
【審査員の評価が真っ二つ】佳作で出版!? クセが強すぎるワンオペ「おとうさんねこ」登場
【前編】2022年講談社絵本新人賞佳作受賞『おんぶねこ』出版記念! 作者・殿本祐子さんによる絵本制作日記
2025.03.19
絵本作家:殿本 祐子
佳作なのに、にゃんで出版できたのか

2022年講談社絵本新人賞の選考時……。
おんぶ にゃにゃ いと にゃく ???
ハテナが飛び交う中、「これは『おんぶじゃないと泣く』ですよ~!」と、一発で読んだ人がいました。
この人が今の私の担当者さんです。
この年の新人賞は、今めちゃめちゃ大人気の『ぎょうざが いなくなり さがしています』の玉田美知子さんでした。
そんなすごい応募作品が存在する中、初めて描いた私の作品がしぶとく生き残り、佳作なのに、にゃんで、出版までこぎつけたのか……。
それは、「おんぶがいい!」「おんぶがいい!」と担当者さんが騒いでくれたからでした。
それもしぶとく。この「しぶとく」が運命を左右したのです!
「じゃあ、『おんぶにゃにゃ』も本にしたら」
編集長さま! 根負けしてくださり、ありがとうございました!
私の人生…本当は何したい? 絵本描いてみよ!
体調不良でしたが、仕事に追われていない分、
私の人生……本当は何がしたい?
そんなことを考える時間が生まれました。
結婚して、大阪から神戸に引っ越す前までやっていたデザインの仕事、またやりたいなぁ。
今でもお風呂屋さんのイベントのポスターやPOPを作ったり、休みの日に副業でイラストを描いたりはしてるけど、今の私、それを本業にできる?
ちょっと腕試しで、公募ガイドで何か応募してみよっかな……。
ロゴマークがいいかなぁ。
イラストもいいなぁ。
へぇ~、絵本の公募もあるんやぁ~。
ふう~ん、絵本かぁ……。
よっしゃ! 絵本描いてみよ!
わっ! でも、もうすぐ締め切りやん!(ドテッ!!)
こうして2021年はおとなしくお風呂屋さんに復帰し、2022年の新人賞に挑戦することにしました。
こんな思いつきのように描いた作品でしたが、届いた通知の「あなたの作品は、最終候補に残りましたので……」の1行が目に入った瞬間、涙が込み上がってきました(変な声も出てたと思います)。
まだ最終候補の段階なのに(笑)。
家事の手を動かしながら、泣いて、泣き止んで、また泣いてを1時間くらいやっていました。
人生初めてのうれし泣きは、思っていたよりどろくさかったです。
超初心者の応募作品 7つのツッコミどころ大公開

え~~っ!? 絵本の学校なんてあんの?
ここはそういう世界なん?
私、場違いとちゃう?
平静を装って、心の中では、ワーワー言ってました。
そんな超初心者の私が描いた応募作品は、ツッコミどころ満載のようでした。
ツッコミどころ その1
主人公の顔を見開きのど真ん中に描いていた。
→顔が折り目で潰れちゃうよ。と指摘される(やっぱり……)。
その2
描き進めていく中で、いい絵の具を知ってしまい、うれしくてその絵の具を途中から使っていた。
→画材は初めから終わりまで同じもので。と指摘される(ですよね。汗)。
その3
主人公をページをめくる進行方向(左から右)とは逆の方向(右から左)に走らせていた。
→ページをめくる流れに合わせたほうがいいです。と指摘される(なるほど!)。
その4
画面全部に絵を詰め込みすぎて、テキストのスペースが狭い。
→他の受賞者の方の作品は、ちゃんと広々している(めっちゃ読みやすい!)。
その5
お話を主人公の関西弁のゆるいセリフのみで展開。
→漫画なら、セリフだけってありだけど、絵本では難しいよ。と指摘される(そうなのかぁ残念)。
その6
お話の途中は我ながら面白く描けたと思うが、最後は強引に着地。ページが足りん! くらいに思っていた。
→最後の意味がわからないと大勢に指摘される(ですよね~。汗)。
その7
私の「かわいい」の感覚が世間とズレていた。
→クセが強い。との声が多すぎて、それに負けてしまう(まあまあショック)。
私はこの日、「はい、クセつよは私の持ち味です」という顔で過ごすことにしました。
2022年応募→2025年出版 にゃんでこんなに年月が?
おとうさんねこが、子どもの成長によっておんぶから解放される瞬間が見せ場です。
この見せ場は応募作品にはなかったシーンで、このおんぶ解放のゴールに向かうために、2023年、2024年と描き続けることになります。
ありがたいことに、絵本の学校に通っていなかった私にとって、担当者さんが絵本の先生で、賞をいただいてから、学校に通わせてもらっている感じでした。
2023年1月、本番に向けて、贈呈式の日に指摘されたところを意識しながら、ラフからスタートしました。
打ち合わせは、神戸で暮らしているので、主にLINEのビデオ通話です(便利な世の中だ)。
担当者さんとの打ち合わせは、「応募作品のオチがよくわからないという、このトンデモナイ問題をどうするか?」から始まり、
「この場面は無くしたほうが良くなりそう」
「え~ この場面は気に入ってるんです~」などのやり取りをたくさん経て、
2023年の8月から着色スタート、年末にはいったん、32ページと表紙と裏表紙を描き終えることができましたが……。
絵本出版のお話、なくなるん!?
さて、続きは、次の記事をお楽しみに。
『おんぶねこ』2025年3月27日に発売!

作/殿本祐子 講談社刊
*ひとりで読むなら小学校低学年くらいから
*読んであげるなら4歳くらいから
*すべてひらがな
殿本 祐子
第43回(2022)講談社絵本新人賞佳作『おんぶにゃにゃいとにゃく』を改稿した『おんぶねこ』でデビュー。保護猫といっしょに兵庫県で暮らしている。
第43回(2022)講談社絵本新人賞佳作『おんぶにゃにゃいとにゃく』を改稿した『おんぶねこ』でデビュー。保護猫といっしょに兵庫県で暮らしている。