子どもたちの回復をうながす「セラピードッグ」のスゴい力 引きこもりや体の不自由な子どもに起こったこと

『命をつなぐセラピードッグ物語』 セラピードッグ育成のパイオニア・大木トオルさん

ライター:高木 香織

高齢者施設を訪問するセラピードッグたち
すべての画像を見る(全6枚)

今、動物の持つ力が見直されています。犬や猫などとふれあうことで、心が安らぎ生きる意欲が湧いたり、犬と一緒に歩くことでリハビリがうながされるというのです。

そんな人の心と体に寄り添うセラピードッグ育成のパイオニアが、『命をつなぐセラピードッグ物語』の著者で、音楽家・動物愛護家の大木トオルさん。大木さんが創始した国際セラピードッグ協会が育成しているセラピードッグたちは、病院や高齢者施設をはじめ、幼稚園や小学校に訪問し、セラピー活動をしています。

今回は、セラピードッグの高齢者施設への訪問活動にお邪魔して、大木トオルさんに犬の持つ力と魅力についてお話を伺ってきました! セラピードッグは、困っている子どもたちにやさしく寄り添ってくれるそうですよ。

セラピードッグに励まされて、リハビリが自然に進む

──今日は介護老人福祉施設の「新とみ」にお邪魔しています。ホールでは、お年寄りたちが輪になって今かいまかとセラピードッグの登場を待っていますね。あっ、セラピードッグたちが入ってきました! みなさん大喜びですね。

セラピードッグの登場に、お年寄りたちの顔がほころびます

大木トオルさん:今日は愛媛生まれのライムとゆずのきょうだいにリキ、福島生まれの小桜とゆきのすけの5頭が参加しています。みんな、殺処分寸前の犬たちだったんですよ。直前で救い出して、トレーニングセンターで2年半もの間しっかり訓練をして、45以上のカリキュラムをマスターし、立派なセラピードッグとなって、みなさんのもとに訪問しているんです。

これからエキジビションとして訓練の様子などをお見せしてから、みなさんとふれあいの時間を持つんですよ。

──犬たちは、それぞれぴょんと椅子に乗ってお座りしました! これならお年寄りたちと目線を合わせてふれあうことができますね。みなさん、頭をなでてあげたり、ひざに乗せたり、話しかけたりされていて、とっても楽しそう! セラピードッグたちは、どのようなところに訪問しているのですか?

大木さん:定期的なのは高齢者施設で、このほか障がい者施設、ホスピスなどの病院をはじめ、小学校や幼稚園にも訪問しますよ。セラピードッグたちは、グリーンのベストを着ているでしょう? これは「動物介在療法」(AAT)という医療のお手伝いをする犬のマークです。医師やそれぞれの患者さんから「こんな病気や症状があって困っています」というお話を聞いて、「それならこの犬を連れていって、こんなふうに寄り添わせよう」などと計画を立てて訪問するのです。犬たちにも個性や得意がありますからね。そして、病気や症状を回復させていくのです。

──犬がどうやって症状の回復をうながすのですか?

大木さん:手が動きにくかったり気持ちが沈んでいる人も、犬にふれたいと思うと、手を伸ばしてなでるようになるんです。脚が悪い人も、犬がうるんだ目で見上げて「私と一緒に歩きましょう」と促すと、勇気が出て、1歩ずつ歩けるようになったりするんですよ。それがきっかけでリハビリが進む。こんな例をたくさん見てきました。

治療だけだと楽しくないでしょう? でも、セラピードッグが来る日を指折り数えて待ったり、一緒にすごすと楽しいですからね。

ひとりひとりにやさしく声をかける大木トオルさん

セラピードッグとふれあうことで、学校に行けるように!

──今、登校拒否や引きこもりなど、淋しい心を抱えている子どもたちがたくさんいます。また、病気で苦しんでいる子どもたちもいます。そんな子どもたちのところにも、セラピードッグは来てくれるのでしょうか。

大木さん:学校に行けない子が今のように注目される前から、ひきこもりのお子さんのご相談もいただいています。障がいがあったり、車椅子のお子さんもいます。訪問はもちろん、訓練センターに来ていただくこともできますよ。ただ、たくさんお話がきますので、まずはお話を伺って、「今行かなければ」という子のもとにまず駆け付けます。

子どもたちがセラピードッグたちとふれあったり、訓練に一緒に参加している姿を見ると、親御さんたちは泣いてしまうんですよ。親も必死ですからね。

そうやってセラピードッグたちとふれあった後で、子どもたちが学校に行けるようになったとか、結婚したとか、家業を継いでくれたというご連絡もいただきます。うれしいですね。

──セラピードッグとふれあった後での衛生面にも、気を遣っていらっしゃいますね。

大木さん:犬の健康と衛生管理はとっても大事です。セラピードッグたちは定期的に血液検査をして、元気な子でなければ活動に参加しません。訪問の後には、お相手に犬の毛が残らないように、コロコロで毛を取ったり、床を消毒したりします。お相手にも手を洗うなどの消毒をしてもらっています。

──犬たちと過ごす時間を繰り返し持てるように、気を配っていらっしゃるのですね。今日はセラピードッグたちから元気をもらいました。ありがとうございました!

取材協力/社会福祉法人シルヴァーウィング「介護老人福祉施設 新とみ」

(国際セラピードッグ協会提供)

大木トオル(おおき・とおる)
音楽家、(一財)国際セラピードッグ協会創始者。(一社)大木動物愛護協会創始者。弘前学院大学客員教授、社会福祉学者(日米)。東京・日本橋人形町生まれ。東洋人のブルースシンガーとしてアメリカで活躍しつつ、動物愛好家として日米の友好・親善に尽くす。また、ライフワークとして殺処分寸前の捨て犬や災害にあった被災犬たちを救助してセラピードッグに育て、高齢者施設や障がい者施設、病院、教育の現場などで多くの人々の心を支える活動をしている。著書に『動物介在療法 セラピードッグの世界』(日本経済新聞出版社)、『わがこころの犬たち ─セラピードッグを目指す被災犬たち』(三一書房)、『犬とブルース』(鳥影社)ほか多数。
Email:info@therapydog-a.org  URL:https://therapydog-a.org/

高木香織(たかぎ・かおり)
出版社勤務を経て編集・文筆業。2人の娘を持つ。子育て・児童書・健康・医療の本を多く手掛ける。編集・編集協力に『美智子さま マナーとお言葉の流儀』『子どもの「学習脳」を育てる法則』(ともにこう書房)、『部活やめてもいいですか。』『頭のよい子の家にある「もの」』『モンテッソーリで解決! 子育ての悩みに今すぐ役立つQ&A68』『かみさまのおはなし』『エトワール! バレエ事典』(すべて講談社)など多数。著書に『後期高齢者医療がよくわかる』(リヨン社)、『ママが守る! 家庭の新型インフルエンザ対策』(講談社)がある。

この記事の画像をもっと見る(全6枚)
おおき とおる

大木 トオル

Toru Ohki
音楽家、(一財)国際セラピードッグ協会創始者

音楽家、(一財)国際セラピードッグ協会創始者。弘前学院大学客員教授、社会福祉学者(日米)。東京・日本橋人形町生まれ。東洋人のブルースシ...

たかぎ かおり

高木 香織

Kaori Takagi
編集者・文筆業

出版社勤務を経て編集・文筆業。2人の娘を持つ。子育て・児童書・健康・医療の本を多く手掛ける。編集・編集協力に『美智子さま マナーとお言...