幼児教育 親が陥りがちな「5つの思い込み」 あなたは大丈夫?

『やりすぎ教育』著者・武田信子が警鐘を鳴らす「その教育、本当に子どものため?」 #2

いきなり自然豊かな場に連れて行っても、遊び方がわからない子どもの場合、その場でゲームを始める、ということも。
写真:アフロ

我が子に“良い環境”を与えたい。そう望むのはどの親でも同じこと。ただし、良かれと思ってやっていることが、実は子どもにとって本意でないこともあります。

『やりすぎ教育 商品化する子どもたち』(ポプラ新書)の著者で、子どもの養育環境を研究している臨床心理士の武田信子さんに、親がつい陥りがちな「思い込み」事例をあげてもらいました。

親の思い込み例①「知育系施設でこそ遊びながら発達がうながされる」

近年、遊びの中から非認知能力を育てる意義が強調され、非認知能力の開発のために遊ばせようという宣伝文句が耳に入ってくるようになりました。

遊具のある屋内の遊び場などは、親にとっては、外遊びと違って泥で服が汚れる心配もないし、天候の心配も、危険もない、しかも教育にも有効。「知育のために遊ばせなくては」と思っている親にはまさに渡りに船です。

でも、遊ばせることを目的として工夫が凝らされている場は、同時に時間も空間も仲間も、いろいろな制限がある場所でもあるのです。それに、遊びまで目的を掲げるようになったら、子どもは息苦しくて仕方ありません。自分が子どもの頃、遊びに目的があったでしょうか。

子どもは自由に遊ばせてあげて下さい。目的のない自由な中から生まれるものが、子どもを育てます。むしろ子どもたちがいつの間にか発達するのは、毎日を思い思いに過ごす家の中や近所での生活の中なのです。

ですから、子どもたちが毎日いろいろな新しい発見をしながら生活できるような環境の中で過ごせているかに気を配ってみるとよいと思います。

たとえば、近くの公園や畑などの自然の中で、さまざまな年齢の子どもたちや大人たちの姿を見ながら過ごす時間を作ってみてはどうでしょう。

大人でもそうですが、いつものよく行く場所は、子どもものびのびと過ごすことができ、心地よいのです。昨日の遊びの続きができる場所を大切にするのがおすすめです。「今度はこれをこうしてみよう」「あれもやりたい」などと、遊びがどんどん発展していきます。

親の思い込み例②「大自然やプレーパークに連れていって自由に遊ばせよう」

とはいえ、いきなり遊具のない公園や大自然の広がる場所、あるいは、全国400カ所以上にある「プレーパーク」(既成の遊具がなく、子どもたちが想像力で工夫して、遊びを作り出すことができる広場)などに連れていくのは、ハードルが高いでしょう。

こうした場所で長時間遊べるのは、外遊びにある程度慣れている親子です。都会に住み、遊具のない公園に慣れていない親子の場合、まずは見学からかもしれませんね。抵抗感のある方は、イベントに参加する、誰かと一緒に行くなど、とっかかりを見つけましょう。

親の思い込み例③「土遊びをさせればいいのね。さあ泥んこ遊びしなさい!」

自然物の少ない街中で暮らしている子どもは、できる限り水辺や土のある公園などに連れて行けるといいですね。五感が刺激されるでしょう。

子どもの育ちにとって大切なことです。ただし、そこで親が始終注意して制限を加えていたら、本末転倒です。

「転ぶから走ったらダメ」「お洋服が汚れるから泥遊びはダメよ」などなど、ダメのオンパレードになっていませんか。それでは、おいしいお菓子を見せられて、食べてはいけないと言われているような状態で、かえって子どものストレスはたまります。 

あるいは、「せっかく来たんだから泥遊びしたら?」と、いきなり泥遊びをうながすせっかちな親御さんもいます。でも、泥遊びの経験がない子が最初から泥を触ることって、実はハードルが高いことも。

親は、本人が徐々に慣れていく様子を楽しみむことが大切です。本人にまかせれば、じっと周囲の様子を観察してから、だんだんと動き始めるでしょう。

いつも指示をしていると、どうすればいいのと指示を待つかもしれません。いきなり突き放すのではなく、でも声をかけすぎるのでもなく。

ここで試されるのは、子どもよりも親かもしれません。親が子どもを黙って見守ることを練習する機会ですね。

せっかく連れてきたのだからと思うと、特別なことをさせたくなるかもしれません。

たとえば、子どもがアリに興味を持って座り込んでしまったら、「アリなんか近所でも見られるでしょ。」と言いたくなる気持ちもわかりますが、まずは一緒に座ってみて、この子は今、何が楽しいのかなと関心を持ってみてくださいね。

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