子どもの貧困 「子ども食堂」が守る子どもの居場所が大切なワケ

子どもの居場所 ルポルタージュ #1-1 千葉県「TSUGAnoわこども食堂」

ジャーナリスト:なかの かおり

千葉市「TSUGAnoわこども食堂」の代表・田中照美さん。  撮影:なかのかおり

家や学校、そしてどんな場所だと「子どもの居場所」として、子どもも保護者も安心して過ごせるのでしょうか。

コロナ禍の子どもの暮らしの取材・研究を重ねるジャーナリスト・なかのかおりさんによる、子どもの居場所にスポットを当てたルポルタージュ新連載。

第1回目は、千葉県にある「TSUGAnoわこども食堂」。“気になるあの子”がきっかけで、始まったというこちらの子ども食堂。その子はどんな子? そしてどのようにコミュニケーションを取ったのでしょうか?


(全3回の1回目)

子どもたちの居場所とは?

コロナ禍に、居場所がなくなったり、充分なコミュニケーションができなかったり、ストレスを感じる子どもや保護者は少なくありません。2020年春に政府が要請した突然の休校で、給食も行くところもなくなりました。学校には、福祉的な役割もあったのです。

筆者の小学生の娘も、休校中はエネルギーを持て余し、寂しそうでした。習い事も休みになり、図書館や児童館もクローズ。親は、3食の用意に加え、子どもの勉強を見たり心身のケアをしたり、仕事もして、一人何役もこなしました。

そんな閉塞感いっぱいの自粛生活を経験して、子どもの居場所の大事さを改めて感じています。同時に、子育て家庭を支援する人たちに出会い、取材をしてきました。

今回は、感染予防をした上で、以前からやりとりのあった千葉県千葉市「TSUGAnoわこども食堂」を訪ねました。

甘いおやつの香りが漂う、子どもカフェ

2022年6月初めの金曜日、学校が終わる時間になると、千葉市のJR都賀(つが)駅からほど近い「TSUGAnoわこども食堂」に、子どもたちが次々と集まってきました。

月に1回、子ども食堂を開き、さらに毎週金曜日には、千葉市の事業で「こどもカフェ」を開いています。この日はカフェの日で、代表の田中照美さんや大学生のボランティアが笑顔で、「おかえり」、「いらっしゃい」とお出迎え。

この日のおやつはチュロス。ホットプレートで焼かれたチュロスから、甘い香りが漂ってきます。普段から、温かいものや、子どもたちが自分でトッピングするパフェなど、ひと手間かけたおやつを用意しています。

成形されたチュロスを焼いて、ほかほかに。ひと手間が大事です。  撮影:なかのかおり

子どもたちは、入り口で名前を記入して検温・消毒後、室内へ。テーブルで学校の宿題をする子には、ボランティアの大学生が寄り添う姿も。子どもたちは遊んだり、おやつを食べたり、思い思いに過ごします。

高学年の男子は、おやつを食べたら、塾に向かって出発。ここでの短い滞在が、心と体のエネルギーチャージになっているのではないでしょうか。

「チュロス! チュロス!」と言っておかわりをねだる子もいて、ホットプレートはフル回転。田中さんは焼いたり、シュガーをまぶしたりしながらも、中を覗く子に「寄っていく?」と声をかけます。

通りに面する1階にあり、外からも中からも、互いの様子が見える環境で、利用は予約なしでOK。迷っている子には、「お母さんにLINEしようか?」とフォローを入れることも。

ママやボランティアも大好きな場

この日、3人の子を連れてきていたママは、「こういう場所が、家の近くにあってありがたいです。夏休みとか、長い休みの間は特に助かります」と話していました。

小学生の子は宿題を終わらせ、下の子たちはおやつを食べて、おもちゃで遊んで、それぞれに過ごせる安全な空間。ママひとりで3人の子を見るのは、神経が張りつめて大変でしょう。こうした場が必要なんだな、と改めて思いました。

子どもたちが出たり入ったりして遊ぶ基地。  撮影:なかのかおり

ボランティアの大学生の女性にも、話を聞きました。宿題を見て、子どもたちはおやつのテーブルについたところでした。女性は、学校の教師を目指していると言います。

「実は、人と接するのが得意ではなくて……。大学でボランティアが必修だから、何十回も通っているうち、子どもたちが好きになりました。慣れない最初のころは、同じ大学の先輩が“こういうふうに声をかけるといいよ”と教えてくれました」

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