2024年3月31日に多くの人に見守られながら28年の長い生涯に幕を下ろしたタンタン。
神戸市立王子動物園で暮らしていたパンダのタンタンは、
短い手足にモフモフとした毛並みがぬいぐるみのようにかわいらしく、
“神戸のお嬢さま”と呼ばれ、多くの人に愛されてきました。
これまで数年に渡り放映されてきたタンタンの密着番組NHK「ごろごろパンダ日記」の
番組プロデューサーの杉浦大悟氏が執筆し、タンタンの“パン生”を丁寧に紐解いた
愛に溢れた一冊「パンダのタンタン 二人の飼育員との約束」が2024年10月23日に発売ーー!
旦旦(タンタン)
中国名 爽爽(シュアンシュアン)
性別:メス
生年月日:1995年9月16日
身長:130cm
体重:80kg
出身地:中国四川省臥龍保護研究センター
好きな食べ物:竹・りんご・にんじん
好きなこと:食べること・寝ること
阪神淡路大震災で傷ついた神戸の復興を支援するために、2000年にオスの興興(コウコウ)とともに中国から神戸市立王子動物園にやってきた。飼育員の二人からみた性格は、おっとりだけど、神経質でマイペース。気に入った竹しか食べないグルメパンダで、竹を用意するのも一苦労だったという。手足が短く、ぬいぐるみのようにかわいらしい姿と、背筋をのばして食べる姿が上品なことから“神戸のお嬢さま”と呼ばれていた。2024年3月31日に28歳で永眠。
飼育員の梅元良次さん
神戸市立王子動物園
王子動物園に配属後、2008年からタンタンの担当飼育員。前例の少ないパンダのハズバンダリートレーニングを取り入れるなど、新しいことにも積極的。タンタンに会えないファンの方に向けてSNSで情報発信を始めたところ、大きな話題となる。
飼育員の吉田憲一さん
神戸市立王子動物園
神戸市の造園手として働いていたが、その後王子動物園に赴任し、2009年からタンタンの担当飼育員となる。それまでの造園手としての経験を活かし、園内でさまざまな種類の竹を育ててタンタンの難しい食の好みにも応じてきた。
著者/杉浦大悟
番組プロデューサー(NHK)
1973 年、神奈川県横浜市生まれ。NHK 専任部長。5 年間タンタンと飼育員の二人に密着した「ごろごろパンダ日記」をはじめ、「ギョギョッとサカナ★スター」など、NHK の数多くの番組の立ち上げ・制作に携わる。著書に、『21 人の輪 震災を生きる子どもたちの日々』(NHK 出版)がある。
「タンタンは本当にかわいいパンダです。でもその“パン生”は想像もつかないほど波乱に満ちていました。困難に直面するたび、タンタンは二人の飼育員に助けられながら懸命に乗り越えていきます。かわいいだけではない、タンタンの姿を多くの人に知ってもらいたいです。そしてこの本を通じて、私たちが動物とどうかかわっていけばよいか、考えるきっかけとなることを願っています」
絵/中村愛
水彩画家
埼玉県生まれ。東京芸術大学大学院美術研究科日本画博士後期課程修了。絵画教室アトリエAI 主宰。水彩で描いたお花や、しろくまとパンダの作品を数多く発表している。著書に「しろくま、ときどきパンダ」「花と植物を描く水彩の教科書」(グラフィック社)などがある。
「タンタンと飼育員さんたちが過ごしてきたかけがえのない日々が、本当にひとつの絵本の世界のように綴られていて、みんなの懸命な姿やそれぞれの想いが伝わってきます。タンタンがぎゅっと詰まった一冊となっておりますので、お手元に置いていただけたら嬉しいです」
担当編集/杉原舞衣
講談社
「本書は、人と命ある生きものとの関係性や、老いるときも責任を持ってともにあるとはどういうことなのかを、飼育員の二人の姿を通して伝えています。
動物園に行くことが好きな子はもちろん、身近な生きものとの関わり方や、生きものを育てるということについて、大人も一緒に考え直すきっかけとなってくれれば嬉しいです」
「一つ一つの情景が目に浮かぶようで、心が熱くなり、切なくなり、ジーンとなりました。
タンタンは皆の心の中に花を咲かせてくれます」
さかなクン
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根曲がりのタケノコ
神戸近郊の竹林にはあまり生えていないことから、わざわざ吉田が園内で育てている根曲がり竹。この根曲がり竹のタケノコはタンタンが特にお気に入り。
小さなタイヤ
お腹が満たされると、梅元が壁に立てかけていった小さなタイヤに目をやった。口でくわえると、ブンブンブンブン首を振って力いっぱい振り回す。くわえたまま寝室に入ると横になり、今度はペロペロなめたりかじりついたり、いつまでもタイヤを放そうとはしなかった。
ひまわり
1枚の写真が大きな話題を呼よんだ。写っていたのは、運動場のやぐらでくつろぐタンタンと、パンダ舎の屋上に咲くひまわり。「屋上にチラホラひまわり咲いてます」というメッセージが添えられて、SNSに投稿された。
「ほんまきれいに咲いたなあ」ホースで水をまく梅元の脇で、腰をかがめてひまわり畑ばたけの雑草を抜いている吉田が話しかけた。屋上のひまわりたちは、運動場をシートで囲ったタイミングで二人で種をまいた。「タンタンのうんちも混ぜたからね。そのおかげかも」梅元は笑顔で返事をした。種をまく際には肥料としてタンタンのうんちも混ぜた。
つまりこのひまわりは、タンタンが咲さかせてくれたものだ。
神戸のお嬢さま
タンタンはほかのパンダと食べるときの姿勢が少し違う。一般的に、パンダはお尻ではなく、腰を地面につけて後ろあしを前に投げ出す「パンダ座り」と呼ばれる姿勢で竹を食べる。両手を使って竹を食べることができ、腰への負担も少ないのでこの姿勢をとることが多い。動物園でよく見かける、背中を丸めてリラックスしながら竹を食べる姿だ。
それに対しタンタンは、パンダ座りが苦手。代わりに、背中をピンと伸ばし、タイヤや木などにもたれかかって竹を食べる。この上品そうな格好も、お嬢さまと呼ばれる一因となっている。
NHK「ごろごろパンダ日記」DVD
取材班がバックヤードに密着した膨大な映像とともに、タンタンが神戸で過ごした日々を振り返る感動ドキュメンタリー。2024年12月20日(金)発売。
詳しくはこちら▶▶https://www.nhk-ep.com/products/detail/h54378AA
「水曜日のお嬢様 タンタンのゆるゆるライフ」
ISBN:978-4-06-536661-5
“神戸のお嬢様”とも呼ばれ、愛されてきたタンタンと飼育員さんたちの心あたたまる日々を紹介。バックヤードの様子もたっぷりで、タンタンにもう一度会える一冊。
著者:二木繁美
定価:本体1500円(税別)
発売日:2024年9月5日
判型/ページ:四六判/256ページ
https://amzn.to/4eIf1QZ
写真提供/神戸市立王子動物園
絵/中村 愛
協力/神戸市立王子動物園、NHK「ごろごろパンダ日記」制作班