ゴジラ その知られざる歴史【シリーズ化への道編】

『「ゴジラ」東宝特撮・SF映画史』の著者・岩畠寿明によるゴジラ秘史!

テレビマガジン編集部

ゴジラ対キングギドラの激闘! ゴジラの歴史は戦いの歴史だ!  TM & © TOHO
すべての画像を見る(全7枚)
『ゴジラVSビオランテ』から導き出されるシリーズ化への答え。

「ゴジラ映画」にさらなるハネを与えることになるポイントとは!?
『「ゴジラ」東宝特撮・SF映画史 平成編』(2026年8月12日発売。税込み定価:1430円。発売/講談社) TM & © TOHO
1975年にシリーズ展開が終了してから9年、怒りをまとったゴジラが再びスクリーンに姿を現した。

昭和の終わりに登場する「平成ゴジラ」だ。復活からシリーズ化へ。怪獣王、激動の歴史をたどってみた。

──発売中の『「ゴジラ」東宝特撮・SF映画史 平成編』(講談社)より一部抜粋・編集して紹介。

本格的な製作に向かって

田中は、プロットの決め込み作業と並行して、監督の選定も行っていた。1985年の11月頃と思われるのだが、監督に大森一樹を指名している。プロットと同じく脚本と演出にもニューウェーブを必要とし、外部監督の起用に賭けたのである。大森は自主映画出身の映像作家である。自分が演出する「ゴジラ」ということで『ゴジラ対ビオランテ』のプロットを選んだのは大森で、田中は大森にその脚本化も発注した。

脚本の作業で具体的なサポートを担当することになったのは、富山省吾である。田中の大森への注文は「動と動のゴジラ映画が見たい」というもので、対決路線であること、そして、大森が好む政治劇を含むポリティカルフィクションは匂わせても「007映画」寄りであることが確認され、ハリウッド映画に色濃いスピーディな展開というイメージも強調されている。

大森はそんな田中の意向に沿った物語を組み立て、『ゴジラ2』検討稿は1986年10月1日に完成した。しかし、東宝本社から製作に向けてのゴーは出なかった。それは、ゴジラというブランドを毀損することがないよう、万全の態勢で臨みたいという姿勢の表れでもある。富山はちょうどこの時期に東宝映画の企画者になったことから、『恋する女たち』の脚本・監督を大森に発注している。この作品で大森は、特技監督の川北紘一と出会うことになる。

『恋する女たち』で、大森は類いまれな手際の良さを見せる。とはいえ、『ビオランテ』の打ち合わせのために金沢ロケの現場に田中が現れる熱意を受け、映画の完成後すぐに大森は「ゴジラ」の作業に戻る。その結果、1987年1月17日には『ゴジラ2 ゴジラVSビオランテ』第三稿が脱稿している。

そして1989年の4月1日に田中は東宝映画の会長職に就くのだが、その後の5月になると東宝の上層部が動いた。『ゴジラVSビオランテ』の製作が、正式に決定したのである。その公開が12月16日に設定されたことから、具体的な製作スケジュールはタイトなものとなる。大森はただちに脚本の仕上げ作業に入り、7月7日に『GODZILLA ゴジラVSビオランテ』製作準備稿が出来上がる。

最終的に予算会議などを経た決定稿、『ゴジラVSビオランテ』が完成したのは7月24日、そこから準備は急がれて特撮班がクランクインするのは8月10日、本編班は2週間以上遅れた8月28日となった。
スーパーX2の攻撃をものともしないゴジラ。(『ゴジラVSビオランテ』より)  TM &  © TOHO

「ゴジラ」、シリーズ化の決定

ゴジラが復活しておよそ5年を経て完成した『ゴジラVSビオランテ』(1989)だが、その実行予算はおよそ7億~8億円ほどである。それは、実行予算が最終的に15億円ほどに達した『ゴジラ』(1984)の配給収入が17億円だったことから、製作費を減らすことによって収支に保険をかけたということなのだろう。だがそれ以上に、あまりにも大きな規模での連作体制は現実的ではないという判断もあったと想像できる。

当初より「ゴジラ映画」のシリーズ化を目指す東宝にとって『ゴジラ』(1984)は、復活の狼煙として大いにアピールする必要があった。しかし、連作していく場合は、作品を大規模にすることによるデメリットが目立ってくるのだ。製作体制が大きすぎると細部にわたる意思決定も遅くなり、新鮮な作品作りにとってはむしろ逆効果となってしまう恐れがある。それを防ぐためにも、『ビオランテ』を連作可能な規模で創り上げ、その規模の意義を確認することが必要だったのではないだろうか。

結果、『ビオランテ』の仕上がりは、合格点を大きく上回っていた。しかし、残念ながら動員は200万人ということで、その配給収入は、動員が320万人となった『ゴジラ』よりもだいぶ下がって10億4000万円に終わってしまう。少なくはない製作費を考えると微妙な数字ではあるが、シリーズ化を頓挫させるほど悪くはないことがわかる。

このことは「ゴジラ映画」にとってはむしろ、吉と言えた。それは、企画者である田中友幸や東宝映画、東宝映像美術の企画・製作関係者たちにとって、「ゴジラ」をシリーズ化に持ち込む方向性が「見えた」からである。それは、『ビオランテ』を支えた活劇的な指向は間違ってはおらず、潜在的な認知度が大きい「ゴジラ映画」にさらなるハネを与えるポイントさえ明らかになれば、「勝ち」が確定する可能性が極めて高いことを意味していた。
変態したビオランテが若狭湾に出現!(『ゴジラVSビオランテ』より)  TM & © TOHO

『ゴジラ』をはじめ東宝特撮・SF映画の世界が文庫に!

発売中の『「ゴジラ」東宝特撮・SF映画史 昭和編』(税込み定価:1397円。発売/講談社)に続いて、『「ゴジラ」東宝特撮・SF映画史 平成編』が2026年8月12日に発売。(税込み定価:1430円。発売/講談社)

ぜひご期待ください!
TM &  ©  TOHO
『「ゴジラ」東宝特撮・SF映画史 平成編』(2026年8月12日発売。税込み定価:1430円。発売/講談社)  TM &  ©  TOHO

既刊本のご紹介

『「ゴジラ」東宝特撮・SF映画史 昭和編』(2026年4月15日発売。税込み定価:1397円。発売/講談社)  TM & © TOHO CO.,LTD.
この記事の画像をもっと見る(7枚)
テレビマガジン編集部
てれびまがじんへんしゅうぶ

テレビマガジン編集部

日本初の児童向けテレビ情報誌。1971年11月創刊で、仮面ライダーとともに誕生しました。 記事情報と付録の詳細は、YouTubeの『テレビマガジン 公式動画チャンネル』で配信中。講談社発行の幼年・児童・少年・少女向け雑誌の中では、『なかよし』『たのしい幼稚園』『週刊少年マガジン』『別冊フレンド』に次いで歴史が長い雑誌です。 【SNS】 X(旧Twitter):@tele_maga  Instagram:@tele_maga

日本初の児童向けテレビ情報誌。1971年11月創刊で、仮面ライダーとともに誕生しました。 記事情報と付録の詳細は、YouTubeの『テレビマガジン 公式動画チャンネル』で配信中。講談社発行の幼年・児童・少年・少女向け雑誌の中では、『なかよし』『たのしい幼稚園』『週刊少年マガジン』『別冊フレンド』に次いで歴史が長い雑誌です。 【SNS】 X(旧Twitter):@tele_maga  Instagram:@tele_maga