【日本唯一の部活「水族館部」の元部長】すみだ水族館飼育員のお仕事に1日密着!

長浜高校水族館部の元部長であり、現在はすみだ水族館職員の伊井洸晶さんにインタビュー

担当している「江戸リウム」の金魚にエサやりをする伊井洸晶さん。  撮影/安田光優(講談社写真映像部)
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愛媛県立長浜高等学校にある日本唯一の部活動「水族館部」

「長高水族館」の運営や、展示されている生き物の世話、研究などを、まるで水族館職員のように高校生たちが行うユニークな部活動です。

そんな水族館部の元部長で、現在はすみだ水族館の職員として働く伊井洸晶(いい・ひろあき)さんにインタビュー。

前回は水族館部の部長として過ごした日々の思い出をうかがいましたが、今回は現在、伊井さんが働く水族館でのお仕事内容について、詳しく教えてもらいました。
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愛媛大学で水産について学んだのち、あこがれの水族館に就職

──伊井さんは今、すみだ水族館で飼育員として働いているんですよね。長浜高校を卒業してからどのような流れで今の仕事に就いたんですか?

高校卒業後は、愛媛大学の社会共創学部に進学しました。愛媛県内の産業や地域資源の課題について学び、導くような人材を育成する学部です。

その中でも私は海洋生産科学コースというところに進んで、水産系の分野について勉強していました。

就職活動をする時期になり、やっぱり魚や生き物に関わる仕事がしたいなと思って探していたところ、すみだ水族館の新卒採用の募集を見つけて、ご縁があって就職することができました。

約15品種の金魚が展示されている「江戸リウム」を担当

たくさんのクラゲが幻想的に泳ぐエリアも。  撮影/安田光優(講談社写真映像部)
──今のお仕事内容について詳しく教えてください。

今は金魚をメインで担当しています。

すみだ水族館では、金魚展示エリア「江戸リウム」内で、ワキンやリュウキン、ランチュウなど、約15品種の金魚を常時展示しているので、そのコたちのお世話が主な仕事ですね。

他にも、小笠原諸島の生き物を展示している「小笠原大水槽」の掃除やエサやりをすることもあります。

──伊井さんは、今年で社会人3年目ですよね。入社以来ずっと金魚の担当なんですか?

いえ、入社して半年間くらいはクラゲの担当をしていました。

そこで先輩から、仕事について1から教えていただき、その後、金魚エリアに来ました。金魚についても全く知見はなかったので、最初は先輩に教えてもらいながら仕事を覚えていきました。

今は、私の下に後輩も入ってきたので、後輩に教えることもあります。

掃除にエサやり、魚たちの健康管理も飼育員の仕事

お客さんに説明しながら、ランチュウにエサやり。  撮影/安田光優(講談社写真映像部)
──飼育員さんの1日のお仕事内容を教えてください。

飼育員は複数人で1つのエリアを担当していて、早番と遅番のシフト制なんです。

早番のときは朝8時ごろに出社して、夕方5時まで。遅番のときはお昼の12時くらいに出社して、21時くらいまで働きます。

仕事内容は主に水槽の掃除と、魚たちへのエサやりです。

あとは病気になったり、元気がなくなっているコがいないかチェックして、もし必要があれば薬を与えたり、元気になるためのメンテナンスをしたりしています。

──エサやりのときに気をつけていることはありますか?

エサを与えすぎないことです。金魚は胃袋がない「無胃魚」なんです。

胃袋がある動物は、ものを食べるといったん胃袋に溜まり、消化してから腸に送られていくのですが、金魚の場合は消化せずそのまま腸に行ってしまう。なので、食べすぎると消化不良を起こしやすいんです。

──金魚に胃がないなんて知りませんでした……!

あとは、水槽の形によってエサの種類を変えたりもしています。

普通の蓋つきの水槽なら、軽いエサを入れて金魚たちが水槽の上のほうまで食べにくるんですが、ランチュウを展示している水槽は上から水があふれていくデザインなので、軽いエサだと浮いて流れていってしまう

なので、下に沈む重いエサを与えています。

大水槽の中に入って魚にエサをあげるのが楽しいです

笑顔で将来の夢を語る伊井さん。  撮影/安田光優(講談社写真映像部)
──ちなみに、お仕事をしていて一番楽しいときってどんなときですか?

たくさんあるんですが、小笠原エリアの掃除やエサやりは楽しいです。

すみだ水族館には、日本では小笠原諸島でしか生息が確認されていないシロワニ(サメの一種)をはじめ、45種類・450匹の生き物が泳いでいる大水槽があって、飼育員も水槽の中に入って掃除やエサやりをするんです。

生き物たちと同じ水の中で仕事をするのは、やっぱりワクワクする時間です。

──今後、叶えたい夢や目標はありますか?

自分が担当しているエリアの生き物について「金魚のことは伊井に聞けばなんでも分かる」と言われるくらい完璧になることです。

なかなか難しいことではあると思うんですが、今後も日々、勉強を続けて、追究していきたいです。

諦めなければ好きなことを仕事にできる

──ありがとうございました。最後に、将来水族館で働きたいと思っている子どもたちに向けてメッセージをお願いします!

私は、水族館に就職したからこそ、生き物についてより深く学ぶことができました。

生き物を身近で見て、感じて、お客様に魅力を伝えるという飼育員の仕事はすごく楽しいです。

「好きなことを仕事にするのは難しい」とよく言われますが、諦めずに挑戦すれば夢は叶うと思います!

伊井さんが働く「すみだ水族館」はこんなところ!

東京スカイツリータウン内、5階と6階の2フロアで約7000点の生き物を展示する都市型水族館

小笠原諸島の海を再現した「小笠原大水槽」や、金魚展示エリア「江戸リウム」、約500匹のミズクラゲが漂う幻想的な「ビッグシャーレ」など、生き物を身近に感じられる展示がたくさん!
すみだ水族館

所在地:〒131‐0045 東京都墨田区押上1丁目1番2号 東京スカイツリータウン・ソラマチ5F・6F

営業時間:平日10:00~20:00(最終入場19:00) 土日祝9:00~21:00(最終入場20:00)

休館日:なし(年中無休)※ただし、施設点検などで臨時休業あり

公式サイト:https://www.sumida-aquarium.com/

小説もチェック!

伊井さんが部長をつとめていた時代の長浜高等学校水族館部が舞台になった小説『長浜高校水族館部!』が、青い鳥文庫から2025年8月6日に刊行されました!
『長浜高校水族館部!』 作:令丈ヒロ子 絵:紀伊カンナ

長浜高校水族館部が運営している水族館の一般公開日には、生徒自らが魚の解説をして大人気!

研究では世界で4位になるなど素晴らしい成果をあげています。

しかし相手は生き物。繁殖がうまくいかなかったり、魚が死んでしまったり、次々困難に直面。

テレビでもたびたび取り上げられた部員たちのアツい日々を「若おかみは小学生!」の令丈ヒロ子氏が取材、事実をもとに小説に!

2019年に単行本として刊行されましたが、このたび青い鳥文庫化!
▼伊井さんが長浜高校水族館部の部長だった頃のことを語るインタビューはこちらから!▼
\読書感想文におすすめの本は他にも!/
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