プリキュアファンの質問に鷲尾さんが答える! プリキュア5つの質問 ~鷲尾天さんトークイベント~
本イベントは「プリキュア20周年記念 プリキュアオールスターズ ポストカードブック1」購入者による抽選イベントで、来場者およびオンラインで多数の参加者が視聴。
「ふたりはプリキュア」プロデューサーで、「プリキュアシリーズ」の生みの親・鷲尾天さんに、いかにして「プリキュア」が誕生したのか、その製作の経緯や思い出を語っていただきました。
今回は、プリキュアファンの熱い質問にお答えいただいたその内容をご紹介します。まずは、魔法使い・宇宙人・人魚の新しいプリキュアをはじめ、現在放送中の「ひろがるスカイ!プリキュア」で登場した男子プリキュア・成人プリキュアが登場した背景について。「ひろプリ」オープニング映像のあの疑惑がついに解明……!?
鷲尾 天(わしお たかし)
1998年に東映アニメーションに入社。2002年「キン肉マンⅡ世」でプロデューサーとして独り立ちし、2004年「ふたりはプリキュア」から「Yes!プリキュア5 GoGo!」までプロデューサー、「Go!プリンセスプリキュア」からは企画としてシリーズに携わっている。
『プリキュアの生みの親』『プリキュアの父』と言われる存在。他に「トリコ」「怪談レストラン」「おしりたんてい」など。
現在、東映アニメーション執行役員、営業企画本部企画部エグゼクティブプロデューサー、制作本部制作部スーパーバイザー。
プロデューサーはいわゆる「何でも屋」
鷲尾さん:難しい質問です。一言で言えなくて、いわゆる何でも屋なんです。
企画ができたら、関係者の皆様からお金を集めたり、放送する場所を探してもらったり、番組が成立するなら、スタッフを集め、中身を決め、実際に作っていく、この工程をずっと関わっていくんです。
なので、番組がうまくいったらこのような晴れの場へお呼びいただけますが、そうじゃない作品も関わっています。物事はなかなかうまくいかないものです。それもすべてプロデューサーとして責任を負います。そういうことを繰り返しながら25年やってきました。
数々の新しいプリキュアの登場 大事なのは裏付け
鷲尾さん:プロデューサー、監督、スタッフがものすごく一生懸命考えるわけです。その中から出てきたものが形になっています。現場がやりたいことについて、ちゃんと意味があって、裏付けがあるか協議を重ねます。
例えば、どうして魔法を解禁したか。まずは近所の図書館で「中世の魔女はどんな存在か」についての学術書を借りてきて、調べました。その中に、魔女と呼ばれる人たちは医学の知識(薬草学など)があり、出産に立ち会っている。つまり、命に関わる仕事をしていて、民衆の尊敬を集めている。
では、なぜ魔女扱いされたのか? それは当時の権力者からすると、都合が悪いからなんです。自分以外に敬意を集める人間がいると権威が薄れる、怖れる、だから排除する。
ここからは仮定の話ですが、もし魔女と呼ばれ排除された人たちが、自分たちのコミュニティをもって隔絶された世界に今も住んでいるとしたら? そこと我々の世界が出会って手を繫いだら、いったい何が起きるんだろう?
つまり、プリキュアになるということは魔法を超えた奇跡だ。二人の名前は「ミラクル」と「マジカル」。ここまでの裏付けがあれば大丈夫、いけるだろうという結論になりました。
鷲尾さん:これも現場のプロデューサーからの意見でした。今までのアクションと違うことがやってみたい、パティシエになりたいというお子さんが多いので、お菓子作りの楽しさをイメージした作品にしたい、プリキュアシリーズとしてきちんと表現するときに、アクションじゃない違う形のイメージづけをしたい。それは面白いからやってごらんなさいという流れでした。
そこからスタートして現場はいろいろ苦労していたようですが、1年間きちんとまとめあげてくれました。やはり現場の力ですよね。
初の男子プリキュア・成人プリキュアに込められたものとは?
鷲尾さん:18歳が成人扱いになったのはごく最近ですよね。初の成人プリキュアということになります。年上ではあるけれども、同じ視点でものを語ってくれる人がいたらきっと嬉しいだろう、それをプリキュアでやりたい。
18歳だから学生、もしくは働きに出ることを意識してもおかしくない、免許を持っていて車を運転しているわけです。そういうチャレンジをやってみたい、ぜひやりましょうと。バリエーションの幅が広がりました。
男の子については、プリキュアは女の子だけに拘らない、時期が来て子どもたちが受け入れてくれるのであれば、男の子がいたって不思議ではない、と以前から考えていました。20周年ということもあり、世間の流れもいけるかもしれない、監督と相談しました。監督は熟考を重ねました。
プリキュアたちより視点が上にたつ人間ではふさわしくないかもしれない、プリキュアより視点は低いかもしれないけれど対等に物事を考えてくれる人、きちんとプリキュアとしてみんなと一緒に活躍してくれる人であれば、キュア◯◯と命名しようと。そして、今回「キュアウィング」が誕生したということです。
ちなみに私は、キュアバタフライとキュアウィングの技がものすごく好きで、これは監督のアイデアなんです。ウィングが火の鳥のようなかっこいい姿になって、これからどうやってトドメを刺すのだろうと思ったら、ポヨーンと大きくなって、ドーンと落ちるなんて! あれを思いつく監督ってすごいなあと思いました。
鷲尾さん:オープニング作りには口を出していません。映像になったとき、監督に「これ、意識したの?」と聞いたら、監督はニヤニヤ笑って答えないんですよ。だから真相は藪の中ということですね。
次回は、いま大人になった初期のプリキュアファンへのメッセージ、初代放送当時といまの視聴者の価値観について、プリキュアを通して伝えたかったことなど、プリキュア愛がぎゅっと詰まった鷲尾さんからの熱いお言葉をご紹介いたします。貴重すぎるトーク内容は、プリキュアファン必見です。
「プリキュアオールスターズ ポストカードブック2」では「GO!プリンセスプリキュア」から「ひろがるスカイ!プリキュア」までのプリキュアを収録。どうぞお楽しみに!
萩谷 美可
講談社の幼児雑誌「おともだち」や「たのしい幼稚園」などから出版される雑誌や絵本などの構成を担当。
講談社の幼児雑誌「おともだち」や「たのしい幼稚園」などから出版される雑誌や絵本などの構成を担当。