筑波大学名誉教授の野村港二先生は、筑波大学が主催する朝永振一郎記念「科学の芽」賞の実行委員を長く務められました。
植物の研究者であるとともに、学生に向けて論文の書き方の著書を出すなど、さまざまなアプローチで、考える、伝えるということに向き合ってきた野村先生に、子どもたちが科学を楽しむための秘訣をうかがいました。
「わからないことがある」って、気づくことが楽しい
──先生にとって科学の楽しさって、どんなところにあると思われますか?
野村港二先生(以下 野村先生):科学とは「わかっていること」であると思われています。そして、現代は科学がなんでも解き明かしている世の中だと思われがちです。
でも、本当はわかっていないことだらけ。いろいろ調べていくと、どんどんわからないことが増えていきます。ぼくにとっては「わからないことがある」って気づくことが楽しいですね。
──「科学の芽」賞の受賞作からは「わからない」「知りたい」だから研究したいという気持ちが伝わってきます。
野村先生:長く審査を続けていますと、最後に残る作品は、興味や発見に対して、とてもシンプルで、すなおなんですね。「知りたいこと」がわかりやすいと感じます。きっかけ、実験データ、考察という研究のレポートですが、彼らのいいたいことが伝わってきます。
ときには、目のつけどころに「ふふっ」と吹きだしてしまう応募作品に出会うこともありますよ。
おもしろい科学の芽に出会えるこちらも楽しいです。
イグノーベル賞ってあるでしょう。斬新な視点で、一見くだらないと思われるようなことも実際やってみると、そこではじめてわかることもあるんです。変わった研究と思われがちですが、それなりに役立つ研究も多い。

──監修された、科学の芽えほんシリーズ『たんたん タンポポの ひみつ』原案者の岩田くるみさんは、3年にわたってタンポポの観察を続けました。
野村先生:岩田さんは、たねをまいて育ててね。そこからはじまって、ひとつやったら、次に気になることが出てきて、新しいことにチャレンジしていく。研究したらまた知りたいことが出てくる……研究のつながりがあるところがいいですよね。
絵本を見ていて、主人公の子がタンポポの綿毛をならべて数えていくシーンがありますが、この見開きページだけでも価値があります。
観察して数を数えていくのは、地味で根気がいる作業ですが、とてもだいじなことです。だれでもできるはずのことですが、たいへんだから意外とだれもやろうとしない。
でも「やってみないとわからない」のです。
──はでさはないけれど、価値ある研究はあるわけですね。
野村先生:大人の研究者でも最新機器を使ったり、最先端の技術を使ったりすれば「できる」「かっこいい」みたいに思ってしまうところもあります。岩田さんはテープとピンセットで発見していくところがえらい。
「科学の芽」賞の応募作を見ていると、すなおな着眼点とすなおな手法で研究がまだまだできるんだと知れて、うれしくなります。
道具にたよるのではなくて、手を動かして、よく観察すること、五感をだいじにしてほしいです。だんだん第六感のような「研究者のカン」もさえてきて、実験中やデータをとっているときに「これちがうかも!」と思うこともありますよ。
それってふだんから感覚を使っているからこそのことだと思うのです。
──子どもたちの「気づき」をのばしていくために大人ができることはなんでしょう。
野村先生:大人になると、自分の経験や常識のなかでしか物事を判断しなくなるじゃないですか。
子どもたちは、まだそうじゃない。
「ふしぎだと思うこと これが科学の芽です」朝永先生が書かれた言葉ですが、科学の芽は、じつはどこにでも芽生えていて、受賞者の子たちはそれに気がついているのです。
子どもの気づきに「おもしろいね」「すごいね」っていって、のばしてあげるのはだいじですね。共感してもらえば、だれだってうれしくなる。
たとえばタンポポでしたら、へんな育ち方をしたものがあっても「ダメな芽だね」といわずに、「おもしろい芽を見つけたね」といってあげるとか。
「科学の芽」賞受賞者の保護者の方は、理解もあると思いますし、作品から保護者の方もいっしょに楽しんでいるんじゃないかと感じることがあります。保護者の方も楽しんで、ノリノリになれたら、おたがいにとてもいいですよね。




































