Introduction

『NO.6』は、『バッテリー』のあさのあつこが手がける、近未来SF小説シリーズ。

舞台は、度重なる戦禍で地球環境が壊滅した近未来の世界。絶滅の危機に直面した人類は、最後の希望を託して、残された6つの土地に「人工都市」を建設した。

外部との接触を完全に遮断する高い壁。都市を管理・運営する「市当局」が保証する、安全と安定した暮らし。行き届いた医療に、充実した教育制度――なに不自由ない一生を送ることができる環境が整えられた6つ目の人工都市「NO.6」は、“聖都市” の別名を持つ理想都市であった。

しかしその実態は、「市当局」による完全管理社会。住人は知能によってランクづけされ、住む場所も受ける教育もすべてランクで定められてしまう。

それだけではない。

「NO.6」において、「市当局」への忠誠は絶対。管理体制への不満を漏らしたり、反抗的な態度を取る者は、治安局の手によって「西ブロック」にある矯正施設へと送りこまれる。――一度入ると、二度と生きて外に出ることはできない――そう噂される施設に。

人類の“ユートピア”であると同時に、逃げ場のない“ディストピア”――それが「NO.6」なのだ。

主人公は、「NO.6」のエリートとして育てられた少年・紫苑(シオン)と、「NO.6」の外に広がるスラム地区「西ブロック」に住むミステリアスな少年・ネズミ。友情というにはあまりにも激しく、宿命というにはあまりに切ないふたりの物語は多くの人の心を惹きつけ、シリーズ10巻の累計発行部数は150万部を突破。またアニメや漫画、舞台などのメディア化もされ、今もなお、人々の心に残り続けている。

最終刊の発売から14年――再び「NO.6」の物語が幕を開ける。

Story 14年ぶりの新シリーズ、5月28日発売決定、予約受付中!


2歳の幼児検診で最高ランクに認定され、安泰な将来を約束されたエリートとして育った紫苑。
しかし12歳の誕生日に、部屋に転がりこんできた少年・ネズミを助けたことで、彼の世界が一変する。

紫苑が特別待遇を剥奪され、「ロストタウン」に追放されてから4年。彼の身の回りで次々と奇怪な事件が起きたことが発端となり、ネズミと共に戦いに身を投じた紫苑は、“聖都市”の本当の姿を知ることになる。

過酷な戦いの末、「NO.6」を崩壊させた紫苑とネズミ。
紫苑は「NO.6」再建委員長に就くが、ネズミは「再会を、必ず。紫苑」と告げ、姿を消してしまった。

それから2年。

紫苑は、不安定な政情に悩んでいた。さらに得体のしれない無差別暗殺者に狙われており、ネズミの存在を渇望していた。そんなとき紫苑は、ネズミの気配を近くに感じて……。

二人は、再び、誰もが虐げられない世界をつくることができるのか――?
罠だらけの現実に、二人は「希望」を見つけることができるのか――?

二人の新たな戦いが、幕を開ける。



『NO.6再会#1』
著者:あさのあつこ
絵:toi8
発売日:2025年5月28日(水)
定価:2019円(税込)

ご予約は下記のAmazonもしくは各書店にて

Message 著者・あさのあつこさんからのメッセージ

想いをつづれば

 たくさんの言葉をいただきました。

『NO.6』という物語を一端、閉じたときから十四年が経ちます。その間に、たくさんのたくさんの言葉をいただきました。口頭で、手紙で、SNSで。笑顔と共に、涙と共に、祈りに似た口調と共に、真剣な眼差しと共に、です。

「再会を必ず、紫苑」。ネズミが誓ったあの一言を信じてもいいのですかと問われ、「紫苑と一緒に信じて待ちますから」と告げられました。何度も、何度も。

 作者として、物書きとして、これほど誇らしい、これほど糧となる、これほど輝く言葉が他にあるでしょうか。わたしは感激し、感動し、涙ぐみさえしました。
「ええ、いつか必ず、彼らの再会の物語を」と、約束もしました。なんという軽い、なんという薄っぺらな、何という覚悟のない約束の言葉だったでしょう。

 裏切りだったと思います。
『NO.6』を、二人の少年の運命を、本気で求め、望み、いつまでも待ち続けるとまで言い切ってくれたあなたへの、手酷い裏切りです。本気の想いに、誤魔化しでしか応じなかった。物書きとしてもっとも恥じねばならない裏切りです。

 わたしに再会の物語は書けなかった。二人の少年をこの手に抱くことはできなかった。少なくとも、あの物語を閉じたとき、わたしの手の中には何も残っていなかったのです。ネズミは紫苑の許を去って行ったけれど、紫苑もまた、遥か彼方へ消えて行ったのですから。

 再会♯1の後書きにもつづりました。
『NO.6』を描ききることができなかった。わたしは、紫苑とネズミから彼らのものであるべき戦いを取り上げました。戦いの終焉をエリウリアスに委ねてしまった。どうしてか? その方が楽だったからです。エリウリアスに全てを丸投げしてしまえば、美しく、調和のとれた物語の閉じ方ができる。そう考えたからです。

 わたしは、察していたのだと思います。わたしの力では、二人の戦いを最後まで追いきれないと。自分の無力を、無能を、晒したくなかった。どうにか糊塗したかった。偽りの聖都市を瓦解させ、浮遊する者と留まる者は別れ、再会の誓いだけが残される。

 ある意味、文句のつけようのないラストではないか。これでいいのだと、わたしは何十回と自分に言い聞かせてきました。
 付け加えるなら、わたしは紫苑とネズミに生きていて欲しかった。生き延びさせたかった。そのためにも、エリウリアスに縋るしかなかったのです。
 結果、命を含め自分の全てをかけて挑んだ彼らの戦いを、彼らから奪いました。わたしが裏切ったのはあなただけではなかった。なにより、あの二人を最も惨い形で裏切ってしまったのです。少年たちが、わたしの裏切りを、わたしの卑小さを、わたしの狡さを赦してくれるとは、とうてい思えませんでした。

 書けなかった。彼らが再び出逢い、運命を紡ぐ。そんな物語をどうしても書くことができなかった。エリウリアスに頼らず、彼らを生き延びさせる道がまるで見えなかった。

 これが、十四年間の空白の理由です。
 でも、これでいいのかと自分に問う想いはありました。このままで、いいのかと。ここでもう一度、彼らに向き合わなければ物書きとしてのわたしの未来はない。裏切ったままで、卑小なままで、ただ狡いだけの者で終わってしまう。そういう恐れが、じわりと胸を浸すようになったのです。

 そして、声を聞きました。ネズミの声です。
「生きる場所も死ぬ場所も自分で決める。あんたじゃなくおれが決める。余計なお節介は止めてもらおうか」と。
 紫苑は? 紫苑は黙ったまま、少し離れたところからわたしを見ていました。彼は、自分が誰の傍らで生きていくか、誰の傍らで死にたいのか、揺るがず捉えていたのです。
 そうか、彼らは既に出逢い、運命を紡ぎ始めているのか。
 だとしたら、わたしも、もう一度だけ、本当にもう一度だけ、彼らに手を伸ばそう。この手で彼らの生に触れてみよう。『NO.6』の作者として戦ってみよう。あれほど恋焦がれた少年たちに挑んでみよう。
 今はただ、それだけを考えています。

 十四年の時を経て、あなたに再び『NO.6』を届けます。物語は始まったばかり、どこに辿り着くか見当もつきません。二人の少年が生き延びられるのか危ういとさえ感じます。けれど、やってみます。もう、逃がさない。もう、逃げない。絶望や破綻や崩壊の先に、それでも彼らの命が輝く物語を生み出してみせる。
 待ち続けてくれたあなた。わたしの裏切りを赦してくれとは乞いません。ただ、新たな紫苑とネズミの生を受け取ってもらいたいと、切に願います。

あさのあつこ

Characters 作品を魅了する登場人物たちを紹介!

紫苑

2歳のとき、知能面で最高ランクに認定された超エリート。

逃亡中の少年・ネズミを助け、NO.6市内の高級住宅地『クロノス』から追放される。殺人容疑で連行されるが逃亡し、NO.6を脱出。ネズミのもとに身を寄せる。猥雑な『西ブロック』で生活していたが、NO.6の政府に捕らわれた幼なじみ沙布を救うため、戦いを決意する。

外見からは想像できない生命力を秘めており、寄生バチに体を蝕まれたが生き残った。代償として、白髪となり、体にはヘビのような紅い痣ができた。

ネズミ

NO.6の外に、張り付くように存在するスラム街「西ブロック」に住む少年。

ナイフの扱いが上手く、運動神経も抜群。頭脳明晰で、つねにクールにふるまっている彼だが、NO.6に対してだけは憎悪を隠そうとしない。

イヌカシ

「西ブロック」に住む、ネズミの知り合い。年齢不詳、性別不明。赤ん坊の頃から犬に育てられたため、犬の言葉が理解できる。その力を使った「情報屋」や、住むところのない人間に一夜の宿とお犬を貸す「犬貸し屋」、矯正施設の物資流しを仕事にしている。

NEWS 『NO.6』の最新情報をお届け

○2025年1月31日 『NO.6再会#1』予約開始。日本のXのトレンド1位にランクイン!
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○Amazon 売れ筋ランキング 第1位
 SF・ホラー・ファンタジー(2025/2/5調べ)
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読者からのアツいメッセージ

・「たくさん本は読んできたけれど、これ以上面白い本に出会ったことがない」

・「呼吸を楽にしてくれた本」

・「死にたくなったらネズミの言葉を思い出します。逃げずに前へ進め! 現実を見ろ! どんなに現実が辛くても光を見いだせる人になりたいと思います」

・「泣きたくなった夜に読みます。おまえはどうありたいんだ? いつでも自分にできることを問いかけ、動きつづけたいと思います」

シリーズ紹介 これまで発売された作品をご紹介

コミカライズ

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著者プロフィール

あさの あつこ

Atsuko Asano

岡山県生まれ、在住。大学在学中より児童文学を書き始め、小学校講師ののち、1991 年『ほたる館物語』で作家デビュー。97 年『バッテリー』で第35 回野間児童文芸賞、2005 年『バッテリーI~VI 』で第54回小学館児童出版文化賞を受賞。『NO.6』シリーズは、コミカライズ、アニメ化された。児童文学から時代小説まで様々なジャンルの作品を執筆し、幅広い世代に親しまれている。

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