第8回 青い鳥文庫小説賞 結果報告

受賞者のコメントや選評なども公開!

受賞作品が決定!

「第8回 青い鳥文庫小説賞」に、たくさんの投稿をお寄せいただき、ありがとうございました! 受賞作は、下記のとおり決定いたしました!

◇一般部門

◇U-15部門

受賞コメント&選評

【一般部門】

大賞受賞『謎解きはポップコーンと共に』 大塚和々

【受賞コメント】
大賞をいただくことができ、とてもうれしいです。選考委員のみなさま、選考過程に関わってくださったすべての方に、心より感謝申し上げます。

私は想像が大好きです。十歳のときに小説家の夢を持ち、たくさんの方がその夢を信じてくれました。祖父母、友だち、友だちのお母さんたち、小学校の恩師、フリースクールの先生、ピアノの先生、そして、一番近くで私を見守ってくれている両親。受賞して初めて、自分はこんなに多くの方に支えられているんだと気がつきました。本当にありがとうございます。

今回の受賞は夢のスタート地点で、まだまだこれからだと思います。この先も、楽しみながら小説を書き続けたいです。


【選評】
主人公の圭人くんと元ヤンのイケメン私立探偵・赤月のキャラが魅力的で、ふたりの気持ちの変化、関係性の変化が丁寧に描かれています。ギミックの妙といい、コメディ要素の塩梅といい、とてもバランスがとれた作品だと思います。

謎解きの向こう側に人と人との横の関係、家族とは何かを描いていて、読み進めながら何度も胸が熱くなりました。物語の終盤で明かされる仕掛けも秀逸で、本当にひとつの映画を観ているかのような美しさを感じました。
銀賞受賞『ひまわり色の読書録』 水多千尋

【受賞コメント】
この度は、素敵な賞をいただきまして、ありがとうございます。選考に関わった全ての皆様へ、この場を借りて感謝申し上げます。

青い鳥文庫を読んで成長してきた身としては、感無量の思いです。この嬉しさと、幼い頃に少しだけ背伸びして味わった世界の感動を忘れずに、これからも楽しい物語を書き続けたいと思います。


【選評】
「世界中の本を読むことが夢」という読書好きな主人公が、図書館に寄贈された奇書をめぐって、面倒な事件に巻きこまれるというストーリーがとても面白かったです。ケレン味とユーモアを兼ねそなえた語り口で、独特な世界観を作りだす筆力に作者の可能性を感じました。

窃盗団の設定が甘いのと、依頼人の動機や行動も弱いため、後半やや勢いが落ちてしまった印象を受けましたが、最後まで楽しく読ませてくれます。

【U-15部門】

佳作受賞『親友と文芸部』 今泉和夏

【受賞コメント】
初めに、このような賞を頂けたこと、本当にありがとうございます。個人的にとても思い入れのある小説なので、記念になって嬉しく思っています。

 『名探偵夢水清志郎事件ノート』の亜衣ちゃんや『復活!! 虹北学園文芸部』のマインちゃんに憧れて、文芸部に入部。そこでの経験や、他の学校生活の中での出来事をもとにして書いたのが、この小説です。昨年、別の小説で応募したときに添削していただき、その後異動された文芸部の顧問の先生に伝えたくて書きました。

 文芸部の歴代の先生方、先輩方、そして同級生と後輩のみんなには、本当に感謝しています。ありがとうございました。


【選評】
文芸部4人のキャラの書き分け、構成の工夫がしっかりできている点が高評価でした。部誌を作る過程も具体的でリアリティがあり、小説を書くことの辛さと楽しさが上手に描かれていました。

なぜ書くのか? 何を書くのか? 小説の力って? 

もがき苦しんで自分なりの答えを見つけていく主人公に感情移入して、思わず応援したくなります。とても力量を感じる作品です。
佳作受賞『親友ごっこ』 みつま

【受賞コメント】
この度は私の作品を佳作に選んでいただきありがとうございます。

私はもえぎ桃さんのトモダチデスゲームという小説が大好きで私もそんな物語を書いてみたいと思い応募しました。去年は2次選考で落ちてしまったので、今年は2次選考を突破することが目標でした。

まさか賞が取れると思っていなかったので本当に嬉しかったです。また来年も頑張りたいと思います。


【選評】
主人公が置かれた絶望的な状況には、リアルな壮絶さを感じました。それを「親友を選ぶゲーム」で救っていくという設定は工夫があり、とてもユニーク。

最後まで誰が本物の親友なのかわからない展開で、緊張感を切らさずに読み進められる作品になっています。お話が進行していく中で、登場人物みんなが変化していく点もよかったです。思いがけないラストが鮮やかでした。
佳作受賞『大江戸フェニックス』 本ノ虫

【受賞コメント】
この度はありがとうございます。小さい頃からたくさん読んでいた「青い鳥文庫」、その「小説賞」の「佳作」に選んでいただけてとてもうれしいです。

今は先が見えない時代だと言われますが、みんなが「キュン」としたり「楽しい気分」になってくれたらと思って書きました。

小説はとても面白いです。読んでいる間は物語の世界にどっぷりと浸かることができ、読み終わった後には楽しさと満足感があふれます。「青い鳥文庫」の小説の数々がみんなの喜びや幸せとなっているように、私の小説もみんなの心の支えとなることができればうれしいです。

これからもみんなが「キュン」としたり「楽しい気分」になれる小説を書いていきたいと思います。どうぞ宜しくお願いいたします。本当にありがとうございます。


【選評】
シーンから始まる冒頭は、テンポのいい地の文と短いセリフが効果的で、物語の世界にぐいっと引き込んでくれます。読み手に映像を思い浮かばせる力があり、語彙も豊富で、江戸時代設定でも違和感がないのがすごい!

とても読みやすい文章で、言葉のリズムが心地よかったです。「妖」という存在を通して、人間の光と闇、恋愛要素をからめて独自の世界を描こうとしている意欲的な作品でした。次は、現代を舞台にした作品も読んでみたいです。
佳作受賞『神頼みはほどほどに』 鈴鹿ことり

【受賞コメント】
二次審査を通過した時にもう満足していたので、受賞のお知らせを聞いてびっくりして、その後からすごくうれしくなりました。

もともと本を読むことも小説を書くことも大好きで、小説を書いたらクラスの友達に読んでもらっていました。いつも本の話で盛り上がる友達も小説を書いていることを知って、学校からの帰り道におたがいの物語について話したり、小説の進み具合を励ましあったりしていました。一度書き始めるとどんどんアイデアが浮かんできて、手が頭に追いつかないくらい書くのがとまりませんでした。

一緒に書いてくれた友達や、いつも小説を読んで応援してくれる友達、この小説を初めに読んで「おもしろい!」と言ってくれたお母さん、そしてこの長い小説を読み通して選んでくださった審査員の方々に感謝したいです。本当にありがとうございました。


【選評】
「願いをかなえられないと神様がふて寝して、邪神になってしまう。」というオリジナリティのある設定が楽しい作品でした。

友だちとの付き合い方や学校生活、登場人物たちそれぞれの悩みがリアルで説得力があります。かといって重くなりすぎず、明るさとユーモアがあるのがいいですね。

キャラの書き分けがよくできていて、主人公はもちろん、ふて寝してしまった弁財天もキュートです。光が差し込むような結末も評価につながりました。

編集部より講評

第8回青い鳥文庫小説賞にたくさんのご応募をいただきありがとうございました! 

今回は編集部満場一致で『謎解きはポップコーンと共に』が大賞となりました。受賞された大塚和々さん、おめでとうございます! 大塚さんは昨年の第7回青い鳥文庫小説賞のU-15部門にも応募してくれていましたが、この1年で大きな成長を感じさせてくれました。

児童書らしい再生と成長をテーマに据えつつ、主人公と叔父である探偵の魅力的なキャラクター、そして読み手を唸らせる仕掛けの妙など、エンタメ性の観点でも編集部員の評価が高く、いまの児童にもかつて児童書を読んでいた大人にもぜひ読んでほしい作品でした。

銀賞受賞の『ひまわり色の読書録』は、主人公と相棒のキャラクターが好評でした。やや荒唐無稽な展開もありましたが、そこには読み手を引き込む確かなパワーも。ケレン味ある文章も読ませられ、作者の確かな筆力を感じさせられました。

受賞には至りませんでしたが、『夢色学園 アニマル科!』『ニセモノカップル、始めました。』の2作は平易な文章でとても主人公の心情が追いやすく、『リアル謎解きゲーム』は扱っているクイズネタの豊富さを楽しめました。次作を楽しみにしています。

U-15部門では4作が佳作受賞となりました。『親友と文芸部』は書き手の実直さがとても良く出ている作品で胸を打たれる描写が好評でした。『親友ごっこ』はゲーム性ある設定を楽しませながらも、思春期特有の痛みや切なさに向き合っていました。

『神頼みはほどほどに』は粗削りながらもエネルギーの高さが◎、ぜひ構成面も今後磨いてほしいです。『大江戸フェニックス』は五感に訴えてくる言葉選びが秀逸で、今後の成長に期待です。

まずは自分が楽しんで書くことを大事にしながら、ぜひ読者の感情を大きく揺り動かして楽しんでもらえるような作品づくりを意識してみてください。