MCを務める人気バラエティ番組「夫が寝たあとに」で、藤本さん流の読み聞かせ術が大反響
絵本『にじいろの さかな』は、キラキラと輝くうろこを持つ魚「にじうお」が、海に暮らす仲間と共に成長していく絵本。1992年にスイスで刊行され、今では世界で3000万人以上に愛されているという大ベストセラーシリーズです。日本では1995年に谷川俊太郎さんが翻訳し、以降「にじいろの さかな」はシリーズ累計9作品刊行されています。100万部突破も近い、第1巻『にじいろの さかな』が発売されて、今年で30年。30年を記念して、実際に娘さんに『にじいろの さかな』を読み聞かせていたというタレントの藤本美貴さんにスペシャルインタビュー。『にじいろの さかな』との出会いや、子どもに勧めたいと思った理由などについてうかがいました。
藤本美貴さんの2024年のテレビ出演回数はなんと278回! 夫であるお笑い芸人の庄司智春さんと、3人の子育てに奮闘中。そんな藤本さんの的確で前向きな発言が子育て世代を中心に支持されています。
藤本さんと、同じく3児の母である横澤夏子さんがMCを務めるバラエティ番組「夫が寝たあとに」(テレビ朝日系)毎週火曜深夜0時15分放送(※一部地域除く)。
夜、夫が寝たあとに妻たちが本音を語り合っているという設定で、ふたりが繰り広げるママトークに共感できるし、子育てにも前向きになれる、と支持されています。子育て中のふたりのエピソードも毎回登場。昨年放送された「絵本特集」回では藤本さんがおすすめの絵本『にじいろの さかな』を自宅から持ってきて紹介。実際に子どもに読み聞かせるように藤本さんが音読するのを聞いていた横澤さんは、その結末に「泣いちゃうよ~、いい話!」と涙ぐみ、「長女に読みたい! 絶対買う!」と興奮気味に宣言。
ママタレントふたりが大絶賛する絵本『にじいろの さかな』とは──。その魅力を、藤本さんに紹介してもらいました。
本屋さんで見つけてビジュアル買いした『にじいろの さかな』
──藤本さんがこの絵本に出会ったきっかけを教えていただけますか。
このキラキラした表紙に惹かれて、本屋さんで手に取ったんです。長女が幼稚園児だったころかな、本屋さんで、ベストセラーを紹介するようなコーナーに置いてあって、私がひとめ惚れ。パラパラとめくってみると中のページもきれいだし、間違いなく娘も好きだろうなって。
──物語についてはどう思われましたか。
すごく分かりやすいお話なのがいいと思いました。主人公だけが持っているキラキラした特別な鱗を、欲しがる他の魚に分けてあげなかったら、ひとりぼっちになってしまうんですよ。「ぼくはこんなにきれいなのに、どうしてだれにもすきになってもらえないんだろう」と悩むセリフが出てきて、人間の、特に小さい子どもの世界にも、同じような場面があるなと思って。
──娘さんに読み聞かせたときの反応は覚えてますか。
正直、子どもって深い反応はしなくないですか!?(笑) だから私が感想を代弁して、「わあ、キラキラできれいだね~!」「え、キラキラひとつもあげないんだって。それはひどいね」なんて話しながら読み進めています。
──お子さんたちが「これは私のもの!」と言って、お友だちに譲れないことで悩まれたことがあったのでしょうか。
それはあまりないかな。基本的に、お友だちに貸せないものは保育園や公園に持っていかない。外出するときにおもちゃを持っていきたがったら、「(お友達に)貸せるのね?」って確認しています。それで、誰にも触られたくないものは家に置いておこうか、と。でも、きょうだいではずっとおもちゃの取り合いで喧嘩していましたね(笑)。
──この物語には、ひとりじめしてしまう子どもの気持ちの代弁や、どうやったらみんなと仲良くできるかというヒントが描かれています。そういった絵本の教育的なメッセージも、読み聞かせの際にお子さんに聞かせますか。
メッセージは伝えたいんだけど、伝え方としては「だから、大切にしているものもお友だちに貸してあげなさい」ではなくて、「うわあ~! お友だちにキラキラを分けてあげて、みんなで泳いでいるほうが楽しそうだね~」と感想として聞かせて、「そうだね~」と答えるような流れかな。
絵本ってそれぞれに伝えたいことが詰まっているじゃないですか。ああしなさい、こうしなさい、と言うよりも、お話を読みながら、生きていく上でリアルな、大切なことを知ることができるのがいいなと思って、絵本の読み聞かせをしています。
「ハロー! ミキティチャンネル」でも『にじいろの さかな』をご紹介いただいていました。
「『にじいろの さかな』って実は9巻もあったんですね!」と藤本さん。藤本家でも読み聞かせていた「にじいろの さかな」1巻は「大切なものだってお友達にも分けることの大切さ」がメッセージに込められていますが、それに続く2巻以降も巻ごとに、作者のマーカス・フィスターさんによる、「子どもの心を成長させるヒント」がちりばめられています。藤本さんにも残りの8巻を読んでいただき、感想を伺いました。それぞれのお話は独立しているので、順番どおりに読むのも、好きなところから読むのもおすすめです。
種類が違っても仲良くできる、ということを確認できるお話
「これは2作目。物語のはじまりで、(1作目に続いて)にじうおと仲間たちがちゃんと1枚ずつキラキラしたうろこを分け合って仲良く泳いでいる絵が嬉しかったです。しましまと呼ばれている魚だけキラキラのうろこを持っていないんですが、種類が違っても仲良くできる、ということを確認できるお話」by藤本さん
仲間のあいだでの何気ない会話が、他の人を傷つけていることがあると教えてくれる話
「仲間のあいだでの何気ない会話が、他の人を傷つけていることがあると教えてくれる話。それで、にじうおはおおくじらとすれ違ってしまうんだけど、きちんと話してみることで問題は解決する。自分が考えていることはちゃんと言葉にして、話し合うことは大切なんだって学べます」by藤本さん
最初の一歩を踏み出す大切さが分かる物語
「最初の一歩を踏み出す大切さが分かる物語。勇気を出して踏み出したら、それまでの怖さってスッと消えることもあるんだよって、このお話を通して伝えたいです」by藤本さん
1作目のお話とメッセージ性が似ている物語
「きれいな青い石を拾うのに夢中になって、にじうおが迷子になってしまうんですけど、出会って助けてくれた魚にその大事な青い石をお礼としてプレゼントすることで、仲間の元に帰れるきっかけになる。1作目のお話とメッセージ性が似ている物語かな」by藤本さん
単純にキラキラがいっぱいなのと探し物のストーリーが子どもにわかりやすい
「この話は結構、衝撃でしたねー。にじうおのキラキラした鱗って泳いでいるだけで、そんな簡単に取れちゃうんだ、ヤバいじゃんって(笑)。物語は単純にキラキラがいっぱいで楽しかった。探し物をするというストーリーも、子どもに分かりやすいと思いました」by藤本さん
少し小さい子向けのかわいい話
「このお話、かわいいですよね。お母さんのこういう気持ちって、我が家ではなかなか言葉にして伝えることはないから、読み聞かせにいいなと思いました。母は偉大だな~」by藤本さん
負けることもある、負けても大丈夫、タイトルのとおり負けるのも大事って知ってほしい
「これは少し年上の子どもに読み聞かせたいです。小学校にあがっても、負けるとすねちゃう子とか、大人は手加減してくれるのが当たり前だって考えている子、いますよね。でも私は現実を知っておいたほうがいい、と思うから。勝つことばかりにこだわる子がいると、親や先生の見えないところで子どもたちだけでやり取りして、大きな揉め事になったりするんですよ。だから、負けることもある、負けても大丈夫、タイトルのとおり負けるのも大事って知ってほしい。
うちでは、相手が子どもだからって手を抜いたりしないので、世の中のシビアさは普段から教えているかな。例えばじゃんけんをするとして、次はママは何を出すだろう、勝てるかなってドキドキするのが楽しいじゃないですか。あとはオセロとかゲームをするとき私たち親も本気で挑むので、子どもは負けたら泣くんですけど、そんな機会がなければ絵本を通してでも良いので、世の中の現実を伝えていくことも大切だし、それが子どもの成長につながるのかなと考えています」by藤本さん
噓について子どもと話し合える一冊
「話し方ひとつで、人の印象って変わるんですよね。噓をつくのと、おもしろおかしく空想のお話をするのは全く別物だよって。噓について子どもと話し合える一冊。本気で人を怖がらせる話をするのはだめだよ、とも伝えたいです」by藤本さん
藤本美貴さんインタビュー
インタビュー・文/小和野薫子
撮影/阿部ちづる(LOVABLE)
ヘアメイク/太田年哉(マロンブランド)
スタイリスト/河西真弓
にじうお
キラキラと輝くうろこを持つ特別な魚。キラキラのうろこを自慢に思っていた。タコの助言により、仲間がいることの幸せに気づく。
ちびあお
にじうおの仲間。最初に、キラキラのうろこがほしいとにじうおに持ちかけた。できないことでも、何度もチャレンジする頑張り屋さん。
しましま
『にじいろの さかな しましまを たすける』から登場。キラキラのうろこを持っていないため、仲間はずれにされたことがある。
ぎざぎざ
にじうおの仲間。いろいろなアドバイスをしてくれる仲間のリーダー的存在。怖いサメにも立ち向かう勇気を持つ。
あかひれ
にじうおのお姉さん的存在。シリーズ初めての女の子。仲間がケンカしたときも、仲直りするのを助けてくれる。
ウンベルト
黄色の背びれがトレードマークの、ちょっとふしぎなさかな。おはなしを作ってみんなを楽しませるのが好き。
マーカス・フィスター(Marcus Pfister)
1960年、スイスのベルンに生まれる。高校卒業後、ベルンの美術工芸学校の基礎科に入学。その後、グラフィック・デザイナーとして、1981年から1983年までチューリッヒで働く。カナダ・アメリカ・メキシコを旅行ののち、帰国後はフリーランスのグラフィック・デザイナー、イラストレーターとして活躍している。
おもな作品に「ペンギンピート」シリーズ、「うさぎのホッパー」シリーズ、「にじいろの さかな」シリーズなどがある。
1993年、ボローニャ国際児童図書展エルバ賞を受賞した『にじいろの さかな』をはじめとする「にじいろの さかな」シリーズは、世界で3000万人の読者に迎えられた大ベストセラーとなっている。
谷川俊太郎(たにかわ・しゅんたろう)
1931年、東京に生まれる。高校卒業後、詩人としてデビュー。
1952年に第一詩集『二十億光年の孤独』(創元社)を刊行。以後、『定義』(思潮社)、『女に』(マガジンハウス)、『ことばあそびうた』(福音館書店)、『はだか』(筑摩書房)、『世間知ラズ』(思潮社)など多くの詩作がある。
ほかにレコード大賞作詞賞受賞の「月火水木金土日の歌」、テレビアニメ「鉄腕アトム」の主題歌などの作詞、『スイミー』(好学社)などのレオニの絵本や『マザー・グースのうた』(草思社)、「スヌーピー」シリーズ(角川書店)、「にじいろの さかな」シリーズ(講談社)の翻訳など、幅広く活躍。
1975年に『マザー・グースのうた』で日本翻訳文化賞、1988年に『はだか』で野間児童文芸賞、1993年に『世間知ラズ』で萩原朔太郎賞などを受賞。