
高校卒業後、夢を叶えて水族館職員になった生徒も! 日本で唯一の「水族館部」って?
全国から入部希望者が殺到する愛媛県立長浜高校水族館部の様子を元部長・伊井洸晶さんが語る
2025.08.27

水族館部の活動内容は、「長高水族館」の運営。
水族館に展示されている生き物のお世話や研究、月に一度の公開日に来場者への解説、イベントの企画・運営など、大人顔負けの活動を行っています。
そんな水族館部を舞台にしたドキュメント小説『長浜高校水族館部!』が、2025年8月6日に刊行されました。
『長浜高校水族館部!』 作:令丈ヒロ子 絵:紀伊カンナ
長浜高校水族館部が運営している水族館の一般公開日には、生徒自らが魚の解説をして大人気!
研究では世界で4位になるなど素晴らしい成果をあげています。
しかし相手は生き物。繁殖がうまくいかなかったり、魚が死んでしまったり、次々困難に直面。
テレビでもたびたび取り上げられた部員たちのアツい日々を「若おかみは小学生!」の令丈ヒロ子氏が取材、事実をもとに小説に。
2019年に単行本として刊行しましたが、その後、水族館部に起こった出来事を追加取材。
「文庫版あとがき」を加筆し、このたび、青い鳥文庫から文庫版として新たに刊行!
水族館部の経験を活かし、現在はすみだ水族館で飼育員として働く伊井さんに、水族館部の思い出や魅力について教えていただきました。
部員同士の何気ない会話も忠実に再現された小説

もちろんです。当時、私は部長を務めていたのですが、部活動と勉強、生徒会活動との両立がけっこう大変で……。
水族館部でも毎日いろんなことが起きて、バタバタの日々でした。
そんな中で取材をしていただき、出来上がった小説は、すごく面白かったです。
水族館部の展示ができるまでの部員同士の何気ない会話なども忠実に再現されていて、驚きました。
──まわりの人からの反響はありましたか?
中学校の校長先生から「読み進めれば進めるほど面白くて、夢中になって読んだよ」という連絡をいただきました。
あとは母も、この小説を読んで私が部長としてどういう活動をしていたのか、より理解してくれたようで、「頑張っていたんだね」と言われたのを覚えています。
水族館部での活動を通して、将来の夢も決まった

両親の実家が海に近いこともあり、物心ついたころから魚釣りや磯遊びが好きでした。
生き物全般好きでしたが、特に魚は、私たちが普段生活している大地とは違う、水中に生息しているところに興味を持ち、自分でも飼育したいと思うようになりました。
小学生のころにも、自宅でカワムツや小さなハゼなど淡水魚を飼育したことがあるんですが、当時はあまり知識もなく、うまくいかないことも多かったんです。
それで、もっと詳しく魚の飼育について学びたいと思い、実家から少し離れてはいたものの、長浜高校に進学することを決めました。
──自宅から離れた高校への進学について、ご家族はどのような反応でしたか?
最初は不安もあったようですが、最終的に「私のやりたいことが一番できる高校なら」と応援してもらえました。
──そのころから、将来は魚に関わる仕事がしたいと考えていたんでしょうか?
そうですね。中学生くらいのころから「将来は生き物に関わる仕事をしたい」という気持ちはありました。
最初は研究者になりたかったんですが、水族館部での活動を通じて、次第に飼育者になりたい気持ちが強くなっていきました。
毎月第3土曜日は一般公開! 本格的な水族館部の活動
水族館部の日々の活動内容は、主に自分の担当水槽のメンテナンスと班活動でした。
担当していた水槽はサンゴです。班活動は、研究班、繁殖班、イベント班の3つに分かれていて、私は研究班に所属していました。
あとは、毎月第3土曜日に水族館を一般公開していて、来てくださったお客さんに飼育員として魚の解説をしたり、ショーを行ったりもしていました。
──高校3年間の中で、一番印象に残っている出来事はありますか?
毎年夏に愛媛県宇和島市でおこなっていた合宿です。
日中に桟橋の下で生き物を探して、写真を撮ったり採取していいものは採取して持って帰り、みんなの前で発表するんです。
今の自分の仕事にもつながる、貴重な経験だったと思います。
小説にも登場する、ハマチの輪くぐりショー
小説に出てくるものだと、ハマチショーに関するエピソードが印象的でした。

このままではショーもできない、どうしようと困っていたら、顧問の先生が新しいハマチを釣ってきてくれました。
そのコにまた芸を教え込んで、無事にショーを開催できた……ということがありました。
──小説の中では、そのショーを秋篠宮様がご覧になるというエピソードが描かれていました。あれも実話なんでしょうか?
そうなんです。
私たち生徒は直前まで「すごい方が観に来られるから」としか知らされておらず、驚きました(笑)。
殿下にはハマチショーの他にも、私が飼育していた蛍光色のように見えるサンゴにも興味を持っていただきました。
あとは殿下もナマズの研究をされていたということで、ニホンナマズの水槽をご覧になって「いいナマズですね」と言っていただけたことも、印象に残っています。
他では学べないようなことが、水族館部で学べます!

個人的には「やらずに後悔する」というのが一番悔しいことだと思うんです。
なので、少しでも長浜高校に、水族館部に入ってみたいという気持ちがあるなら、その気持ちを大事にしてほしいです。
他の高校や大学、専門学校でも学べないようなことを、水族館部では学ぶことができます。
きっと貴重な経験をたくさんできるはずです。
私の代の頃は、遠方から来た生徒の寮のような場所はなかったですが、現在は寮のような場所があると聞いています。その辺りのフォローは当時より今のほうが進んでいると思います。
──まずは水族館の一般公開日を観に行ってみるのもよさそうですね。
私のときも公開日に「北海道から来ました」というお客さんがいらっしゃいました。
気になることや不安なことは、部員に声をかけて聞いても大丈夫なので、少しでも興味がある方は、ぜひ一度足を運んでみていただけたらと思います!
次回は、伊井さんの現在のお仕事である「水族館の飼育員」について、どうやってなるのか、どんなお仕事をしているのか、お話を聞いていきます。
下のリンクからお楽しみください!(※公開日までリンク無効)
