自分を責めるママへ 自分自身を思いやる「セルフコンパッション」を知ろう

認定応用ポジティブ心理学プラクティショナー・松村亜里さんインタビュー 第2回 セルフコンパッションでどんな自分も受け入れられるようになる

認定ポジティブ心理学プラクティショナー:松村 亜里

ポジティブ心理学プラクティショナー・松村亜里さんにママの育児ストレスを解消するための方法を教えてもらう本連載。第1回は12項目のセルフチェックで、いま自分自身の心や体に不足しているものを知りました。第2回は育児のストレスを緩和する方法について。自分への思いやり‟セルフコンパッション”の考え方と実践方法を教えていただきます。

ママは自分を責めず、ママ自身を大切に思いやってあげましょう。  写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート

自分を幸せにする「セルフコンパッション」

私の本、『世界に通用する子どもの育て方』と『ママの自己肯定感を高める本』の中で、自分を幸せにするためには“セルフコンパッション”が大切、と書いていますが、これは簡単に言うと、「大切な人を思いやるように、自分を思いやること」です。
具体的に言えば、「自分が自分の一番の親友になってあげる」ということ。親友が何か失敗をしてしまったときは「自分を責めないで」と寄り添いますよね。セルフコンパッションは、自分を思いやってくれる親友を自分の中に作ることなんです。

そのセルフコンパッションには3つの要素があります。1つめはネガティブな自分をそのまま受け入れること。2つめはネガティブな気持ちになるのは私だけじゃないと気がつくこと。そして3つめは自分に積極的に優しい行動をすることです。

【セルフコンパッションの要素】
1:ネガティブな自分を受け入れる
2:ネガティブな気持ちになるのは私だけじゃない
3:自分に積極的に優しい行動をする

セルフコンパッションは、よく自己肯定感と比較されますが、じつは異なります。まず自己肯定感には2種類あります。ひとつは「自分は〇〇ができるから価値がある」という条件付きのもの。もうひとつは「どんな自分でも価値がある」という条件がない自己肯定感です。子育ての場合は、親から条件付きの愛情を感じると、子どもが条件付きの自己肯定感を感じやすくなり、子どものストレスが高くなってしまいます。

2つめの「どんな自分でも価値がある」という条件なしの自己肯定感とセルフコンパッションは似ているのですが自己肯定感は調子がいいときに助けてくれるもの。でもセルフコンパッションは辛いときにこそ助けてくれるものなんです。ここが自己肯定感とセルフコンパッションの大きな違いです。

「セルフコンパッション」は育児ストレスのスパイラルを断ち切る

では、セルフコンパッションがストレスを感じているママにどういう効果をもたらすのかを説明しましょう。

子育てでストレスを感じているママは、完璧にできなくてイライラする自分を、さらに責めてしまいます。そうすると、
上手くできない→自分を責める→もっとストレスになる→もっと怒っちゃう→落ち込む、という悪循環になってしまいます。これだと傷がすでに痛いのに、そこに塩を塗り込んでもっと痛くしているようなものですね。上手くいかないことは誰にでもありますが、そこで自分を責めると“コルチゾール”というストレスホルモンが出て、さらにイライラしてしまうわけです。

そこで、ストレスを感じたときにセルフコンパッションを選択してみましょう。「上手くいかないときもあるよね」とか、「ちょっと休もう」とか、自分に優しい言葉をかけると、“オキシトシン”という愛情ホルモンが出てきます。オキシトシンには、一緒にいる人を信頼できるようになったり、ストレスを和らげて、体を修復する働きがあります。ママ自身が「大丈夫だよ、自分を責めないでね」と、自分に優しくしてあげると、オキシトシンが出て、ぐるぐる落ち込むスパイラルが断ち切られ、そして次のことを乗り越えるエネルギーが沸いてきて、イライラせず子どもにも優しく接することができるようになるのです。

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