「台風・大雨の備え」子どもと家族の命を守る事前対策を「防災アドバイザー」が解説

今こそ真剣に! 台風・大雨への備え

備え・防災アドバイザー:高荷 智也

※ 2022/10/13 配信のニュースです

台風・大雨への備えは事前準備が大切。何を準備すれば良い?(イラスト:アフロ)

台風、地震などの災害が絶えない国・日本。

ウェザーニューズが2022年6月時点で発表した台風傾向は「平年より少ない」予想でしたが、7月に3つ、8月に5つ、9月には7つの台風が発生。その多くが日本に接近または上陸し、特に9月21日に発生した台風15号は、各地に大きな被害をもたらしました。

また、過去には2019年10月下旬に千葉県豪雨災害が起きるなど、暑い時期を過ぎても、秋の終わりごろまでは「台風・大雨」に注意する必要があります。

そこでこの記事では、テレビやラジオでも活躍する、備え・防災アドバイザーの高荷智也さんが、今すぐできる防災活動についてアドバイス。第1回では、「台風・大雨の備え」を解説します。

高荷智也(たかに・ともや)備え・防災アドバイザー。「自分と家族が死なないための防災」と「企業の実践的BCP策定」をテーマに活動。大地震や感染症パンデミックなどの自然災害から、銃火器を使わないゾンビ対策まで、堅い防災を分かりやすく伝える活動に従事。著書に『今日から始める本気の食料備蓄』(徳間書店)、監修に『ゾンビから身を守る方法』(花小金井正幸・著/ポプラ社)『緊急事態宣言対応 最善最強の防災ガイドブック』(コスミック出版)など。】

毎年おこる「想定外」の水害

毎年のように「想定外」の水害が生じる昨今ですが、この想定外の多くは「ハザードマップ」などで想定されている災害です。必ず不意打ちで生じる大地震と異なり、水害は避難をすれば命を守ることができます。事前対策をぜひ行ってください。

自宅周辺の台風・大雨リスクを把握

台風・大雨対策において最初に行うのは、「自宅周辺のリスク」を把握することです。日本中どこでも大きな揺れが生じる大地震と異なり、台風や大雨による高潮・洪水・土砂災害といった災害は、生じる場所が地形によりほとんど決まっています。そして、「ハザードマップ」を見ることで、こうした危険を事前に把握することができるのです。

まずは、国土交通省が提供する「重ねるハザードマップ」をチェックしましょう。

図:重ねるハザードマップ(パソコンで開いた場合)

重ねるハザードマップは、スマートフォンまたはパソコンから閲覧できる、登録不要・無料で使える地図サービスです。日本中の任意の​場所の地図を表示させ、この上に「洪水・土砂災害・高潮・津波」の「ハザード情報」を重ねて表示させることができます。GPS機能があれば「現在地」表示も可能です。

まずはこの地図を見て、自宅・職場・学校などの周辺に、どのような危険が生じる可能性があるのかをチェックしてください。市町村が作成しているハザードマップでは「隣町」の情報を見ることはできませんが、重ねるハザードマップであれば複数の市町村をまたいだ地図を確認でき、居住地と職場・学校が異なる街にある場合などには大変便利です。

2.ハザードマップで避難の方針を定める

重ねるハザードマップを見た際に、自宅が「沈んだり」「崩れたり」する場所にある場合は、避難の方針を定めておく必要があります。その場に留まると命に危険が生じる場合は安全な場所への「立ち退き避難」、危険がない場合は自宅に留まる「在宅避難」となります。

例えば自宅が洪水や高潮の影響で沈む場所にある場合は、「浸水深」と「床の高さ」が重要です。戸建てであれば50センチ程の浸水深でも床上浸水の恐れがあるため、避難場所への「立ち退き避難」が必要になります。一方マンションの上層階に住んでいる場合で、自室までは水が来ないという想定であれば、自宅に留まる「在宅避難」をすることになります。

土砂災害の場合、自宅の建物ががけ崩れなどの影響範囲にある場合や、土石流の恐れがある場所に建っている場合は避難場所への立ち退き避難が必要になります。いずれの場合も、「その場に留まると命にかかわる」恐れがある想定の場合は安全な場所へ移動、危険がない場合は自宅で待機が方針となるのです。

■避難先のポイント
必ず不意打ちで発生する大地震の場合は、まず発災し周囲が破壊された状況からスタートするため、最寄りの避難場所などへ移動する場合が多くなります。一方、台風・大雨の場合は事前避難が可能です。この場合は不便な「避難所」などではなく、親戚・知人の家や、近隣のホテルなどに自主避難する方法もあり、そしてオススメです。

3.家族構成により避難先とタイミングを定める

避難場所などへの「立ち退き避難」が必要な場合は、その避難先や開始のタイミングを考えておくことが重要です。

まず洪水・高潮・土砂災害などから避難すべき場所は、市町村が作成し配付している「ハザードマップ」に載っていますので、これを確認してください。役場の窓口で紙の地図をもらうか、「○○市 ハザードマップ」などと検索して閲覧します。

避難を開始するタイミングは、家族構成により定めます。避難に関する情報は市町村から発表されますが、この時には「警戒レベル」という1から5までの数字と合わせて発表されます。通常は「警戒レベル4:避難指示」が発表された段階で、自宅に留まると命にかかわる場所に住んでいる方は、避難が必要です。

警戒レベルと避難情報

さらに、家族に乳幼児・妊婦・高齢者の方を始め、避難に時間のかかる人がいる場合は、「警戒レベル3:高齢者等避難」が発表された段階で移動を開始するのが目安となります。

なお、最もレベルの高い「警戒レベル5:緊急安全確保」は、すでに災害が生じている恐れがある状況となるため、屋外への避難ではなくその場で「最大限に安全な」行動をとる段階です。

■マイ・タイムラインの活用
「どんな災害」が生じた際に、「どの避難場所」に対して、「どのタイミング」で移動開始するのかを事前に確認することが重要です。これらをまとめるツールとして、「マイ・タイムライン」と呼ばれるものが、各市町村などから公開されています。スマホやパソコンから作成できるものもありますので、ぜひ検索をしてみてください。

4.防災リュックの作成について

避難場所などへ移動する可能性が高い場合は、素早く安全に自宅を出るための準備として、いわゆる防災リュック、非常持ち出し袋などを作成しておくとよいでしょう。

防災リュックは台風や大雨以外の災害においても役立ちますので、どのご家庭にあっても良いのですが、特に避難が必要となる場所にお住まいの場合は優先的に作成してください。

リュックには、避難場所への移動中に必要な道具と、避難後の生活で最低限必要になる道具を入れます。

前者としては、雨具・LEDライト・手袋など身につけるものや、ホイッスル・応急手当て用品など安全を確保する道具。スマホ充電器・ラジオ・ハザードマップなど情報収集の道具や、替えの下着・タオル・生理用品など身体を維持するための道具が必要です。

後者としては、ウェットティッシュ携帯トイレなどの衛生用品、寝袋アルミブランケットなどの寝具とプライバシー確保の道具、ランタン室内用スリッパなどの生活用品などを準備します。多目的に使える大小ビニール袋、貴重品を身につけるポーチ、現金なども準備できると良いでしょう。

水害時の屋外避難の装備例(浸水した場所の避難は最後の手段、できるだけ浸水前に避難するか、自宅に留まるようにしてください)

水と食べ物は重くてかさばりますので、リュック全体の重さが「背負ったときに走れる重さ」になるように量を調整してください。

500mlのペットボトル水を数本と、そのまま食べられる携行食を最低限に、あとは「楽に持てるだけ」追加します。この防災リュックはすぐに持ち出せるよう、できれば玄関の近くなどで日頃から保管できるとよいでしょう。

5.インフラ停止にそなえた防災備蓄

自宅周辺および自フロアに危険がなく「在宅避難」をする場合も、台風・大雨による停電や断水が生じたり、外出ができなくなったりする恐れがあるため、防災備蓄品はどのような家庭にも必要です。

大地震・大雪・パンデミックといった各種災害に対しても必要なため、「最低3日分・できれば7日分」を目安に準備を行ってください。

まずは「わが家には必需品だが、災害直後に入手しづらくなるもの」を優先します。

赤ちゃん用品・介護用品・ペット用品の他、アレルギー対応食や在宅医療に必要なものなどが該当します。支援物資としてもなかなか入手しづらいものが多いため、日頃の在庫を最低2週間分、できれば1ヵ月分程度確保できるように、対応をしましょう。

次に「インフラ停止時の代替品」を用意します。断水に備えた非常用トイレやウェットティッシュ、調理環境を維持するためのカセットガスコンロ、停電に備えたポータブル電源やソーラーパネルなどが考えられます。アウトドア用品などはこれらの道具を代替できますので、日頃のレジャーなどで積極的に使うようにすると良いでしょう。

そして「消耗品」の備蓄です。防災専用に水・食べ物・日用品を用意するとお金や管理の手間がかかりますので、「日常備蓄」の考え方で、普段から消費しているものを多めに持つ、必ず使うものを先に買っておく、などの方法で準備をするのがオススメです。

(記事中の写真・図版/著者提供)

たかに ともや

高荷 智也

Tomoya Takani
備え・防災アドバイザー

備え・防災アドバイザー。「自分と家族が死なないための防災」と「企業の実践的BCP策定」をテーマに活動。大地震や感染症パンデミックなどの自然災害から、銃火器を使わないゾンビ対策まで、堅い防災を分かりやすく伝える活動に従事。著書に『今日から始める本気の食料備蓄』(徳間書店)、監修に『ゾンビから身を守る方法』(花小金井正幸・著/ポプラ社)『緊急事態宣言対応 最善最強の防災ガイドブック』(コスミック出版)など。

備え・防災アドバイザー。「自分と家族が死なないための防災」と「企業の実践的BCP策定」をテーマに活動。大地震や感染症パンデミックなどの自然災害から、銃火器を使わないゾンビ対策まで、堅い防災を分かりやすく伝える活動に従事。著書に『今日から始める本気の食料備蓄』(徳間書店)、監修に『ゾンビから身を守る方法』(花小金井正幸・著/ポプラ社)『緊急事態宣言対応 最善最強の防災ガイドブック』(コスミック出版)など。