第3回のインタビューは、彩色を担当したデコマスラボ代表・広瀬裕之氏に直撃取材! 引き続きバンダイ・ブランドトイ企画部の寺野 彰氏を交え、「DXドンオニタイジン」をさらに深く知ることができるインタビューをお届けします!
彩色師という仕事
彩色師というお仕事は、具体的にどういった内容になるのでしょうか?
簡単に言うと、フィギュアに色を塗る仕事なのですが、詳しく言うと、「量産される前提で」色を塗る仕事になります。工場で量産できるような塗り方ですね。塗り方によって工場でかかる手間が変わってくるので、そういったことを踏まえて「効率的によく見える塗り方」や、「お金がかからないような塗り方」、「お金がかかっても良いからとにかく見栄えが良い塗り方」といったように、量産を前提に、どういうプランで、どういうやり方をしようかというのを考えつつ塗る仕事です。
最初に商品とほぼ同じものを1個塗って、それを見本にして工場が量産します。最初の塗り方を決めて、見本を作る係みたいな感じですね。普段の仕事は、バンダイさんの商品ですと、「METAL BUILD」などですね。他には、ロボットから美少女フィギュア、カプセルトイなどの仕事をしています。子ども向けのおもちゃの仕事はほぼ初めてです。
「DXドンオニタイジン」にはどういった形で関わられたのでしょうか
おもちゃとフィギュアの彩色の扱いは違っていて、おもちゃは配色や色味のバランスを開発担当がすべて決めることが多いです。戦隊ロボに関しても同様なのですが、毎年、プレックスさんと「こういう感じの色にしよう」と決めるものの、商品コストや金型の都合で想定通りにならないことがあります。そこで、コストなどの都合や、プレックスさんと考えた色を踏まえた上で、いちばん見栄えの良い配色や色味を広瀬さんに決めてもらおうと思って仕事を依頼しました。
広瀬
普段は担当さんが色を決めて工場に指示を出すといった流れで終わるのですが、それだと既存の色から選ぶことになり、ベストな色が作れないんですよね。もちろん「戦隊ロボのおもちゃらしい色」というのがあるとは思うのですが、それだけだと赤はいつも同じ赤になってしまいます。また、赤い部分が同じ赤でなく、2種類の赤を使うことで、より複雑な見た目になれば良いと考え提案しました。
寺野
7割くらいは新しい色を作りましたね。ドンロボタロウの明るい赤は、「これまでの色を使ったほうが戦隊ロボっぽいよね」という話が出ていつもの赤にしました。黄色もいつもの色ですね。
広瀬
これまでと変えるとかっこよくなる部分と、変えないほうが「らしい」部分があったので、その辺が大人向けのフィギュアと子ども向けのおもちゃの違いで難しかったところですね。
寺野
よくやりがちなのですが、多くの人は黒は単色の真っ黒を選ぶんですよ。でも、今回広瀬さんがイヌブラザーロボタロウに選んだ黒は、濃いブルーグレーでした。
広瀬
真っ黒だと引き締まりはするのですが、今回は各ロボがつけているサングラスが黒なので、そこと同色になり目立たなくなります。また、現実の世界に真っ黒なものはほとんどないんですよ。少しグレーに見えたりだとか、少し色味を感じられる黒が多いので。なので、黒ってあまりフィギュアでは使わないのがセオリーなんですよね。
寺野
これも「バンダイあるある」なんですけど、開発担当者のいう金色って、3パターンくらいしかないんです。赤っぽい金か青っぽい金か、もしくは過去の商品と同じ金を指定する感じです。今回は胸の金が目立つところにあるので、金の色は特別にバシッと調合してもらいました。カメラマンの柴田さんも「戦隊ロボで見たことのない色だな」って言っていましたね。
普段のお仕事と、子ども向けのDXドンオニタイジンで違ったところや苦労した点はありますか?
やっぱり、大人と子どもで「かっこいい」の基準が違うので、そこがいちばんつかむのが難しかったというか、試行錯誤したところです。黄色とか赤とかは大人向けだとちょっと重い色にしたりとか、プラスチックっぽく見えないようにしないといけないところが多いんですけど、子ども向けの戦隊ロボになると逆にビビッドな色合いとかが強く印象に残ったりとか。子ども心に見てかっこいい色にするので、そこの頭の切り替えは難しかったし、正解を出せたのかは今でもはっきりわかってないですね。
下手に大人向けのかっこよさの要素を入れて、子どもに「地味」と思われるのは良くないですし、子どもが楽しんで、大人になったときに「ああ、あれあれ!」って思い出せるぐらいのインパクトがないと、いい色選びじゃないだろうなというところで、普段と違う頭を使ったので難しかったです。