『アラ還十和子』大ヒット中! 君島十和子さん「30代は迷路の中! 40代でかすかなゴールが見え、50代は軽くジャンプできる! 年齢を重ねると、その人らしさの集大成が得難い“素敵さ”に」
書籍『アラ還十和子』刊行記念インタビュー2
2023.11.14
ライター:小川 聖子
30代は迷路の中! 40代からは突破口が見つかる
十和子さん:30代のころは「40」という数字が恐ろしくて。「アラフォー」なんていう言葉は、この世からなくなればいいのになんて思っていました(笑)。
でも、人間はみんな歳をとりますし、年齢を重ねることは、失うことばかりではないものだと今は実感しています。
──それはどんなところで感じますか。
十和子さん:経験を積む分、感性も豊かになりますし、視野も広がって、以前よりものごとを俯瞰できるようになってくるんです。そうなると、漠然とした迷いや不安も、「ああ、こういうことか」と、軽く飛び越せるようになることもあって……。
30代のころの私は、それこそ迷路の中で、壁にぶつかりながら歩いているようなものでした。それが40代になると、壁の向こうがちょっと見えてくるような感じ。「あっちのほうがゴールなのかな」って、ぼうっとした灯りのようなものが見えてきます。
さらに50代になると、「こう行って、こう行けばいいんじゃない?」というルートが「勘」でわかるようになるんです。そうなると楽しいですよ。それは、経験を重ね、自分のことも理解して、判断材料が増えたからこそだと思っています。だから今は以前より生きやすくなっている気がします。
人が話を聞きたくなるのは「時代とともに生きている人」
十和子さん:そうですね。もちろん肌のハリやボディラインはいつまでも20代、30代のままというわけにはいきません。ただその分、「その人らしさ」みたいなものが積み重なって生まれる「素敵さ」というものは必ずあると思っています。
ファッションなら、ただ買ってきたものを着ているだけではない、「その人だけの雰囲気」が、ふと合わせるアクセサリーや袖口の着こなしから立ちのぼることがあります。
また、例えばとろんとしたシルクのブラウスなどは、年齢を重ねて初めて肌になじみ、着こなせるようになるもの。そんな、積み重ねたものをうまく魅力にできている女性は本当に素敵です。
美容にしても、「このコスメを使うと、こんな効果があるんだ」という手応えを感じられるのは40代から。若いときはやってもやらなくても差がつきにくかった細かなケアの効果が、どんどん現れてくるのでやりがいが感じられますし、ケアを続けること自体が自分に自信を与えてくれます。そうなれば、その人は輝きますよね。だから決して、失うものばかりではないんです。
──確かに手応えがあるとやる気も湧きそうです。ただ歳を重ねるだけではなく、「しっかり自分に向き合い、手をかける」ということが大切になる、ということですね。
十和子さん:ちょっと大変ですが、そうですね。そして絶対に必要なのが「アップデート」。年齢を重ねたら、その時代とともに生きることがより大切だという気がします。
私は今、「アラ還」と呼ばれる年齢になってきましたが、その私が、30代のときの自分と全く同じようなファッション、ヘアメイクをしていたら……? もしかしたらある一定数の方々はついてきてくださるかもしれませんが、普通に今を生きている40代、50代の方たちは「どうしたのかな?」と思うくらいで、なかなか「この人の話を聞いてみよう」とは思わないと思うんです。
私は美容のお仕事をしているわけですから、パッと見て「あら、いいわね」と好印象を持っていただくことが大切です。もちろんじっくりお話を聞いていただいて伝わることもあると思うのですが、まずは興味を持っていただかないことには始まりません。だからこそ、見た目も内面も、常に新しい情報へアンテナというものは鈍らせないよう意識しています。
十和子さん:「母と同じ年齢なのでびっくりしました!」と言われたこともあるのですが、それで「この人の話なら聞いてみたい」「この人の話は信じられるかも」と思ってもらえたらありがたいです。挑戦している姿を、同世代の方たちや、少し若い世代にも見ていただけたら嬉しいなと。ただ、激辛料理もバンジージャンプも決してお勧めはしませんけど(笑)。
──十和子さんのフレッシュな感性は、著書である『アラ還十和子』からも伝わってきました。
十和子さん:『アラ還十和子』では、編集担当さんはじめ、多くの若い方とお仕事させていただきました。そのおかげで刺激もたくさんもらえました。
──若い世代との仕事で気をつけていらっしゃることはありますか。
十和子さん:それは、「言葉遣い」ですね。年齢的には私のほうがやや上なので、敬語を使わなくてもいい場面もありますが、それが仕事の場であるなら、相手が20代でも30代でも敬語を使うのはマナー。言葉遣いは相手へのリスペクトの表現なので、笑顔や挨拶とともに気をつけています。
自分のことを知るために向き合う時間を持って
十和子さん:私の時代は情報がなくて苦労しましたけれども、今は逆に溢れる情報の中から、何を選び取っていいかわからない、という悩みがあると思います。「自分に合ったものをどうやって選び取るか」は、今後ますます価値になっていくのではないでしょうか。
自分に合ったものを選ぶには、まずは自分の好みやセンスをよく知っておくこと。それには普段から「これがかわいいと思う」「この人が素敵だと思う」という自分の感覚を大切にして、それに自覚的になることではないでしょうか。「私ってこういうものが好きなんだ」と自分を客観的に分析できるようになれば、自然と自分に必要なものもわかってきます。
好きなものと同時に、自分にストレスを与えるものを知っておくことも大切です。最新の美容の研究でも、老化の一番の大敵は「ストレス」という研究結果が出ているそうです。じゃあ、自分にとってのストレスは何か? そんなことを考え、自分と向き合う時間を1日に1分でも2分でも持っていただけたらと思います。
私は毎日、真っ暗闇の中、音源も流さず自分の感覚だけで「暗闇ラジオ体操」をしています。視覚を断つ分、他の感覚が鋭くなるので、自分の心や身体の状態がよくわかるんです。
「今日はデスクワークばかりしていたのに、なんでこんなに体が重いんだろう」と1日を振り返ると、「あ、あの仕事を後回しにしていたから、それが気になっているんだ」など、気がつくことがいろいろあります。もちろん「暗闇ラジオ体操」でなく、ヨガでもお風呂でも、みなさんも自分に合った方法があると思うので、そんな方法を通して自分を知り、素敵なエイジングをしていただけたらと思います。
──今日はありがとうございました。
君島十和子/きみじまとわこ
1966年東京都生まれ。FTCクリエイティブ・ディレクター、美容家。雑誌の専属モデルや女優として活躍後、結婚を機に芸能界を引退。その後も美容への意識の高さから多くの女性誌で取り上げられる。現在はテレビや雑誌にて活躍しながら、自身のSNSでも飾らない姿を発信。最新著書『アラ還十和子』(講談社)が大好評発売中!
撮影/山本倫子
ヘア&メイク/黒田啓蔵(Iris)
スタイリング/後藤仁子