秋篠宮ご一家といえば折にふれて、お子さま方をさまざまな場所に連れていき、現地やご公務の様子を見せるという教育方針で、昨今話題となっている「旅育」を実践されてきました。
秋篠宮さまご一家が初めて海外旅行で訪問されたのは、2003年のタイでした。眞子さま(現・小室眞子さん)と佳子さまをお連れして、2週間ほどかけてタイのさまざまな場所を訪れました。また、悠仁(ひさひと)さまとは、2013年に太平洋戦争において日本で唯一地上戦の舞台となった沖縄を訪問されました。
それぞれの旅で、お二人が「子どもたちを現地に連れていくこと」で伝えたかった思いはどのようなものだったのでしょうか。
「旅育」で見せる「学者」としての父の姿
秋篠宮さまは子どものころから動物が大好きです。とりわけ鶏愛好家を自負していらして、秋篠宮邸では鶏をはじめさまざまな動物が飼われていました。
秋篠宮さまの最初の専門著書『欧州家禽図鑑』は、ニワトリやアヒル、ガチョウなどヨーロッパのさまざまな家禽を秋篠宮さまが自ら撮り下ろした美しい写真に解説文が添えられています。紀子さまが描かれた鶏のイラスト入り絵ハガキまで付いていて、ちょっぴりお得な本になっています。
また、タイやラオス、ベトナムなどの東南アジアの鶏がどのように家禽化されたのかを自らフィールドワークで採取されたDNAのサンプルから明らかにし、論文として発表されました。
そういった研究が評価されて、親交の深いタイ王国の複数の大学より名誉博士の称号が授与されました。2003年、タイ王国から招待されて授与式に臨まれるときに、秋篠宮さまは紀子さまと眞子さま(現・小室眞子さん)、佳子さまもお連れしたのです。
2週間近く滞在する中で、お子さまたちに研究者としての父の仕事の様子を見せ、タイの国の人々とも広く交流されたのでした。
悠仁さまに激戦地・沖縄への想いを継承する
2013年12月、悠仁さまは秋篠宮ご夫妻とともに初めて沖縄を訪れました。ご夫妻は、真っ先に沖縄本島南部の糸満市摩文仁(まぶに)にある平和祈念公園を訪れ、悠仁さまに「平和の礎」をお見せしました。
悠仁さまは、紺のスーツにネクタイを締め、礼儀正しいたたずまいです。
「平和の礎」は、沖縄戦で犠牲になった国内外の24万人の名前が刻まれ、立ち並ぶ石碑です。その礎に刻まれた名前をゆっくりとご覧になりました。秋篠宮さまと紀子さまが、一家全員が亡くなるなど名前がわからない子どもたちもいることを話されていたといいます。
その後、大勢の人が亡くなった海岸を見渡す広場を訪れると、悠仁さまは近くにいた修学旅行生とお話されました。そして、国立沖縄戦没者墓苑に移動されると、秋篠宮さまと紀子さま、悠仁さまの3人で白菊を供花されたのです。
秋篠宮さまと紀子さまが悠仁さまを沖縄にお連れしたのは、「経験の継承」の教育のためなのでした。現地の様子を見せて人々と話し、ご一緒に考えることで、一つひとつ手を取るように、大切なことや次の世代に知ってほしいことを教えていらっしゃるのでしょう。
インターネットの発達した令和の時代、なんでも家にいながら見聞きし学ぶことができます。ですが、実際に現地に赴かなければ感じ取れない思いがあります。皇室のそんな「旅育」の取り入れ方が、皆さまの子育てに参考になれば幸いです。
高木 香織
出版社勤務を経て編集・文筆業。2人の娘を持つ。子育て・児童書・健康・医療の本を多く手掛ける。編集・編集協力に『美智子さま マナーとお言葉の流儀』『子どもの「学習脳」を育てる法則』(ともにこう書房)、『部活やめてもいいですか。』『頭のよい子の家にある「もの」』『モンテッソーリで解決! 子育ての悩みに今すぐ役立つQ&A68』『かみさまのおはなし』『エトワール! バレエ事典』(すべて講談社)など多数。著書に『後期高齢者医療がよくわかる』(リヨン社)、『ママが守る! 家庭の新型インフルエンザ対策』(講談社)がある。
出版社勤務を経て編集・文筆業。2人の娘を持つ。子育て・児童書・健康・医療の本を多く手掛ける。編集・編集協力に『美智子さま マナーとお言葉の流儀』『子どもの「学習脳」を育てる法則』(ともにこう書房)、『部活やめてもいいですか。』『頭のよい子の家にある「もの」』『モンテッソーリで解決! 子育ての悩みに今すぐ役立つQ&A68』『かみさまのおはなし』『エトワール! バレエ事典』(すべて講談社)など多数。著書に『後期高齢者医療がよくわかる』(リヨン社)、『ママが守る! 家庭の新型インフルエンザ対策』(講談社)がある。