第45回(2024年)講談社絵本新人賞 選考経過〔最終選考 受賞作決定〕報告

幼児図書編集部

受賞者の言葉 2024.10.25

新人賞
『どんぐりず』 はた なおや(兵庫県)
『どんぐりず』より
すべての画像を見る(全15枚)
何年か前から絵本に挑戦していたのですが、なかなか出版へ至らず、諦めて少し距離を取ろうと考えていました。そんな中でも自力で最後まで考えられた唯一の絵本が「どんぐりず」でした。制作してみてからでもと直前に思い立ち、応募しました。まさかの結果でした。まだ信じていません。

本作に出てくる赤いハチマキのどんぐりのように、出遅れ、ドジで目立たない私が一等賞を取れるなんて思っても見ませんでした。赤いハチマキのどんぐりのようにこれからも諦めず走り続けていきたいと思います。ゴールもわからず。
佳作
『ぺったんぺったんぺったんとやってきましたこんにゃくです』 むぎはら(東京都)
『ぺったんぺったんぺったんとやってきましたこんにゃくです』より
よくわからない存在がよくわからないまま存在していると、なんだかほっとして心地よい気分になります。こんにゃくという食材を食べたことはあるけれど、ぺったんぺったん歩いてくる姿はまだ見たことがありません。この作品は「よくわからないけれど、なんだかほっとしたなあ」と感じてもらえることを目指して作りました。

このたびは、佳作に選んでいただきありがとうございます。これからも楽しくのびのびと絵本を作りたいと思います。
佳作
『ボタンのスキマスキー』 かいのりひろ(大阪府)
『ボタンのスキマスキー』より
ある寒い朝、保育園に出発する前でした。当時2歳の長女はお気に入りのジャンパーのボタンをとめるのに四苦八苦。私が手伝おうとしても自分でやりたがるので、やたらと時間がかかります。

遅刻のタイムリミットが迫る中、悪戦苦闘する娘を棒立ちでただ見ることしかできないときに、(ああ…ボタンに腕でも生えて、自分ですぽ〜んと出てきてくれたらいいのに)と思ったのが、この作品の最初でした。

人生にむだな時間はないのかもしれません。

この度は選出いただき、本当にありがとうございました。
佳作
『チューリップのリリィさん』 もとづかあさみ(千葉県)
『チューリップのリリィさん』より
子供が絵本に向ける輝きに満ちた眼差しを見ていると、自分も子供達が笑顔になるような本を作りたいと思うようになりました。本作は締切1ヶ月前にラフを描き始め、まとまった時間が取れない中、育児の合間にコツコツ作業し完成させる事ができました。受賞の知らせを受けて、嬉しいのはもちろんですが自分が面白いと思う物語が評価された事に安堵しました。

これからも鋭意制作に努めたいと思います。この度はありがとうございました。

審査員の先生方の選評(五十音順)2024.10.25

苅田澄子 先生

「未熟な部分があっても、キラリと光るものがある作品を」と皆さんで決めて選考を始めました。その結果10作品が残り……相談の末、光のインパクトNo.1の『どんぐりず』が新人賞に。シュールな世界ですがどんぐりたちが愛らしく、言葉遊びが楽しい! こどもたちが笑いころげる姿が見えるよう。こどもも大人も魅了される絵本になる予感がします。

『チューリップのリリィさん』は、植物が主人公という難しい設定を何とも自由にひらりと描いていて好きでした。『ボタンのスキマスキー』は、ボタンがいろいろな隙間をくぐっていくという面白い発想で「転」も気持ちよかったです。『ぺったんぺったんぺったんとやってきましたこんにゃくです』は最初は少しだけ物足りなく感じましたが、その何ともゆる~いユーモア世界にだんだんはまっていきました。

選外にも「光るもの」を感じる作品はいくつもありました。全体のバランスのよさも決め手の一つだった気がします。

藤本ともひこ 先生

金メダルを授けたいわけじゃない。充分絵本世界で通用する選手を見極められるかどうか。そんな選考なのです。候補に上がってくるものは、絵と文のバランスが良くて、構成もデザインも備えている。でもそこを超えての何か一つが際立っている。そんな荒削りな可能性を見つけたいのです。『ぺったんぺったんぺったんとやってきましたこんにゃくです』は全てのバランスはいい。絵もデザインも気持ちいい。けど。こんにゃくの利用方法説明からあともう一歩先の奔放さを見たかった。『ボタンのスキマスキー』は優しい画風と場面の見せ方が気持ちよく物語にハマった。けど。物語の構成がフォーマット的に見えたのと、隙間フェチの追求がさらに欲しかった。『チューリップのリリィさん』は今的な絵表現の面白かわいい感じが際立ち、色彩も群を抜いて気持ちいい。けど。すーっと物語が通り過ぎるだけなのが物足りない。もっと大きい山場が欲しくなった。というわけで新人賞は紙に鉛筆画の『どんぐりず』。とにかくインパクトにやられた。キャラのみの鉛筆画にワンポイントの色を入れた潔い画面。ばかばかしくもテンポの良いめくりたくなる展開。定番だが納得のどんぐりらしい結末。力技が満載だった。こどものための新しい絵本の登場を予感させる。それでも、ラストカットは要相談。読者にただただ「あー! 面白かった」と言わせたいよね。

三浦太郎 先生

『どんぐりず』は、「なにこれ、ちょっと怖い」と思いながらも、ページをめくる手を止められなかった。アイディアと方向性にはもう言うことがない。描き込みを増やすか、逆に削ぎ落とすか―― 少し中途半端に感じる絵をさらにブラッシュアップすれば、間違いなく魅力的な絵本に化けるだろう。

それを横目で見ていたのが『チューリップのリリィさん』。今回のおしゃれ大賞をあげたい。このままでも絵本にできるレベルだが、もう少し子どもの視点を意識して描けば、次回はぜひ推したい作品になるだろう。

そのやりとりを隣からのぞいていたのが『ボタンのスキマスキー』。かわいいく絵本向きのイラストは安定感があり、良い絵本作家になりそうな予感がする。

そのまた隣にヌルッといたのが『ぺったんぺったんぺったんとやってきましたこんにゃくです』。こちらはつかみどころがないゆるさで新感覚な絵本だ。

それにしても、今回は『どんぐりず』のインパクト勝ちだね。おめでとうございます!

講談社絵本新人賞の贈呈式が行われました 2024.10.25

第45回講談社絵本新人賞の贈呈式。
2024年10月24日(木)に、講談社絵本新人賞の贈呈式が行われました。

会場には、選考委員の苅田澄子先生、藤本ともひこ先生、三浦太郎先生。そして、受賞者のはた なおやさん、むぎはらさん、かいのりひろさん、もとづかあさみさんが集まりました。
左から、もとづかあさみさん、かいのりひろさん、はた なおやさん、むぎはらさん。
賞の贈呈後は、選考委員の方々より、選評とお祝いの言葉をいただきました。選考委員の方々からのありがたいお言葉に、受賞者のみなさんも真剣に聞き入っていました。
登壇しお話しされる、選考委員の三浦先生。
選考委員の方々からのお話が終わると、次は受賞者の4人から、喜びのスピーチと合わせて、これまでの応募作品づくりの奮闘エピソードが披露されました。

式の最後には、作品の原画を見ながら、選考委員の方々と受賞者のみなさんでご歓談。選考委員の方々から直接お話を聞くことのできる、貴重な時間になりました。
選考委員の藤本先生と、楽しげに顔を見合わせるはたさん。
原画を見ながら、選考委員の苅田先生とお話しされるむぎはらさん。
選考委員の三浦先生に、作品への思いを語るかいさん。
選考委員の先生方のお話に聞き入るもとづかさん。
関係者のみの参加でしたが、あたたかい贈呈式になりました。

来年のご応募も、お待ちしております!

撮影/嶋田礼奈

最終選考結果 新人賞1作品、佳作3作品が決定! 2024.9.25

第45回講談社絵本新人賞最終選考会は、審査員に苅田澄子先生、藤本ともひこ先生、三浦太郎先生を迎え、講談社・幼児図書編集長を加えた4名で行われました。
*選考委員の北見葉胡先生は、体調不良のため欠席となりました。
左から、藤本先生、三浦先生、苅田先生。
作品を前に、真剣な議論が重ねられます。
今回の応募総数は、528作品。一次選考で53作品に絞られた後、二次選考で残った20作品をもって最終選考が行われました。選考会後半には、数作品を前に激論が交わされ、厳正な審査の結果、新人賞は、はた なおやさんの『どんぐりず』に決定しました。佳作は、むぎはらさんの『ぺったんぺったんぺったんとやってきましたこんにゃくです』、かいのりひろさんの『ボタンのスキマスキー』、もとづかあさみさんの『チューリップのリリィさん』が選出されました。受賞者のみなさま、おめでとうございます。
新人賞
正賞:賞状・記念品 副賞:50万円・単行本として刊行(印税含む)
『どんぐりず』 はた なおや(兵庫県)

佳作
正賞:賞状 副賞:20万円
『ぺったんぺったんぺったんとやってきましたこんにゃくです』 むぎはら(東京都)
『ボタンのスキマスキー』 かいのりひろ(大阪府)
『チューリップのリリィさん』 もとづかあさみ(千葉県)

中間報告 第二次選考結果 2024.9.4

第45回絵本新人賞は、528作品もの応募をいただきました。
第一次選考で53作品に絞られた後、第二次選考では20作品が通過しました。
次回は、最終選考結果をお伝えできる予定です。楽しみにお待ちください。

第二次選考通過作品

『ぼくのうんてんせき』 chan chan
『おやすみサファリ』 アサイレイコ
『くものりょかん』 とおちかあきこ
『どうぶつたちのきゅうじつ』 ひらお ふみほ
『ももつっつ』 美月 あかり
『ひみつのにんじゃガール』 あるみく
『ぺったんぺったんぺったんとやってきましたこんにゃくです』 むぎはら
『リンツくん だまされないで!』 土井りつ子
『ボタンのスキマスキー』 かいのりひろ
『ふみきりカンカンカン』 なかやゆうじょう
『ぶたがおんせんにやってきた』 夏目モモ
『スケートがしたかったおひさま』 はせがわまり
『チューリップのリリィさん』 もとづかあさみ
『ながれぼし』 吉田ももこ
『ねこびよーん』 門脇日和
『ミモザのくつ』 キム・ユミ
『どんぐりず』 はた なおや
『はんぶんこ』 ヒヤマナツ
『にわキッチン』 榊原悠介
『プルプル!ヘリコプターねこ』 さかとくみ雪
(順不同)

中間報告 第一次選考結果 2024.7.17

2024年5月31日をもって、(今年度の)応募締め切りとなった、第45回講談社絵本新人賞。新人賞事務局で開封作業を行い、応募作品総数は528作品となりました。たくさんのご応募ありがとうございます。
ずらりと並ぶ応募作品! 事務局員が、ひとつずつ丁寧に開封していきます。
選考委員による審査を経て、第一次選考では、528作品中53作品が通過しました。今後、第二次選考、最終選考結果を随時お伝えする予定ですので、楽しみにお待ちください。
第一次選考を通過した方は、7月26日(金)必着で、作品をお送りください。

【手描き制作作品】原画作品をお送りください。
【デジタル制作作品】塗り足し・余白を含む作品全体をプリントアウトしたものをお送りください。


送り先や詳細は、応募要項をご覧ください。

第一次選考通過作品

『ててんぐてんぐ てんぐりがえり』 メラチカ
『カッパくんのかさ』 神谷直子
『ぼくのうんてんせき』 chan chan
『おやすみサファリ』 アサイレイコ
『くものりょかん』 とおちかあきこ
『フランスパン王子のパンの気球』 まつむらあきひろ
『どうぶつたちのきゅうじつ』 ひらお ふみほ
『ふしぎなうさぎのランプ』 かわべしおん
『ももつっつ』 美月 あかり
『ともこおばあちゃんのかみしばい』 しょうじ りお
『ひみつのにんじゃガール』 あるみく
『ねことくらしているねずみ』 古林夏清
『ポピーのはらっぱ』 林 季里/春日千尋
『ぺったんぺったんぺったんとやってきましたこんにゃくです』 むぎはら
『すいかの占い師』 ときやま ときこ
『くまのしょうぞうがびじゅつかん』 うしくるようすけ
『リンツくん だまされないで!』 土井りつ子
『ボタンのスキマスキー』 かいのりひろ
『さびしがりやのだるぶ』 赤澤圭子
『サボテンのてんこちゃん』 フミ
『ちいさいライチ』 よねやまゆうた/磯貝 浩一郎
『ナマケモノはみてた!』 かなやりえこ
『あくまは きょうも ねむれない』 しんどう ゆいと/はりがい ゆうこ
『りゅうのともだち』 たかはた たまき
『さえちゃんとママのおねがいごと』 こばやし けんじ
『ふみきりカンカンカン』 なかやゆうじょう
『りょうたとおにのこふうたのはなし』 もりの みくり
『むかでのぽけっと』 しもたまり ただし
『ぶたがおんせんにやってきた』 夏目モモ
『ちりからうまれた ちりちりちりーず』 むむら
『ぼくとことば』 ミキ ミナミ
『まいごじゃないもん』 としま ゆここ
『はずかしがりやのおつきさま』 かんな
『リクとカイとおさかなさん』 たまり たつき
『おとしものや』 しむら あやか
『ウトウのもさきち』 Accotori
『トンテとカンテとおばけやしき』 朝戸にこん
『わたしのおもいでめぐりやさん』 torisun
『ひとりでしぬのはこわくない』 糸巻まき
『スケートがしたかったおひさま』 はせがわまり
『チューリップのリリィさん』 もとづかあさみ
『ながれぼし』 吉田ももこ
『ねこびよーん』 門脇日和
『ガイコツくんへのおくりもの』 稲嶺あづち
『ちゃたとジョイ うみへいこう』 細川恵子
『ミモザのくつ』 キム・ユミ
『どんぐりず』 はた なおや
『しずかにしてもらえませんか?』 たきじまゆかり
『はんぶんこ』 ヒヤマナツ
『にわキッチン』 榊原悠介
『おおかみのおはなやさん』 伏見悠太
『プルプル!ヘリコプターねこ』 さかとくみ雪
『おじさんとスーツケース』 ヒサノ
(順不同)
この記事の画像をもっと見る(15枚)