第65回 講談社児童文学新人賞 選考経過報告

講談社児童文学新人賞が決定いたしました

経過報告(2024/8/2更新)

◆第二次選考の通過者を発表!  

今年2024年で65回を迎えた児童文学新人賞に、522作品のご応募をいただきました。バラエティに富んだ、個性あふれる作品の数々をご応募くださったみなさまに、心からお礼申し上げます。

このたび、第二次選考に残った25作品をご報告いたします。どの作品も力作揃いです。7月末に最終候補作をこのページで発表いたします。また、今年の最終選考は、8月末に行います。

今年度(2024年度)の栄冠はどの作品に輝くのか? どうぞ、ご期待ください。

『土着した守護神』森田愛珠
『箸(ツー)』宮良漁大
『四人の百日紅』花梨崎ともみ
『刻詠みと夕顔』筒藤純
『二人の時間旅』甲斐未侑
『夏の弟』若杉はるな
『ちかみち』伊東葎花
『バッテンガール』Yohクモハ
『宇宙人はカフェにいる!』笹実時生     
『ドリーマーズ~夢世界との出会い~』荒井遊心
『古手屋てまり 長崎出島と紅い石』荒川衣歩      
『ブルーヴォイジャーズ』井上数樹
『さよなら、さんかく』棟方香吏
『BUZZ(バズ)』日奈多黄菜
『ルビー色の夕陽の下で』みやぐにみか
『サメの映画を撮ろうぜ!』狐島あきひろ
『せんちめんたるサーフトリップ』逢坂くだる
『Let's go 1型人生』好美松
『君の声を聞かせて』月星つばめ
『トビウオはにげるためにとぶんじゃない』庭野るう子
『第二図書館の帰り花』たけしたのあ
『この世界八百三十二年』柳暝放飛
『瞬きの舟人』入澤亜希
『もしもサイコロのことなんて忘れられたら』蓮水碧
『ヌーヌーのしっぽ』さかもとひとみ
(順不同)

◆最終選考の通過者を発表!

このたび、最終選考に進んだ5作をご報告いたします。
最終選考結果は、9月上旬に発表いたします。どうぞ、ご期待ください。

『古手屋てまり 長崎出島と紅い石』荒川衣歩
『さよなら、さんかく』棟方香吏
『BUZZ(バズ)』日奈多黄菜
『Let's go 1型人生』好美松
『トビウオはにげるために飛ぶんじゃない』庭野るう子
(順不同)

受賞作品決定!(2024/9/2更新)

本年度の児童文学新人賞にご応募いただいた522作品につきまして、一次・二次選考を経て、8月28日に行われた最終選考会で、最終候補作5作品の中から慎重な審議の結果、次のように入選作が決定いたしましたのでお知らせいたします。

◆新人賞
正賞 賞状・記念品 / 副賞 50万円・単行本として刊行

『古手屋てまり 長崎出島と紅い石』
荒川 衣歩 (あらかわ いほ) 


◆佳作
正賞  賞状 / 副賞  20万円

該当なし

受賞作のあらすじと作者プロフィール

受賞者のプロフィールと作品のあらすじは以下の通りです。

◆新人賞
『古手屋てまり 長崎出島と紅い石』
<ジャンル:少年少女小説>
【筆名】
荒川 衣歩 (あらかわ いほ) 


【プロフィール】
福岡県久留米市出身、在住。
西南学院大学法学部卒業。現在は事務職員。
第29回新美南吉童話賞特別賞受賞。
第20回童話・絵本・デジタル絵本創作コンテスト厚生労働大臣賞・読み聞かせ大賞受賞。

【あらすじ】
時は江戸末期。古手屋(古着屋)の娘・てまりは、裁縫が得意な十三歳。
彼女は、日本唯一の対外貿易港だった長崎で、遠い世界に憧れを募らせ暮らしていた。
そんなある日、店に古いはんてんが持ち込まれ、翌日には売れてしまうということがあった。
売り手も買い手も一見客。
しかも派手で雑な継布があててあるという珍品だ。奇妙に思ったてまりだったが……。

審査員の先生方の選評(五十音順)

安東みきえ先生

『古手屋てまり 長崎出島と紅い石』は児童文学には珍しい捕り物帖で、長崎出島の史実も織り交ぜた楽しくバランスに優れた作品。新人賞は選者全員一致ですんなり決まった。
一方、異例の長時間審議になったのが『さよなら、さんかく』。若年層の妊娠を扱った意欲作で、瑕疵は多いものの日本の性教育に一石を投じる意義はある。諦めることなくこの問題への再度の挑戦を作者には望みたい。
『BUZZ』は商店街復興の奮闘記。子どもたちの居場所は学校だけではないと気づかせてくれるが、結末がやや安易だった。
『Let’s go 1型人生』では糖尿病の子の日常のリアルさは評価できた。ただ物語性が脆弱で類型的だ。
『トビウオはにげるために飛ぶんじゃない』は今応募では稀な小学生の話に期待した。が、自閉症児を主人公の引き立て役としてのみ登場させたことは看過できない。登場人物それぞれが、血の通った人間として物語世界の中で生きていることを忘れずに描いてほしい。

如月かずさ先生

『古手屋てまり 長崎出島と紅い石』は、江戸時代の長崎の情景や人々の暮らしが自然に伝わってきて、時代小説をあまり読まない私でも夢中になれました。登場人物にはいきいきとした魅力があり、おしゃれやスイーツといった現代でも人気の要素をうまく散りばめることで、江戸時代の物語と登場人物に親近感を持たせる工夫も見事でした。
『さよなら、さんかく』は視点がころころ変わるせいで、主人公の姿が見えづらくなっているように感じました。伝えたいことがあるのはわかるのですが、主人公をしっかり描くこと、なにより魅力的な物語をつくることを、もっと意識したほうがいいのではないでしょうか。
『BUZZ』は商店街の再生を中学生のアイデアだけで進め、とんとん拍子で成功していく展開に現実味がありませんでした。感動的な展開や印象的な科白を意識しすぎたせいか、登場人物の言動が不自然で説得力に欠けると感じることもしばしばありました。
『Let's go 1型人生』はテーマが斬新で、主人公の病気との向きあいかたは、病気や障がいを抱える読者の力となるのではないか、とも感じました。しかし重要人物である主人公の母親の造形や、後半のエピソードに難があり、賞に推すことはできませんでした。
『トビウオはにげるために飛ぶんじゃない』は物語の筋がぼんやりしていて内容が薄いように感じられるのが残念でした。文章は丁寧で作品世界の空気感も魅力的でしたので、次の作品に期待しています。

村上しいこ先生

『古手屋てまり 長崎出島と紅い石』
描写がていねいで、世界感がとてもよく伝わってきた。ただ外国をこの目で見てみたいという欲求が、自分の作ったバッグが外国で使われることでチャラになるのか。捕り物に徹して周囲の人間の成長を描いてはどうか。
『さよなら、さんかく』
中三で妊娠という、トピックス的な興味だけで読むべき所がなかった。男性も女性も皆冷静で、人間の本能がもたらす悲劇や喜劇をもっと見たかった。いっそのこと出産してそれでも高校へ進学するとか挑戦してほしい。
『BUZZ』
大阪が舞台の割に、関西弁が弱いし笑いもないし、結局は種明かし小説になってしまって、共感しながら読み進められない。過去の挑戦的な生き方から今の魚屋さんや、駄菓子屋さんの姿が私の中で一致しなくて困った。
『Let’s go 1型人生』
最後に地震を使ったところで、白けてしまった。あっ、逃げたなって感じ。どうせ地震を使うならもっとど真ん中に持ってきて、私が居ても立ってもいられなく探しに行く方が、推し活で学校休んで行くより説得力がある。
『トビウオはにげるために飛ぶんじゃない』
とても綺麗でサラッと読めるけど、結局トビウオもイメージだけ。世の中が合理的配慮に満ちてきたせいか、対立も理解もとても浅いところでまとめられてしまうので何も残らない。登場人物が眼前に立ち上がってこない。 

講談社児童文学新人賞 既刊

児童文学新人賞を受賞した作品は、佳作も含めて改稿ののち、刊行中です。(左右にスライドすると他作品をご覧いただけます)

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