第3弾映画公開決定!「すみっコぐらし」キャラデザイナーの人生を変えた「ある無表情なパンダキャラ」の衝撃

人気キャラクターの誕生秘話インタビュー 第1回

編集者・ライター:山口 真央

サンエックス本社の一室には「すみっコぐらし」のぬいぐるみやグッズがところ狭しと並ぶ。

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まん丸としたかわいいフォルムと、「とんかつ」や「ぺんぎん?」など、一風変わったキャラクターが魅力の「すみっコぐらし」。2012年に誕生し、誕生から10年を超えてもなお、愛され続けています。

そんな「すみっコぐらし」の第3弾映画が、2023年11月3日に公開されます! 映画の舞台は、森のはずれにあるおもちゃ工場。新しいキャラクターにくま工場長を迎え、今回もすみっコたちが大活躍しそうな予感です。映画の公開が待ち遠しいですね。

「すみっコぐらし」の人気の秘密を調査するべく、作者であるよこみぞゆりさんにインタビュー。第1回は、よこみぞさんの小学生時代と、すみっコが誕生するまでのお話。よこみぞさんが小学生時代に描かれたイラストも、初公開です!

第3弾映画は、森のはずれにあるおもちゃ工場が舞台です。公開が楽しみですね!

「あるキャラクター」の異様な見た目が忘れられなかった

──キャラクターデザイナーになりたいと思った、きっかけを教えてください。

よこみぞゆりさん(以下敬称略):私がキャラクターをつくりたいと思ったのは、あるキャラクターがきっかけです。

小学校は漫画クラブに所属していました。今は「すみっコぐらし」のような点の目が好きですが、当時はキラキラした目のキャラクターに夢中。あのころ流行っていたキャラクターや、目に光の入った動物の絵をたくさん描いていました。

よこみぞさんが小学生の所属していた、漫画クラブのイラストをまとめた冊子。

よこみぞ:小学生のときに雑貨屋さんで、パンダがずらずらっと並んでいるトートバッグを見つけました。そのパンダを見たとき「なんだこれ?」と目が離せなくなったんです。

帰ってからもそのパンダのことが忘れられなくて、結局、次の日にトートバッグを買いに行きました。それが「たれぱんだ」との出会いです。

「たれぱんだは今日もよくたれています」のキャッチコピーでおなじみの「たれぱんだ」。

──「たれぱんだ」は1998年に誕生したキャラクターですね。

よこみぞ:そのころ、いわゆる「ゆるキャラ」と呼ばれる脱力系のキャラクターは、ほとんどいませんでした。子どものころから、元気なキャラクターやかわいいキャラクターばかりに触れてきた私にとって、だらっとしている無表情のパンダは、衝撃的なビジュアルでした。

「たれぱんだ」のグッズをかわいがるうちに、創作意欲がかき立てられまして。漫画クラブで自分の考えるキャラクターを描いて、設定もつくってみました。大人になったらこんな仕事をしてみたいと考えるようになったのは、そのころからですね。

よこみぞさんが小学生のころに考えたオリジナルキャラクター。かわいいだけでなく「注 ころがっていく」というシュールなキャラクター設定と、丸いフォルムがよこみぞさんらしい。

ふと思いついた落書きが「すみっコぐらし」のはじまり

──小学生で「たれぱんだ」と出会い、脱力系キャラクターに目覚めたよこみぞさんですが、それからどのように絵を学びましたか。

よこみぞ:その後「アフロ犬」や「こげぱん」「にゃんにゃんにゃんこ」など、ゆるいキャラクターグッズが続々と出てきました。どれも私好みのキャラクターで、グッズを買い揃えていきました。

あるとき、私の好きなキャラクターは「たれぱんだ」も含めて、すべてサンエックスという会社でつくられたものだと気づきます。この会社に入れば、私好みのキャラクターをつくれるかもしれない。私のなかで「サンエックス」の存在は、日に日に大きくなっていきました。高校生の頃「リラックマ」が登場し、一目見てすぐに大好きになりサンエックスへの憧れは決定的になりました。

そして大学受験を考えたとき、なんとサンエックスに所属(当時)していた「たれぱんだ」のキャラクターデザイナーである末政ひかるさんが、多摩美術大学で講師をしていたことを知りました。末政さんから学ぶために多摩美を受験し、無事に合格。キャラクターデザイナーへの道を前進することができました。

よこみぞさんが最初に描いた「すみっコぐらし」。

──「すみっコぐらし」は、噂によると大学在学中に誕生したと聞きました。

よこみぞ:当時なにかで読んだ記事で、キャラクターデザインのアイデアを生み出すには落書きをたくさんするべき、というアドバイスを読んだことがありました。その影響で、落書き帳をつねに持ち歩き、暇さえあれば絵を描いていたんです。

「すみっコぐらし」は、大学の授業中に、ふと思いついて描きました。正確に言うと、完全な「すみっコぐらし」ではなくて、今はいないキャラクターもいる「すみっコぐらし」の卵で、名前もつけていませんでした。

ただ、すみっこにいるキャラクターというざっくりとしたイメージは固まっていました。日本人って、電車でやカフェの席でも、すみっこを選びがち。すみっこが好きなキャラクターがいたら、共感してもらいやすいかもと考えたんです。

「すみっコぐらし」は、60以上のテーマを発表(2023年4月現在)。新しいストーリーやキャラクターを迎えることで、毎回、新鮮な世界観を楽しませてくれる。

──よこみぞさんの想像どおり「すみっコぐらし」は長年愛されるキャラクターになりました。人気が続く理由は、どのような点にあると思いますか。

よこみぞ:サンエックス入社後に「すみっコぐらし」を本格的にデザインしたときは、幅広い層をターゲットにしていました。

私自身、大人になってからもキャラクターものが好きでしたし、「すみっこが好き」という設定は、大人のほうがより共感しやすい。結果、年齢性別問わず好きになってもらうことができました。

あとは、年に数回、新しいテーマデザインを発表していて、新しいキャラクターやストーリーを追加することで、長く楽しんでもらえる工夫をしています。

世界観を守ることも大切だけど、新しいことにチャレンジして、より多くの方に好きなってもらう。2つのバランスがよかったから、長年愛されるキャラクターに成長できたのだと思います。


「たれぱんだ」との出会いから、キャラクターデザイナーの夢へと邁進していく、よこみぞさんのブレない姿勢が印象的でした。

第2回は「すみっコぐらし」の、それぞれのキャラクターの誕生秘話を紐解いていきます。
よこみぞ ゆり

イラストレーター、キャラクターデザイナー。多摩美術大学グラフィックデザイン科卒業。サンエックス株式会社にキャラクターデザイナーとして在籍中に「すみっコぐらし」原案を手がける。現在はサンエックスから独立し、フリーで活動している。著書に「すみっコぐらし ここがおちつくんです」「絵本 すみっコぐらし そらいろのまいにち」(ともに主婦と生活社)など。

『映画 すみっコぐらし ツギハギ工場のふしぎなコ』特報(30秒)11月3日(金・祝)全国ロードショー!

撮影/日下部真紀
すみっコぐらし きらきらほうせきせっけん つくろ!
発売日:2023/7/10
価格:3500円(税別)
すみっコぐらし きらきらスライム コレクション New
発売日:2022/8/5
価格:2700円(税別)
すみっコぐらし きせかえハウス
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価格:1980円(税別)
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やまぐち まお

山口 真央

編集者・ライター

幼児雑誌「げんき」「NHKのおかあさんといっしょ」「おともだち」「たのしい幼稚園」「テレビマガジン」の編集者兼ライター。2018年生まれの男子を育てる母。趣味はドラマとお笑いを観ること。

幼児雑誌「げんき」「NHKのおかあさんといっしょ」「おともだち」「たのしい幼稚園」「テレビマガジン」の編集者兼ライター。2018年生まれの男子を育てる母。趣味はドラマとお笑いを観ること。