2022.01.24

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579作品の頂点に! 和菓子売りの私が「絵本作家」デビューするまで

第42回 講談社絵本新人賞受賞・伊佐久美の『タコとだいこん』制作日記第1回

第1回「はじめまして」

新人絵本作家の登竜門として知られる「講談社絵本新人賞」。
1979年に創設され、歴代受賞者にはかがくいひろし氏、シゲタサヤカ氏(佳作)、石川基子氏など、絵本界の綺羅星のような才能を輩出しています。新人賞受賞作品は、単行本として刊行されるため、絵本作家デビューを目指す多くの人が、こぞって応募します(21年度は579作品が集まりました)。

第42回講談社絵本新人賞を受賞した伊佐久美氏。受賞からデビューまでの裏側を、受賞者自身に「制作日記」形式でルポしてもらいました。和菓子屋でお菓子を売る仕事をしている女性に何が起きたのでしょう? 創作の裏側が覗ける貴重な同時進行ドキュメントをお届けします。

はじめまして。
『タコとだいこん』で絵本新人賞をいただきました伊佐久美と申します。これから受賞作を刊行する8月まで、毎月お目にかかる予定です。よろしくお願いいたします。

第42回講談社絵本賞新人賞を受賞した『タコとだいこん』(伊佐久美)より

いろいろお話したいことがありますが、まずはタコとだいこんを描いた、いきさつからはじめたいと思います。きっかけは二年以上前、五十肩と腱鞘炎になって、それまで頑張っていた踊りや手芸ができなくなってしまったことでした。

私は和菓子屋でお菓子を売る仕事をしています。それも楽しいけれど、そのほかにどうしても何かしたくて、できることをいろいろ試していたら、絵は描けることがわかりました。

せっかくだから何か目標を決めて描こうとコンクールの検索をしてみると、講談社絵本新人賞に行き当たり、以前からなんとなく頭の中にあった、ネコとおじさんのお話にしよう! と描き始めたのでした。わーい!

ところが、ネコもおじさんも上手に描けなくて、ぐちゃぐちゃ考えていたら、いつの間にかタコとだいこんのお話になっていたのです。不思議ですね~。

期日に間に合い、さて郵送しよう! とホームページを見ると、コロナで中止。じゃあ来年送ろう! としっかり梱包して、翌年応募しました。

長いあいだ置いていたせいか、トレーシングペーパーに画材がくっついてしまい、編集部の方が困っていたそうです。でも、タコがトレーシングペーパーにくっつくのって、なかなか良いですよね。

絵を描きながらも、送るときにも、選考委員の先生方に呆れられるだろうなあ。もしかして怒られるかも? と考えていました。それでもせっかく楽しく描いたんだし、送っちゃえ。というやけっぱちな気持ちだったので、一次選考を通るとも考えていませんでした。

すっかり気が済んで、そのまま絵本のことは忘れ去り、ホームページを見ることもなく、最終選考に残りましたという封書が届いてびっくり! いったいどうしたことだろう? と不審に思っていたら数週間後、講談社から電話がかかってきました。

「タコの絵から謎の汁がにじみ出て、他の方の絵を汚してしまった。どうしてくれるんですか。」といった苦情の電話かも? とか、「これから賞金を振り込みますから、今すぐATMに!」と言われるのかも。賞金サギ? とか。

いろんな妄想が頭の中を駆けめぐり、あげくの果てには、ああ、これが走馬灯のように。というものか。私もうすぐ死ぬのかな? なんて考えていて、編集者のNさんの「賞をお受けくださいますか?」の言葉に何度も違う返事をしていたような記憶があります。Nさん、すみませんでした。


贈呈式当日、午前中に打ち合わせをしませんか? と、私を担当してくださることになったNさんに誘われて講談社に行ってきました。

早く着いたので、護国寺をおさんぽし、ネコをなでて写真を撮り、時間ギリギリになって幼児図書編集部を訪ねました。

贈呈式当日 護国寺にいたネコ(撮影:伊佐久美)

編集部の方々に紹介していただき、楽しく打ち合わせをして会場に移動。

選考委員の先生方からお話をうかがったり、賞をいただいたり、一緒に受賞した玉田美知子さんとメグミミオさんと少しだけお話できたり。もりだくさんな半日でした。

心残りは、なんだか忙しくて玉田さんの『じごくの 2ちょうめ 5ばんち 9ごう』とメグミさんの『ハンバーグたべて~』の原画をじっくり見ることができなかったことでした。

嬉しかったのは、たくさんの方々に一生ぶんくらい褒めていただいたことです。もうこのさき一生、誰にも褒められなくても文句は言うまいと一瞬思いました。

選考委員の先生方は1ページずつ見ながら、ここはもっとこうしたら? と、とても丁寧に指導してくださり有り難かったです。でも何を言ってくださったのかほとんど覚えていません。きっと緊張していたのでしょう。褒めていただいたことはほとんど覚えています。やっぱり緊張していたのでしょうね。

幸いなことにお話の内容は、Nさんがメモしていてくださったので(さすが!)数日後にだんだん記憶が戻ってきました。ひと安心です。

私がその後したことは、恒例の編集部の年賀状の絵を描くことと、ミニラフを描くことでした。ミニラフで全体のテンポや緩急がわかるのだそうです。なるほど。絵本を応募しようと思いたったころ、晩酌しながら描いていたものはミニラフだったのですね。

今、見かえしてみたらナマコやふろふき大根も登場しています。飲みながらだとおつまみっぽいものが出てきてしまうのですね~。

ところで、その後のNさんとの打ち合わせで発覚したのですが、タコがトレーシングペーパーにくっついた原因は、画材とトレーシングペーパーの接触時間の長さではなかったようです。描いたばかりの年賀状の原画もトレーシングペーパーにくっついていたと言われました。

タコ、おそるべし!
ではまた来月お会いしましょう♪

第2回以降の制作日記はこちら

伊佐久美さんがイラストを担当した年賀状(2022)

いさ くみ

伊佐 久美

1970年生まれ、東京都在住。東京造形大学デザイン学科卒業。製版会社、デザイン事務所勤務を経て、2002年よりぬいぐるみ、雑貨等の制作...

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