「RD育成プロジェクトはAIとのコミュニケーション方法を学ぶ最適な場」赤間怜奈(AI研究者)× はやみねかおる対談3

「RD育成プロジェクトはAIとのコミュニケーション方法を学ぶ最適な場」赤間怜奈(AI研究者)× はやみねかおる対談3

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はやみね 自分は、クイーンが倉木研究所からRDを盗んで、1~2年経ったくらいかなっていう感じでしたね。まだ“しゃれた言い回し”まではできず、クイーンの悪影響を受けていないような(笑)。

もっと学習していったら、反抗期を上手いことごまかしている、小賢しい、小狡い少年くらいにはすぐになっていくような気がしました。

──赤間先生、それは実現可能でしょうか?

赤間 私は可能だと思っています。それこそ、クイーンのようにRDとぶっ飛んだ会話をする方やユーモラスで素敵な表現を教えてくれる方が、ファンの中にたくさんいらっしゃるといいなと思います。

【原作をおさらい】「怪盗クイーン」シリーズでのRDの成長

──ここで「怪盗クイーン」シリーズをサッとおさらいして、RDの成長を確認したいと思います。

お話の中で、RDは時間とともに成長し続けています。倉木研究所でも、トルバドゥール号に移植されてからも、カメラやセンサーを感覚器官として使い、六本指のマニピュレーターを操り、現実世界への「物理的な干渉」をすることが可能でした。
RDのマニュピレーター。
RDのマニュピレーター。かなり高性能で、クイーンの散らかした部屋を片づけたり、クイーンの洗濯物をたたんだり、クイーンと「ハジケン」をしたりするのに使われている。ひょっとしたら、高性能の無駄遣いかもしれない。
──さらに『怪盗クイーンと悪魔の錬金術師 バースディパーティ 前編』では、ある文書を解読するために自分のシステム内にオープンカフェ風の仮想空間をつくり、大学の研究生のような仮想人間体を作り出しました。
大学の研究生風の姿をした、RDの仮想人間体。
ある文書を解読するための「最適な仮想空間」を何パターンか作り出した中で、RDがもっとも最適だと判断した姿。歴史の浪漫に敬意を払う場所として「ヨーロッパの街並み」をイメージし、オープンカフェでコーヒーを飲みながら解読に挑むという、人間でいうところの“気分”の問題でこの姿をつくった。
──そして『怪盗クイーン ニースの休日 アナミナティの祝祭 前編』になると、RDユニットを組みこんだ猫型ロボット「ティグル」で、ニースの街を闊歩しました。
猫型ロボット「ティグル」。
クイーンの足にすりついたり、「にゃあ」と鳴いたりすることもできる猫型ロボット。ロボットなので飲み食いはできない。
──ここまででもすごい進化です。はやみね先生は、今後物語の中でRDをどのように成長させていきたいと考えていますか?

はやみね 「怪盗クイーンからの予告状」で倉木博士が「はじめは保育園児なみですが、だんだん学習を深め、究極の進化形は神に近いといえるでしょう」と話します。まさにそのとおりで、自分の中では、RDは神に近づいていく存在として設定されています。

──その「神」の定義は?

はやみね 宗教的な神というよりも、人類よりも上位の存在です。神様が人間を創り、その人間がRDのような人工知能をつくり、そしてその人工知能が「神」のようなものをつくるという、三すくみの関係が自分の中で設定されています。

──はやみね先生が36年かけて紡いできた物語の中で、RDが自分の能力を超える人工知能をみずから生み出すこと、つまり「シンギュラリティ(技術的特異点)」が訪れる瞬間がいつか来る、ということですね。近年、この言葉をテーマにした作品も登場しており、耳にした方も多いかもしれません。

「シンギュラリティ」は、アメリカ人で人工知能研究の世界的権威者であるレイ・カーツワイル氏が、「2045年に訪れる」と提唱したことで有名になりました。カーツワイル氏の提唱する「シンギュラリティ」と、はやみね先生の描く「神の創造」。両者には違いもあるかと思いますが、赤間先生は、このような未来は実際に起こりえるとお考えですか?
AIは人を超える存在になるのか。赤間先生の見解は……?
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