秋篠宮妃紀子さま東日本大震災「タオル詰めボランティア」と佳子さま「手話」の奉仕精神

令和に伝えたい皇室の子育て術Vol.2

編集者・文筆家:高木 香織

2011年3月11日、東日本大震災が起こりました。未曾有の震災直後から国を挙げて被災地での救助活動が始まり、皇室もすぐさま支援を開始します。このとき宮内庁の職員が支援に駆けつけるより、先に動かれたのが、紀子さまと眞子さま(現・小室眞子さん)、佳子さまでした。

皇室は、奉仕の精神をご家族で育んでこられました。特に、秋篠宮ご一家は、紀子さまが学生時代からボランティア活動に積極的だったこともあり、ご家族でボランティア活動に従事されてきました。その母の背中を見つめることで、お子さま方は自然に人のために尽くす大切さを学ばれました。

東日本大震災での紀子さまとお子さま方の奉仕とは、どのようなものだったのでしょうか? 令和を生きる子育てファミリーが、少しでも「他者への奉仕」「ボランティア活動」に興味を持つきっかけとなれば幸いです。

震災後すぐさまボランティアにかけつけた秋篠宮ご一家

2011年、6月27日宮城県気仙沼市を訪問され菅原茂気仙沼市長(左から2人目)から説明を受けられる秋篠宮ご夫妻。その前の月にあたる2011年5月には、被災地の青森県と岩手県を訪問されている。写真:毎日新聞社/アフロ
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3月11日に発生した大地震と巨大な津波、原子力発電所の事故の被害はすさまじいものでした。すぐに政府はもとより全国からさまざまな立場の人々が被災地に向かい、支援活動を行いました。同時に、被災地周辺の各所で災害から逃れてきた人たちの避難所が設けられました。

皇室も例外ではありません。3月26日より、栃木県那須町にある那須御用邸の職員宿舎の温泉風呂を、東日本大震災で、栃木県に避難した人たちに開放することになったのです。

宮内庁本庁舎には、宮内庁職員と皇宮警察の護衛官が集めたタオルが約3400枚も運び込まれました。山と積まれたこのタオルを、被災者一人ひとりに配れるように袋につめる作業が必要となりました。

宮内庁職員が本庁舎に向かうと、なんとすでに紀子さまと眞子さま(現・小室眞子さん)、佳子さまがタオルの袋詰め作業をなさっていたのです。職員たちは、その素早い行動力に驚いたといいます。
その夏、まだ学生でおられた眞子さま(現・小室眞子さん)は、被災地である岩手県山田町と大槌町、宮城県石巻市で、個人でボランティアに参加されました。まだガレキが残っているころで、被災した人々から直接話を聞かれることもありました。のちに記者会見で「実際に行ってみないとわからないことがある」と実感したと語られています。

まずは、ご家族でボランティアに参加することで、お子さまに学ばせる「奉仕精神」

2017年8月に、第34回全国高校生の手話によるスピーチコンテストに出席し、手話で挨拶される眞子さま(現・小室眞子さん) 写真:JMPA/光文社
2020年9月、第7回全国高校生手話パフォーマンス甲子園にオンラインで出席される佳子さま。写真/宮内庁提供
もともと紀子さまは学生時代に手話を学ばれるなど、社会への奉仕活動に積極的な方です。ニュース映像などで、紀子さまや佳子さまが手話をされるのをご覧になった方も多いと思いますが、紀子さまは日本語と英語の手話をマスターしているといいます。そうして長年にわたり、障害のある方たちの催しや学校を訪問してこられました。

「全国高校生の手話によるスピーチコンテスト」には、紀子さまは1991年から出席し、手話でスピーチされています。2008年に秋篠宮さまとインドネシアを訪問された際には、あらかじめインドネシア語の手話を勉強し、現地のろう学校の人々と交流されたといいます。紀子さまにとって、手話はより多くの人たちと語ることのできる大切な言語なのでしょう。

紀子さまの背中を見て、眞子さま(現・小室眞子さん)と佳子さまは成長されました。お二人は紀子さまの指導で手話を始められたといいます。

特にダンスがお好きな佳子さまの指先は、まるで踊るような美しさ。情感あふれるドラマチックな手話が持ち味です。その学びが高じて、現在、佳子さまは全日本ろうあ連盟の非常勤嘱託職員として勤務されています。紀子さまや佳子さまの手話がメディアを通して人々の目に触れることが、手話を多くの人に身近に感じてもらうために、どれほど役に立っていることでしょう。

紀子さまは、ご自身が参加されるさまざまな奉仕活動に、幼いころからお子さま方を連れていかれ、ご自身の姿を見せることで、人のために奉仕する心を育まれてきたのです。

何よりも「自助」「自己責任」論がかっ歩する令和の日本、いっぽうで「持続可能な社会の実現」が課題となっています。そんな中、令和を生きる私たちも、社会への奉仕の心を家族で学び直し、次の世代に伝えるときかもしれません。皇室のご活動が少しでもヒントになれば幸いです。

「令和に伝えたい皇室の子育て術」シリーズ、次回は2023年4月上旬更新予定です。
2017年6月、東京都障害者ダンス大会 ドレミファダンスコンサートをご訪問される紀子さまと佳子さま 写真:JMPA/光文社
1997年11月、秋篠宮殿下の33歳のお誕生日のご一家の様子。紀子さまは、ご自身が参加されるさまざまな奉仕活動に、眞子さま(現・小室眞子さん)と佳子さまを連れていかれました。写真/宮内庁提供
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たかぎ かおり

高木 香織

Kaori Takagi
編集者・文筆業

出版社勤務を経て編集・文筆業。2人の娘を持つ。子育て・児童書・健康・医療の本を多く手掛ける。編集・編集協力に『美智子さま マナーとお言葉の流儀』『子どもの「学習脳」を育てる法則』(ともにこう書房)、『部活やめてもいいですか。』『頭のよい子の家にある「もの」』『モンテッソーリで解決! 子育ての悩みに今すぐ役立つQ&A68』『かみさまのおはなし』『エトワール! バレエ事典』(すべて講談社)など多数。著書に『後期高齢者医療がよくわかる』(リヨン社)、『ママが守る! 家庭の新型インフルエンザ対策』(講談社)がある。

出版社勤務を経て編集・文筆業。2人の娘を持つ。子育て・児童書・健康・医療の本を多く手掛ける。編集・編集協力に『美智子さま マナーとお言葉の流儀』『子どもの「学習脳」を育てる法則』(ともにこう書房)、『部活やめてもいいですか。』『頭のよい子の家にある「もの」』『モンテッソーリで解決! 子育ての悩みに今すぐ役立つQ&A68』『かみさまのおはなし』『エトワール! バレエ事典』(すべて講談社)など多数。著書に『後期高齢者医療がよくわかる』(リヨン社)、『ママが守る! 家庭の新型インフルエンザ対策』(講談社)がある。