新入生たちは、みなピカピカの新しい制服で出席しています。浩宮さまも、ご夫妻とご一緒に新品の制服に身を包み、誇らしげに歩いて行かれるお写真が残っています。
ところが、翌日からは浩宮さまは30年も前に上皇さまが着ていたお下がりの制服で通学されたのです。なぜ、浩宮さまは「上皇さまのお下がりの制服」を着ておられたのでしょうか? 今回は、美智子さまの物を大事にされるお心をご紹介します。
異例づくし! 学習院初等科入学式にご夫妻そろっての参列
それまでの皇室では、たとえば、大正天皇や上皇さまは幼稚園には通われず、また、昭和天皇は一般の中学校から先には通われず東宮御学問所という専門の施設で学ばれました。
しかしながら、上皇さまと美智子さまは、浩宮さまをはじめ、お子さま方を幼稚園から小学校へと通わせて、授業はもちろん、学校行事や遠足といった経験をさせ、充実した学校生活を送ることを優先されました。
さらに、前例のなかったことがありました。それは上皇さまと美智子さまがお子さま方の入学式に参列されたことです。
小学校の入学式といえば、多くは親や保護者が出席するもの。しかし、天皇家では、お子さま方の入学式に出席するというのはこれまでになかったことだったのです。
大切に受け継いだ制服で伝える父・上皇さまの姿
そこで、周囲の子どもたちを驚かせることがありました。浩宮さまの制服は、ずっと以前、父である上皇さまが初等科に通われていたときに着ていた「お下がり」だったのです。新品の制服に身を包んだ1年生たちのなかに入ると、お古の制服の色はほかの子どもたちと違って、なんとなく色あせていました。
なぜ、美智子さまはわざわざお父さまの古い制服を我が子にお着せになったのでしょう。それは、「質の良いものを長く大切に使い続けるのが、皇室の伝統的な考え方」だからであり、そのお心を浩宮さまにも伝えたいと思われたのでしょう。
「130人もいる生徒の中で、お父さまのお古を着ている子どもはいないでしょうね」と、美智子さまは微笑んでいらしたといいます。
天皇家では、使い古したものもみなきちんと保存してあるのだそうです。上皇さまの制服も、ていねいにしまわれていたのでしょう。お手入れがよいために、あまり古いものとは感じさせませんでしたが、学校で新品の制服を着ているお友だちの中に入ると、なんとなく違って見えたといいます。
もちろん、浩宮さまはお古の制服のことなどちっとも気になさいませんでした。ご自分が着ていた制服を息子の浩宮さまに着せた美智子さまのお気遣いに、上皇さまはたいそう喜ばれたといいます。
大好きなお父さまの制服を着て、胸を張って通学された浩宮さま。大好きな方のお下がりをゆずりうけるのはうれしいことです。物を大事に使い続ける大切さを、改めて気づかされますね。
「令和に伝えたい皇室の子育て術」シリーズ、次回は2023年4月下旬更新予定です。
高木 香織
出版社勤務を経て編集・文筆業。2人の娘を持つ。子育て・児童書・健康・医療の本を多く手掛ける。編集・編集協力に『美智子さま マナーとお言葉の流儀』『子どもの「学習脳」を育てる法則』(ともにこう書房)、『部活やめてもいいですか。』『頭のよい子の家にある「もの」』『モンテッソーリで解決! 子育ての悩みに今すぐ役立つQ&A68』『かみさまのおはなし』『エトワール! バレエ事典』(すべて講談社)など多数。著書に『後期高齢者医療がよくわかる』(リヨン社)、『ママが守る! 家庭の新型インフルエンザ対策』(講談社)がある。
出版社勤務を経て編集・文筆業。2人の娘を持つ。子育て・児童書・健康・医療の本を多く手掛ける。編集・編集協力に『美智子さま マナーとお言葉の流儀』『子どもの「学習脳」を育てる法則』(ともにこう書房)、『部活やめてもいいですか。』『頭のよい子の家にある「もの」』『モンテッソーリで解決! 子育ての悩みに今すぐ役立つQ&A68』『かみさまのおはなし』『エトワール! バレエ事典』(すべて講談社)など多数。著書に『後期高齢者医療がよくわかる』(リヨン社)、『ママが守る! 家庭の新型インフルエンザ対策』(講談社)がある。