしましたが、最近ではお子さまの好みと個性を尊重してすんなり選ばれるケースが自然になりつつあります」(池田屋・寺本さん)

人とは違うランドセルを より個性が際立つデザインに

奈良に工房を構える株式会社鞄工房山本(以下鞄工房山本)は、70年続くランドセルメーカーです。革の裁断面にニスを塗り重ねる「コバ塗り」をランドセル作りに採用していることで知られています。

「鞄工房山本のランドセルシリーズでもっとも人気なのが、ティアラのステッチときらりと輝くクリスタルガラスが気品を感じさせる『ラフィーネ』(69,900円・税込)です。

かわいい系ランドセルを求めているお子さんに好評で、品質や機能性を重んじる親御さんにも受け入れられています」(鞄工房山本マーケティング担当・盛谷亜紀子さん)

「ラフィーネ」69,900円(税込)。新色は、アッシュピンクとミントブルーの2色。鞄工房山本公式オンラインショップ、直営店舗、展示会場にて発売中。 写真提供:鞄工房山本

伝統技法のコバ塗りをはじめ、繊細な刺繍やステッチが特徴的な鞄工房山本のランドセル。他の工房系ブランドにはないデザインが個性を際立たせています。

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