第43回(2022年)講談社絵本新人賞 選考経過・報告

幼児図書編集部

審査員の先生方の選評(五十音順)2022.11.25

苅田澄子 先生

一つ一つ思いのこもった作品を前に、絵本の楽しさ、自由さを改めて感じた選考会でした。どの作品にもそれぞれ魅力があって、最後までとても悩みました。新人賞の『まよいぎょうざ』は絵、ストーリー、展開のバランスがいいなと思いました。絵のこまかな遊びが楽しく表情もユーモラスで、健気なぎょうざを応援したくなります! 佳作の『おんぶにゃにゃいとにゃく』は理屈抜きに楽しくて、読み終わった後もう一度見返したくなりました。『たまごのくにのおうじさま』は発想が斬新で、枠にはまらない面白さがありました。文章をさらに練ると一本筋が通るでしょうか。『ひみつのえんがわ』は絵が美しくて心に残りました。展開を少し整理するとすっきりして、ますます印象深くなるような気がします。絵がとても魅力的でも、ストーリーがあと一歩…と感じることが何度かあって、お話作りの大切さを実感しました。みなさん、あきらめずに創り続けてくださいね。

北見葉胡 先生

皆さん絵が素晴らしく熱意が伝わってくる貴重な時間でした。『まよいぎょうざ』は丹念に描かれた絵と俯瞰やアップ、コマ割りなど構成に工夫があり、え?結局そういうこと?と思わず笑うラストも見事で新人賞に。『おんぶにゃにゃいとにゃく』はタイトルも絵も個性的でお話も独創的。オレイクメンから始まる文章もセンスがあり吸引力のある魅力的な作品。私は嵌まりましたが好みが別れるかも?ということで佳作。『ひみつのえんがわ』は丁寧に描かれた絵が美しく、お母さんの思い出を男の子が共有していく様子も無理なく心温かい気持ちになる作品。既視感があるかも?ということで佳作。『たまごのくにのおうじさま』は斬新な視点と思いもかけないラストが秀逸。卵から雛ではなく惣菜になるという摩訶可思議な設定に迷い佳作。4作は僅差で、みんなで悩みながら選びました。選外にも好きな作品があり、来年も会えたら嬉しいな。

藤本ともひこ 先生

『まよいぎょうざ』ばかばかしい設定を味のあるリアルな画力で丁寧に描き切った。ふざけまくりの物語をめくるたびに絵で緩急自在に見せてくれるのが心地よい。ずっと笑える。●『たまごのくにのおうじさま』エンディングに向かうドキドキと、落とし所はつるんと気持ち良い。人物のみの画面の連続が単調かな。●『ひみつのえんがわ』水彩に色鉛筆の王道ファンタジーが素敵に優しく心地よい。お母さんの思い出世界に読者を引き摺り込むのだが、結末が物足りない。●『おんぶにゃにゃいとにゃく』クセスゴが凄すぎる。猫の上目遣いがずるい。どこか見る人の感性をちくちくする不思議な世界。この世界を物語にのせてほしかった。●発想はそれぞれ独自で面白かった。しかし「絵本のための物語」に届かず、「絵本のための絵」にならずが散見された。新人もベテランもない。面白い絵本のためには、手を動かし続けるしかない。絵本の面白さのど真ん中はどこか。もっともがいて探してほしい。そしてそれは、きっと人生そのものも豊かにしてくれる。だから絵本はやめられないんだ。

三浦太郎 先生

新人賞『まよいぎょうざ』はスケートボードに乗って、かろやかに選考を駆け上がった! 気がつくと最終4作品のテーブルの上にいたのだ。歴代の新人賞と並べても見劣りしない(ぎょうざの)顔つき。審査員も思わず箸でつまんでしまったという訳だ。設定も緻密で、お話もおもしろい、作者の妄想力に感服。満場一致でごちそうさま!
『ひみつのえんがわ』はノスタルジーを感じさせる素敵な絵本だと思う。このようなテーマを描ける人が少なくなっているので、古きよき日本ををテーマに、今後も描き続けてください。
『たまごのくにのおうじさま』はシンプルでとても好感がもてる。作者はなかなかのアイディアマンなので、これからどんなモチーフで絵本を作ってくるのか、期待しています。
『おんぶにゃにゃいとにゃく』はクセがあって人を選ぶ作品だが、このクセこそが最大の魅力なので、このまま突き抜けて制作を続けてほしいと思います。

受賞者の言葉 2022.11.25

新人賞
『まよいぎょうざ』 玉田美知子(神奈川県)
『まよいぎょうざ』より
素晴らしい賞をいただき、喜びと驚きで胸がいっぱいです。
中学時代に絵本作家を志し、美大に進学したものの、あれこれよそ見をしているうちに時は過ぎ、一念発起、学び直しての再挑戦で30年越しの夢が叶いました。
本作でぎょうざは迷いますが、私自身はこれから迷わないよう、目の前のページに真摯に向き合い、これからも頑張りたいと思います。
審査員の先生方に心から感謝申し上げます。家族や友人、ぎょうざたちも、ありがとう。
佳作
『たまごのくにのおうじさま』 としやマン(三重県)
『たまごのくにのおうじさま』より
この度は、講談社絵本新人賞 佳作に 選んでくださり ありがとうございます。
過去4回応募しましたが、1度も1次選考も突破することなく もんもんとした日々を過ごし、たまごおうじのようにやさぐれていましたが 今回佳作に選ばれ嬉しく思います。
でも佳作は佳作。大賞ではないので悔しい思いはあります。
今後も、たまごおうじのように 一皮むけてデビューできるように頑張ります。ありがとうございました。
佳作
『ひみつのえんがわ』 torisun(愛知県)
『ひみつのえんがわ』より
子どもの頃、私の部屋は縁側でした。周りの子が綺麗なお家や部屋を持っている中、細長く突き当たりに学習机を置いただけのこの部屋がちょっと恥ずかしかったです。しかし絵を描き、いろんな妄想をしたこの部屋は自分の原点だなと縁側を題材に描くことに決めました。
そして子育てを通じて忘れていた子ども時代を思い出した追体験をもとに「ひみつのえんがわ」ができました。
もし幼少期の私に会えたなら、あなたの縁側がちょっと認められたよ! と伝えたいです。ありがとうございました。
佳作
『おんぶにゃにゃいとにゃく』 殿本祐子(兵庫県)
『おんぶにゃにゃいとにゃく』より
わぁ! この茶封筒、講!談!社!って‼ 賞の発表は10月のはず…。今日はまだ8月。落選だともう連絡がくるの? もう少し夢を見ていたかったー! この10秒間を経て「最終候補」の文字が‼  休日は旦那さんをほったらかして、出勤前と寝る前も猫を描き続け、上手な人の絵を見てはモヤモヤ。自分が描いた猫を見てはニヤニヤ。そんな愛しい5ヶ月間でした。 涙が込み上げては引っ込んでまた出ての1時間。へんな声も出て…。嬉し泣きってこんなに泥くさいんだな。こんな涙をくださったみなさまに感謝いたします!

講談社絵本新人賞の贈呈式が行われました 2022.11.25

第43回講談社絵本新人賞の贈呈式。
2022年10月27日(木)に、講談社絵本新人賞の贈呈式が行われました。感染症対策として、関係者のみの少人数での開催です。

会場には、選考委員の苅田澄子先生、北見葉胡先生、藤本ともひこ先生、三浦太郎先生。そして、受賞者の玉田美知子さん、としやマンさん、torisunさん、殿本祐子さんが集まりました。

賞の贈呈後は、選考委員の方々より、選評とお祝いの言葉をいただきました。選考委員の方々からのありがたいお言葉に、受賞者のみなさんも真剣に聞き入っていました。
前列左から、殿本祐子さん、torisunさん、としやマンさん、玉田美知子さん。
選考委員の方々からのお話が終わると、次は受賞者の4人から、喜びのスピーチと合わせて、これまでの応募作品づくりの奮闘エピソードが披露されました。

式の最後には、作品の原画を見ながら、選考委員の方々と受賞者のみなさんでご歓談。選考委員の方々から直接お話を聞くことのできる、貴重な時間になりました。
原画をご覧になる選考委員の北見先生と、真剣な表情の玉田さん。
選考委員の苅田先生とお話されるとしやマンさん。
選考委員の三浦先生のお話を、じっくり聞き入るtorisunさん。
原画を見ながら、選考委員の藤本先生と楽しげにお話される殿本さん。
関係者のみの参加でしたが、あたたかい贈呈式になりました。

新人賞を受賞した『まよいぎょうざ』は、来年刊行予定。どのような絵本になって発売されるのか、どうぞお楽しみに。来年のご応募も、お待ちしております!
左から、としやマンさん、玉田美知子さん、torisunさん、殿本祐子さん。
※撮影時のみマスクを外しています。

最終選考結果 新人賞1作品、佳作3作品が決定! 2022.9.21

第43回講談社絵本新人賞最終選考会は、審査員に4名の先生方(苅田澄子先生、北見葉胡先生、藤本ともひこ先生、三浦太郎先生)を迎え、本社・幼児図書編集長を加えた5名で行われました。
今回の応募総数は、442作品。一次選考で49作品に絞られた後、二次選考で残った22作品をもって最終選考が行われました。選考会後半には、数作品を前に激論が交わされ、厳正な審査の結果、新人賞は、玉田美知子さんの『まよいぎょうざ』に決定しました。佳作は、としやマンさんの『たまごのくにのおうじさま』、torisunさんの『ひみつのえんがわ』、殿本祐子さんの『おんぶにゃにゃいとにゃく』が選出されました。受賞者のみなさま、おめでとうございます。
新人賞
正賞:賞状・記念品 副賞:50万円・単行本として刊行
『まよいぎょうざ』 玉田美知子(神奈川県)

佳作
正賞:賞状 副賞:20万円
『たまごのくにのおうじさま』 としやマン(三重県)
『ひみつのえんがわ』 torisun(愛知県)
『おんぶにゃにゃいとにゃく』 殿本祐子(兵庫県)

中間報告 第二次選考結果 2022.8.29

第43回絵本新人賞は、442作品もの応募をいただきました。
第一次選考で49作品に絞られた後、第二次選考では22作品が通過しました。
次回は、最終選考結果をお伝えできる予定です。楽しみにお待ちください。

第二次選考通過作

『さいきょうになるたび』 大石さちよ
『モグモグがったい』 島田晴夫
『さかなつり&50』 木村秀幸
『やつらのサイン』 おなのりえ
『たいふうベイビー』 ゆうじよう
『おぼえてる』 ますだかな
『ふとまきふとんごう』 いげたゆかり
『みざる いわざる』 ボビーズ
『フライドポテトたべたいねん』 小林もこ
『たまごのくにのおうじさま』 としやマン
『ひみつのえんがわ』 torisun
『グリーンクラブのオタマジャクシたち』 小林雅枝
『カーテンレールのでんしゃ』 やまさきたかし
『へなちょうちょ』 吉田ももこ
『まよいぎょうざ』 玉田美知子
『おんぶにゃにゃいとにゃく』 殿本祐子
『にんじゃなんじゃ』 モリヤユメコ
『あたらしくできた とこやさん』 メグミミオ
『みてみて でめきん』 出口雅士
『ぐうたらしたいの』 くめとしまさ
『ちきゅう えんそく』 むつもとむつみ
『おらのごぼうがおおきいだぁ』 岩上祥子

中間報告 第一次選考結果 2022.8.10

2022年5月31日をもって、(今年度の)応募締め切りとなった、第43回講談社絵本新人賞。新人賞事務局で開封作業を行い、応募作品総数は442作品となりました。たくさんのご応募ありがとうございます。
ずらりと並ぶ応募作品は、いつ見ても圧巻です!
選考委員による審査を経て、第一次選考では、442作品中49作品が通過しました。今後、第二次選考、最終選考結果を随時お伝えする予定ですので、楽しみにお待ちください。

第一次選考通過作品

『トイレくんのいえで』 しちのえいと
『へんなオオカミ』 いのはらたかこ
『さいきょうになるたび』 大石さちよ
『モグモグがったい』 島田晴夫
『さかなつり&50』 木村秀幸
『やつらのサイン』 おなのりえ
『たいふうベイビー』 ゆうじよう
『おうちのそとは?』 石川由起枝
『おぼえてる』 ますだかな
『ふとまきふとんごう』 いげたゆかり
『みざる いわざる』 ボビーズ
『フライドポテトたべたいねん』 小林もこ
『たまごのくにのおうじさま』 としやマン
『バスといっしょに』 榊原悠介
『ひみつのえんがわ』 torisun
『ひみつのぽんぽん!!ぱんけーき』 つるおかのぶえ
『グリーンクラブのオタマジャクシたち』 小林雅枝
『カーテンレールのでんしゃ』 やまさきたかし
『ぽんたた ぽぽんた』 吉田ももこ
『へなちょうちょ』 吉田ももこ
『のっぺらぼうやのおしょうがつ』 濱田美和
『まよいぎょうざ』 玉田美知子
『おひさま さわった』 橋本美佳
『おんぶにゃにゃいとにゃく』 殿本祐子
『にんじゃなんじゃ』 モリヤユメコ
『いいかんじにしてください』 ふしみずき
『ママはゴリラ』 mioco(ミオコ)
『ねこのトムとココのぼうけん』 しょうじりお
『あたらしくできた とこやさん』 メグミミオ
『みてみて でめきん』 出口雅士
『ハル15さいのたんじょうび』 山根良三
『ののはなむらのはなのみつ』 月井菜生
『ぐうたらしたいの』 くめとしまさ
『ぼくのくつしたうごいてる』 ててぬくい
『もみあげとうちゃん』 さいとうまい
『ちきゅう えんそく』 むつもとむつみ
『しかられたねこ』 macco
『なにいれる? なにいれる?』 もちづきかおり
『フタなしびんタロー』 奥道ふみ
『くま  と  うさぎ  の  ブランケット』 むむう
『メイリベイリの み がなれば』 船橋愛
『しあわせな おふとん』 ヒガキKコ
『おらのごぼうがおおきいだぁ』 岩上祥子
『かかしねこ の みゃお』 いいもりちなつ
『おりをでて』 山本瑞
『おおきなきと ちいさなき』 高橋誠二/小南千晶
『クリスマスプレゼント』 高橋誠二/小南千晶
『ペンギン村の村長さん』 長野健司
『ちびくもちっち』 むむむ