
【絵本ナビ編集長・磯崎園子さん】『100万回生きたねこ』は 私の「課題図書」
刊行50周年記念インタビュー第3回
2026.10.30
写真提供:磯崎園子
『100万回生きたねこ』生誕50周年を記念して、絵本と関わりの深い方々に『100万回生きたねこ』にまつわる想いや思い出を取材する連載第3回。今回は、「絵本ナビ」編集長の磯崎園子さんにインタビューします。
「絵本ナビ」は読者の年齢やテーマに合わせて絵本を探すことができる絵本・児童書の専門情報サイト。試し読みや、読者のレビューが豊富にあり、絵本を購入することもできるサイトで、年間2000万人が利用しています。
「絵本ナビ」は読者の年齢やテーマに合わせて絵本を探すことができる絵本・児童書の専門情報サイト。試し読みや、読者のレビューが豊富にあり、絵本を購入することもできるサイトで、年間2000万人が利用しています。

『100万回生きたねこ』50周年のロゴマーク
絵本を選ぶ楽しさを届けたい
年間2000万人が利用する絵本・児童書専門情報サイト「絵本ナビ」
──磯崎さんは「絵本ナビ」の編集長をされています。編集長になったきっかけや、子どもの本との関わりについて、教えてください。
磯崎園子さん(以下 磯崎さん):私が生まれたころは、多くの名作絵本が生み出された時期でした。親がたくさん本を買ってくれたこともあり、小さいころから本に囲まれて育ちました。絵本は小学校に入ってから読み直したものもあります。大人になってから再びそのころ読んだ絵本を見たとき、「覚えている!」と思うこともありました。「こんなふうに記憶に残るんだ、絵本っておもしろいな」と思いました。
絵本ナビに入る前、書店で働いていたのですが、働きはじめたとき、偶然絵本の売り場に配属されました。そのときも、絵本を見て、鮮烈に「再会」を感じたことを覚えています。美術好きだったこともあり、アートの分野としても、絵本にのめりこんでいきました。
その後、子どもを持ち、子育てをするなかで実際に絵本を読み、子どもはどう絵本を楽しむのか、毎日実験のように観察しました。子育てで得た感覚と、書店でお客様に絵本を売った経験が、絵本ナビでの仕事の基盤になっています。
書店員のとき、よく「◯歳には、どんな絵本がいいですか?」と聞かれました。こんなにおもしろい絵本がたくさんあるのに、保護者の方はなにを選んでいいか、わからないとおっしゃる……。「もったいない」と思ったことが、絵本ナビでの仕事のきっかけです。
絵本ナビで、絵本を紹介するときには、ただ推薦するのではなく、読者の方自身が「この本、おもしろそう!」と興味を持って、自分で本を選んでくださるよう、企画や構成を考えています。本を選ぶ楽しさを味わってほしいと思うからです。
「この本はこういう本」という先入観や、読んでいないのに、読んだつもりになっている思い込みをなくしていくことで、絵本の表現の幅を広げたり、絵本の読者を広げたり……もっともっと多くの方に絵本を届けられるのではないかと思って、活動しています。
磯崎園子さん(以下 磯崎さん):私が生まれたころは、多くの名作絵本が生み出された時期でした。親がたくさん本を買ってくれたこともあり、小さいころから本に囲まれて育ちました。絵本は小学校に入ってから読み直したものもあります。大人になってから再びそのころ読んだ絵本を見たとき、「覚えている!」と思うこともありました。「こんなふうに記憶に残るんだ、絵本っておもしろいな」と思いました。
絵本ナビに入る前、書店で働いていたのですが、働きはじめたとき、偶然絵本の売り場に配属されました。そのときも、絵本を見て、鮮烈に「再会」を感じたことを覚えています。美術好きだったこともあり、アートの分野としても、絵本にのめりこんでいきました。
その後、子どもを持ち、子育てをするなかで実際に絵本を読み、子どもはどう絵本を楽しむのか、毎日実験のように観察しました。子育てで得た感覚と、書店でお客様に絵本を売った経験が、絵本ナビでの仕事の基盤になっています。
書店員のとき、よく「◯歳には、どんな絵本がいいですか?」と聞かれました。こんなにおもしろい絵本がたくさんあるのに、保護者の方はなにを選んでいいか、わからないとおっしゃる……。「もったいない」と思ったことが、絵本ナビでの仕事のきっかけです。
絵本ナビで、絵本を紹介するときには、ただ推薦するのではなく、読者の方自身が「この本、おもしろそう!」と興味を持って、自分で本を選んでくださるよう、企画や構成を考えています。本を選ぶ楽しさを味わってほしいと思うからです。
「この本はこういう本」という先入観や、読んでいないのに、読んだつもりになっている思い込みをなくしていくことで、絵本の表現の幅を広げたり、絵本の読者を広げたり……もっともっと多くの方に絵本を届けられるのではないかと思って、活動しています。
私にとっての課題図書
──そんな磯崎さんは、『100万回生きたねこ』について、どんな感想をお持ちでしょうか? 個人的なご経験などと関連して……。
磯崎さん:20年以上、絵本と関わる仕事をしてきたので、職業柄『100万回生きたねこ』を紹介することも多くありました。そのたびに、説明するため読み返していて、私自身、読み返すことを楽しみにしています。私にとっての「課題図書」です。
まず最初、とらねこの魅力的な絵や、存在感に惹きつけられました。そして、それから3回、感じ方が変わりました。
子どものころは、何回も生き返るおもしろさと、それでも最後に死んでしまう悲しさを感じていました。
20~30代では、とらねこが自分だけのねこになった瞬間が印象に残りました。誰でも自分の人生を生きていいんだ、そう思えるターニングポイントがあるのだと思いました。生をまっとうすること、生きることの先に死ぬことがあるのだということにも気づくようになりました。
磯崎さん:20年以上、絵本と関わる仕事をしてきたので、職業柄『100万回生きたねこ』を紹介することも多くありました。そのたびに、説明するため読み返していて、私自身、読み返すことを楽しみにしています。私にとっての「課題図書」です。
まず最初、とらねこの魅力的な絵や、存在感に惹きつけられました。そして、それから3回、感じ方が変わりました。
子どものころは、何回も生き返るおもしろさと、それでも最後に死んでしまう悲しさを感じていました。
20~30代では、とらねこが自分だけのねこになった瞬間が印象に残りました。誰でも自分の人生を生きていいんだ、そう思えるターニングポイントがあるのだと思いました。生をまっとうすること、生きることの先に死ぬことがあるのだということにも気づくようになりました。
『100万回生きたねこ』(佐野洋子 作・絵)より ©JIROCHO, Inc. / KODANSHA
死んだあとも、心の中で生きつづける
最近、身近な人の死に直面したり、自分の子どもを育てていくなかで「この子のためにも死ぬわけにはいかない」と思ったりして、生への執着や失うことへの恐怖の気持ちが芽生えてきました。そんなとき、「このとらねこは、ほんとうに100万回生きたのか? それとも、たった1回の生を生きているのか? もし1回の生を生きるのだとしたら、自分はいまどの辺にいるのだろう?」と思うようになったのです。そんなふうに読むと、死んだあとのことも想像できるようになりました。
いままでは、死ぬ瞬間のことを考えていました。死んだら終わり、あの人が死んでしまったらどうしよう、と……。でも新しい読み方をするようになって、死は終わりではなく、自分が死んだあとも、人が死んだあとも、誰かの心の中に生きつづける、と思うようになりました。死への恐怖がすこし和らいだように思います。
いままでは、死ぬ瞬間のことを考えていました。死んだら終わり、あの人が死んでしまったらどうしよう、と……。でも新しい読み方をするようになって、死は終わりではなく、自分が死んだあとも、人が死んだあとも、誰かの心の中に生きつづける、と思うようになりました。死への恐怖がすこし和らいだように思います。
何度も読み返す『100万回生きたねこ』。(写真提供・磯崎園子さん)
理解できないところがあるからロングセラー
──磯崎さんは、『100万回生きたねこ』をどんな絵本だと思いますか?
磯崎さん:『100万回生きたねこ』はロングセラーの絵本ですが、ロングセラーというのはそもそも理解できないところがあるからこそ、長く読み継がれているのではないかと思います。いろいろな読者がさまざまな読み方や解釈を持ち寄り、だからこそ、何世代にもわたって、読まれているのではないでしょうか。
──これから『100万回生きたねこ』と出会う方に、どんなメッセージを送りたいですか?
磯崎さん:これから出会う方がうらやましいですね。まずは、自分がどこにわくわくするのか、どこが印象に残るのか、自分がそのときに感じる気持ちを大切に、楽しんでほしいです。
大人のための絵本のように言われますが、この絵本のテーマや100万回生きて死んでいくという内容については、子どもでもそれぞれの感覚で感じるところがあると思います。
──佐野洋子さんが生きていらしたら、どんなことを聞いてみたいですか?
磯崎さん:「いま、ご自身は何回目の人生を生きていらっしゃるのですか」と聞いてみたいです。作品やドキュメンタリーで、生への執着がないとおっしゃる一方で、愛することは大事、とも語っている……。その両面を踏まえ、佐野洋子さんが自身の人生の中で、いまどの地点にいると感じているのかその体感を知りたいです。
──それは、人間ならではの矛盾ですよね。たしかに、聞いてみたいです。今日は、貴重なお話をありがとうございました。
磯崎さん:『100万回生きたねこ』はロングセラーの絵本ですが、ロングセラーというのはそもそも理解できないところがあるからこそ、長く読み継がれているのではないかと思います。いろいろな読者がさまざまな読み方や解釈を持ち寄り、だからこそ、何世代にもわたって、読まれているのではないでしょうか。
──これから『100万回生きたねこ』と出会う方に、どんなメッセージを送りたいですか?
磯崎さん:これから出会う方がうらやましいですね。まずは、自分がどこにわくわくするのか、どこが印象に残るのか、自分がそのときに感じる気持ちを大切に、楽しんでほしいです。
大人のための絵本のように言われますが、この絵本のテーマや100万回生きて死んでいくという内容については、子どもでもそれぞれの感覚で感じるところがあると思います。
──佐野洋子さんが生きていらしたら、どんなことを聞いてみたいですか?
磯崎さん:「いま、ご自身は何回目の人生を生きていらっしゃるのですか」と聞いてみたいです。作品やドキュメンタリーで、生への執着がないとおっしゃる一方で、愛することは大事、とも語っている……。その両面を踏まえ、佐野洋子さんが自身の人生の中で、いまどの地点にいると感じているのかその体感を知りたいです。
──それは、人間ならではの矛盾ですよね。たしかに、聞いてみたいです。今日は、貴重なお話をありがとうございました。
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人生で3回印象が変わった、という磯崎さんの体験はとても印象に残りました。こんなにわかりやすく、この絵本の感じ方の変化をお話しくださった磯崎さんは、ほんとうに「絵本のプロ」であり、「絵本を広めること」のプロだと感じました。
取材・文/講談社 幼児・学習図書出版部
人生で3回印象が変わった、という磯崎さんの体験はとても印象に残りました。こんなにわかりやすく、この絵本の感じ方の変化をお話しくださった磯崎さんは、ほんとうに「絵本のプロ」であり、「絵本を広めること」のプロだと感じました。
取材・文/講談社 幼児・学習図書出版部



































磯崎 園子
絵本情報サイト「絵本ナビ」編集長。著書に『はじめての絵本 赤ちゃんから大人まで』(ほるぷ出版)、『ママの心に寄りそう絵本たち』(自由国民社)、監修に『父母&保育園の先生おすすめの赤ちゃん絵本200冊』『父母&保育園の先生おすすめのシリーズ絵本200冊』(玄光社)がある。 絵本ナビhttps://www.ehonnavi.net/
絵本情報サイト「絵本ナビ」編集長。著書に『はじめての絵本 赤ちゃんから大人まで』(ほるぷ出版)、『ママの心に寄りそう絵本たち』(自由国民社)、監修に『父母&保育園の先生おすすめの赤ちゃん絵本200冊』『父母&保育園の先生おすすめのシリーズ絵本200冊』(玄光社)がある。 絵本ナビhttps://www.ehonnavi.net/