第44回(2023年)講談社絵本新人賞 選考経過・報告

幼児図書編集部

新人賞受賞者の紹介 2024.1.15

第44回講談社絵本新人賞を受賞した、みやもとかずあきさん。
新人賞を受賞したのはカラーメガネがチャーミングなみやもとかずあきさん。タイトルは『福の神』です。ちゃっかり者の福の神とお人好しの青鬼とのかけあいが漫才のように楽しい作品ですが、最終選考会の際も、「なんだか青鬼に感情移入してしまう……この人はきっと鬼が好きに違いない」と話題に。

贈賞式では選考委員の先生方ともその話になりましたが、やはりみやもとさんは、鬼が好きで、鬼を主人公にした作品を何作も描いていたとのこと。今作はコロナ前に描いていたものを(コロナの影響で新人賞がお休みになって応募できなかったので)改めて描き直して応募されたとか。

みやもとさんは、これまでも絵本に関する数々の賞で入選しつつも、なかなかデビューにまでは至らず。そんななか、大好きな鬼の作品でついに講談社絵本新人賞を受賞。絵本作家としてのキャリアをスタートさせることとなりました。今回、賞の知らせを受けたとき、声を詰まらせて喜んでいたみやもとさん。作品が『福の神』であったことから、電話をかけた編集部員のことを福の神だと思ったそうです(ちなみに電話をかけた福の神編集部員がこの作品を担当することになりました)。

みやもとさんの『福の神』は2024年11月に発売予定です。発売までの期間、制作日誌の連載もスタートしますのでこちらもお楽しみに!

受賞者の言葉 2024.1.15

新人賞
『福の神』 みやもと かずあき(和歌山県)
『福の神』より
読む人の心に火を灯すような絵本をテーマに作品づくりに取り組んできました。そしてできた作品『福の神』を絵本新人賞に送りましたところ大賞に選んでいただきました。あきらめずに続けていたら、嬉しいことはおこるものですね。

『福の神』が私にとって本当の福の神になり、心に大きな火を灯してくれました。すべてに感謝です。

この後、この作品が読者の「福の神」になれたら、こんな素敵なことはありません。
佳作
『ねこがねこんだ』 たかはし あきよ(兵庫県)
『ねこがねこんだ』より
この度は佳作に選んでいただき、ありがとうございます。ご連絡いただいた際は、驚きと嬉しさで舞い踊ってしまいました。

この作品は、題名とオチが先に思いついた絵本です。話の展開に悩みましたが、「これだっ!」と思いついた後は、スラスラとラフが進みました。最終的に、ねこたちの可愛さにほっこり、くすっと笑っていただけるような、作品になったと思います。今回の受賞を励みに、今後も楽しく、絵本作りをしていきたいと思います。
佳作
『とってとって』 榊原悠介(岐阜県)
『とってとって』より
お父さんが、父親として大活躍する絵本が少ないと感じたので作りました。子のために、時にとんでもない力を発揮する親っているなあ、と、描いていて納得してしまいました。できっこないと思えるけれど、やろうと思えばできるかもしれない、ギリギリの展開はどこか、に苦悶しました。

賞を受けて、ひとつの形にはなったのかな、と嬉しくなりました。ありがとうございました。

審査員の先生方の選評(五十音順)2024.1.15

苅田澄子 先生

今年も個性豊かな作品揃いで、楽しくも悩む選考会でした。新人賞『福の神』は、ほのぼのとした雰囲気の絵があたたかく、切り口が新鮮でした。テンポもよくて、主人公たちが愛らしく微笑ましい! 私は後半の展開に少し淋しさを感じてしまったので、最後までユーモラスな設定を貫いてほしいなあと思いました。『ねこがねこんだ』は言葉遊びに笑って、絵のかわいさにほっこり。健気な猫たちががんばるストーリーも愉快! 猫たちの行動にもっと「猫らしさ」を盛り込めたら、楽しさが倍増する気がします。『とってとって』は、エスカレートしていく展開の面白さと、様々なアングルで描かれた絵が迫力満点! お父さんの奇想天外な行動が驚きの連続だったので、ラストが案外普通かも…という読後感が残りました。選外にも、惜しい素敵な作品がいくつも。まだまだもっと面白くできるのでは?と疑って、最後の1ページまで試行錯誤することが大切なのかなと思います。

北見葉胡 先生

『福の神』は、個性的な鬼が魅力的。外見もさることながら、喋り方や仕草がなんとも可愛い。鬼と福の神が入れ替わるという発想も、今まで見たことなく斬新。背景も引き算足し算がこなれていて美しい。物語に一考の余地があるものの、みんなこの鬼に魅せられて新人賞に。
『ねこがねこんだ』は、いじらしく忠実なねこの家来たちと、そんな家来への優しい眼差しが感じられる「とのさま」との、こころ温まる作品。物語もそつなく絵も達者で、起承転結も楽しく読ませる。もう一段惹きつけられるキャラクーの個性と、展開が欲しくて佳作に。
『とってとって』は飛ばしたフーセンを、こどもの「とってとって」と「おとうさんに、まかせなさい」の応酬で進めていくシンプルな作品。俯瞰・煽り・アップ・引きなど様々な角度で見せながら、飛躍していく構成が素晴らしい。絵の力があとひといき、で佳作に。

藤本ともひこ 先生

面白かった! いろいろなタイプの絵本がありました。だから一点に絞るのは実は大変。それぞれに光るものがありました。絵は素晴らしい。着眼点は独創的。見せ方は気持ちいい。だから選にもれたとしても悲観しないでください。でも分析してみてください。こどものための新しい創作絵本として、決め手の何かが足りなかった、または過剰だったのです。結果、技術のその先の「おもしろい!」という読後感があり、こどもが素直に楽しめるものが賞を得ました。ダイナミックな画面でテンポのいい力技の『とってとって』。ダジャレの一言をまったり猫世界時代劇絵本にしてみせた『ねこがねこんだ』の二つが佳作。鬼と福の神が入れ替わるとどうなるかという独創をキャラと構成で描き切った新しい節分絵本の『福の神』が新人賞でした。これから応募するみなさん。講談社新人賞の過去作をみてみてください。傾向なんてありません。そこにあるのはゴリっとした作り手の何かなのです。画力や構成なんてことを突き抜けた「!」という読後感があると気持ちいいのです。あなただけの「!」を磨いてみてください。

三浦太郎 先生

たしかにそうだ、こんな事は考えたことなかったけれど、鬼に生まれたら大変だ。毎年豆をぶつけられる人生、いや鬼だから鬼生?か。それにくらべて福の神はのんきなもんだよ、人生、いや神生イージーモードじゃないか。でも、だれかと本当に入れ替われるとしたら、この本のように一日くらいがちょうどいいのかもしれないね。何かと他人とくらべがちな現代社会だからこそ読んでもらいたい一冊! お話の雰囲気に絵がぴったり合っていて、短い時間でスッと読めたのがいい絵本の証。個人的には鬼の姫カットがハマりました。
『ねこがねこんだ』は最後まで競り合った作品。ゆるいタッチのかわいい猫たちと、引き算ができる絵作りで、極めればきっと人気の絵本作家になると思います。
『とってとって』を見た時、その昭和感に驚いた。「今の時代にこんなタッチで描ける人いるのか!」と。映画のようなカメラワークとスピード感のある展開に感心しつつ、次作を期待してしまう。

講談社絵本新人賞の贈呈式が行われました 2024.1.15

第44回講談社絵本新人賞の贈呈式。
2023年10月24日(火)に、講談社絵本新人賞の贈呈式が行われました。

会場には、選考委員の苅田澄子先生、北見葉胡先生、藤本ともひこ先生、三浦太郎先生。そして、受賞者のみやもとかずあきさん、たかはしあきよさん、榊原悠介さんが集まりました。
左から、榊原悠介さん、みやもとかずあきさん、たかはしあきよさん。
賞の贈呈後は、選考委員の方々より、選評とお祝いの言葉をいただきました。選考委員の方々からのありがたいお言葉に、受賞者のみなさんも真剣に聞き入っていました。
登壇しお話しされる、選考委員の苅田先生。
選考委員の方々からのお話が終わると、次は受賞者の3人から、喜びのスピーチと合わせて、これまでの応募作品づくりの奮闘エピソードが披露されました。

式の最後には、作品の原画を見ながら、選考委員の方々と受賞者のみなさんでご歓談。選考委員の方々から直接お話を聞くことのできる、貴重な時間になりました。
原画を見ながら、選考委員の藤本先生とお話されるみやもとさん。
選考委員の北見先生のお話を、メモをとりながら聞き入るたかはしさん。
選考委員の苅田先生に、作品への思いを語る榊原さん。
真剣なようすで原画を見る、選考委員の三浦先生とみやもとさん。
関係者のみの参加でしたが、あたたかい贈呈式になりました。

来年のご応募も、お待ちしております!

最終選考結果 新人賞1作品、佳作2作品が決定! 2023.9.15

第44回講談社絵本新人賞最終選考会は、審査員に4名の先生方(苅田澄子先生、北見葉胡先生、藤本ともひこ先生、三浦太郎先生)を迎え、講談社・幼児図書編集長を加えた5名で行われました。
今回の応募総数は、406作品。一次選考で53作品に絞られた後、二次選考で残った21作品をもって最終選考が行われました。選考会後半には、数作品を前に激論が交わされ、厳正な審査の結果、新人賞は、みやもと かずあきさんの『福の神』に決定しました。佳作は、たかはし あきよさんの『ねこがねこんだ』、榊原悠介さんの『とってとって』が選出されました。受賞者のみなさま、おめでとうございます。
新人賞
正賞:賞状・記念品 副賞:50万円・単行本として刊行
『福の神』 みやもと かずあき(和歌山県)

佳作
正賞:賞状 副賞:20万円
『ねこがねこんだ』 たかはし あきよ(兵庫県)
『とってとって』 榊原悠介(岐阜県)

中間報告 第二次選考結果 2023.8.31

第44回絵本新人賞は、406作品もの応募をいただきました。
第一次選考で53作品に絞られた後、第二次選考では21作品が通過しました。
次回は、最終選考結果をお伝えできる予定です。楽しみにお待ちください。

第二次選考通過作品

『カンタロウ』 とおちかあきこ
『あれもじてんしゃ!これもじてんしゃ!』 Miyuki SK
『こぐまのとうみん』 えむら ゆか
『福の神』 みやもと かずあき
『おひっこし』 ゆうじ よう
『よるのあしあと』 つまざわ あやか
『まっくらがあかるい』 平野七夕
『ねこがねこんだ』 たかはし あきよ
『ベジタブルーとうのだいこんせんせい』 井上和美
『ママ、サンタクロースとたたかう』 メグミ ミオ
『たんじょうびは、きた?』 ますだかな
『とってとって』 榊原悠介
『ぼくのおしりのかんちがい』 佐藤時子
『きのこのぼうしやさん』 よこやま あや
『うばぐるまのあずきつね』 torisun
『ガブリビル』 はりがい ゆうこ/しんどう これよし
『パンうみへいく』 おぎわら ちず
『かぜがふきます』 大石さちよ
『バスタブのかいかた』 しむら あやか
『みいたんとくもよちゃん』 春町美月
『まよなかの らくがき』 ボビーズ

中間報告 第一次選考結果 2023.8.25

2023年5月31日をもって、(今年度の)応募締め切りとなった、第44回講談社絵本新人賞。新人賞事務局で開封作業を行い、応募作品総数は406作品となりました。たくさんのご応募ありがとうございます。
ずらりと並ぶ応募作品! 事務局員が、ひとつずつ丁寧に開封していきます。
選考委員による審査を経て、第一次選考では、406作品中53作品が通過しました。今後、第二次選考、最終選考結果を随時お伝えする予定ですので、楽しみにお待ちください。

第一次選考通過作品

『おたんじょうび おめでとう』 加藤バーバラ
『ハウス・ハピネス』 もちづきかおり
『おかずだって はらがへるのです』 やまさき たかし
『カンタロウ』 とおちかあきこ
『キリン・ヘンシン 大ぼうけん』 堀江恭一
『まけるな ちいさなきらわれもの』 もりのみくり
『あれもじてんしゃ!これもじてんしゃ!』 Miyuki SK
『さむらいシュート』 みつたらすすむ
『こぐまのとうみん』 えむら ゆか
『福の神』 みやもと かずあき
『ちびダコのさくせん』 長野健司
『いるのかな』 カオ
『おひっこし』 ゆうじ よう
『くっちーの まほうのことば だいさくせん』 いるかの しっぽ/UBU
『ちいさなサボテンぼうや』 ユーイング繭子
『よるのあしあと』 つまざわ あやか
『きゅうりはどこにいったのか』 むぎはらや
『わたしのなかのやるきやま』 池松みえ
『コップのひみつをしってるかい?』 奈央キミコ
『おやつじゃんぐる』 山崎由貴
『トマとトマトとマト』 としやマン
『まっくらがあかるい』 平野七夕
『アイスクリームがとけちゃうまえに』 たかはし あきよ
『ねこがねこんだ』 たかはし あきよ
『ほめるぱん』 柑本純代
『ベジタブルーとうのだいこんせんせい』 井上和美
『ママ、サンタクロースとたたかう』 メグミ ミオ
『たんじょうびは、きた?』 ますだかな
『どっちの?どっちの?』 川崎佳織
『とってとって』 榊原悠介
『ぼくのおしりのかんちがい』 佐藤時子
『きのこのぼうしやさん』 よこやま あや
『くつをさかさにしてみると』 たきざわかな
『あしたともだち』 こばやしななこ
『もんたのてがみ』 吉田 ももこ
『十三夜のリンゴ』 みさわ さいみ
『うばぐるまのあずきつね』 torisun
『しろばっか』 ゆじゃり
『あひるのくるり』 高森大
『ガブリビル』 はりがい ゆうこ/しんどう これよし
『ケイちゃんの コロ』 冨永涼
『せっしゃ サンタでござる』 いるかの しっぽ/さとう えりこ
『パンうみへいく』 おぎわら ちず
『へん?』 モリヤユメコ
『かぜがふきます』 大石さちよ
『たまご』 大石さちよ
『ほしいな きらきらシール』 駒谷実希
『バスタブのかいかた』 しむら あやか
『みいたんとくもよちゃん』 春町美月
『くせっけ マリちゃん』 小林雅枝
『はんちゃんとはんぞうさん』 桜木ゆみこ
『まよなかの らくがき』 ボビーズ
『そと さむそうだな』 いげたゆかり