物語に込められた「視覚支援」のヒント
――新刊『ふたりでおでかけ』の中には、言葉だけではなく「イラストを描いて伝える」という場面が登場します。これは実際の支援現場でも使われている工夫だそうですね。
福田:そうです。「視覚支援」というコミュニケーションの方法を描いています。「伝わらない」と諦めてしまうのではなく、ある方法がダメでも、別の方法なら意思疎通ができることを知ってほしかったのです。
そしてこの「視覚支援」という方法は、障がいのある子だけでなく、日本語が分からない外国人の方などとのコミュニケーションにも使えるユニバーサルな技術でもあります。
城:視覚支援の大切さは、妹を見ていても実感します。言葉だけではイメージしづらくても、イラストや写真、文字などの視覚的なツールを使うと、格段に理解しやすくなることは多々あります。
実は私の妹は、今でも朝起きたらその日のスケジュールを自分で手書きで紙に書いているんです。「ここで作業をして、ここで休憩して、終わったらコンビニに行って……」などと書くことで、落ち着いて行動できています。これをしないと不安になって、「次は何をするのか」を何度も聞いてくるのです。
――家庭や日常のコミュニケーションで、読者の方が参考にできるアドバイスはありますか?
城:街中や家庭で障がいのある子がパニックを起こしてしまうと、周りは「なんとか静かにさせなきゃ」と思いがちですよね。でも大切なのは、泣きやませることよりも「そのパニックの背景に何があるのか」を考え直してみることです。
もし、「次に何をするかが分からなくて不安なのかな?」と気がついたら、「次はこれだよ」と視覚的に伝えてあげると、すっと落ち着く場合もあります。気持ちに寄り添って理由を探してあげることが、解決の大きな糸口になります。
「最初の一歩」を温かく見守り、支えられる社会へ
――最後に、読者の皆さんへメッセージをお願いします。
福田:童話『ふたりでおでかけ』が、障がいのあるお子さんやご家族と、それを見守る社会とをつなぐ架け橋になればと思っています。当事者のご家族にとっては「街に出るのは怖いけれど、出てみたら案外うまくいくこともあるよね」と思える、ひとつのお守りのような存在になってくれたら嬉しいです。
この物語は、子どもたちが親に内緒で初めてのお出かけに挑戦する物語ですが、挑戦には失敗がつきもの。「こんなふうに親に内緒で弟を連れ出したらダメじゃないか!」とおっしゃる方ももちろんいると思うのですが、これは「最初の1回目」なのです。
2回目からは、この子たちはもっと安全な、正しい方法をとるでしょう。だからこそその「最初の1回」は温かく見守られる社会であってほしい。多様性を認め合い、優しく包み込めるような社会になるきっかけになれば嬉しく思います。
城:兄弟姉妹のあり方に正解はありません。自分自身の道を自分で決めて軸を持っていれば、大人になったときに1対1の対等な人間として向き合えるようになります。
この絵本を通して、障がいを抱える人とその家族が、「一緒に楽しいことをやろう」と前向きに外へ出ていけるようになってくれたらと願っています。
私自身、母に勧められて読んだ福田先生のデビュー作『熱風』をはじめ、先生のご著作をたくさん読んできましたが、特に『たぶんみんなは知らないこと』という作品には深く感動しました。当時、たまたま仕事で小笠原諸島に行く機会があったのですが、現地の方たちにも読んでほしくて、思わず小笠原の図書館に寄贈してしまったほどです(笑)。
本作品や先生の絵本を通して、障がいを抱える人たちやご家族への理解が深まり、みんなでともに優しい世界をつくっていけたら嬉しいですね。
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【プロフィール】
城日菜子(じょう・ひなこ)
作業療法士。1996年12月31日生まれ。長崎大学医学部保健学科作業療法学専攻卒業。TASUC横浜教室 教室長。
福田隆浩(ふくだ・たかひろ)
作家。2007年『熱風』(講談社)で第48回講談社児童文学新人賞佳作受賞。『香菜とななつの秘密』が2018年度厚生労働省社会保障審議会推薦児童福祉文化財に、『たぶんみんなは知らないこと』が第60回野間児童文芸賞(2022年)に選ばれる。その他、『さよならミイラ男』『くすのき学級の魔女』(以上、講談社)などの作品がある。
【内容】しっかり者のお姉ちゃんと、特別支援学校に通う弟くんのふたり旅……。世間からは、「たいへんそう」「かわいそう」と、不安の声があがるかもしれません。
けれど、愛情あふれる工夫と、出会う人たちのやさしさが、ふたりの旅をそっと支えてくれます。
ドキドキハラハラ、そして、たくさんの笑顔がつまった『おでかけ』ストーリー。
【関連書籍】



小川 聖子
東京都出身。アパレル系企業に勤務したのちライターに。雑誌やWeb系メディアにてファッション関連記事や人物インタビュー、読み物記事の構成や執筆を行う。長男はついに成人、次男は中学生に。1日の終わりに飲むハイボールが毎日の楽しみ。
東京都出身。アパレル系企業に勤務したのちライターに。雑誌やWeb系メディアにてファッション関連記事や人物インタビュー、読み物記事の構成や執筆を行う。長男はついに成人、次男は中学生に。1日の終わりに飲むハイボールが毎日の楽しみ。


































福田 隆浩
1963年、佐賀県唐津市生まれ。兵庫教育大学大学院修了。2003年『この素晴らしき世界に生まれて』(小峰書店)で第2回日本児童文学者協会長編児童文学新人賞、2007年『熱風』(講談社)で第48回講談社児童文学新人賞佳作受賞。2012年『ひみつ』が第50回野間児童文芸賞最終候補作に、『ふたり』が2014年度青少年読書感想文全国コンクール課題図書に、『幽霊魚』が2016年度読書感想画中央コンクール指定図書に、『香菜とななつの秘密』(以上、講談社)が2018年度厚生労働省社会保障審議会推薦児童福祉文化財に選ばれる。その他、「おなべの妖精一家」シリーズ、『手紙 ─ふたりの奇跡─』(以上、講談社)などの作品がある。
1963年、佐賀県唐津市生まれ。兵庫教育大学大学院修了。2003年『この素晴らしき世界に生まれて』(小峰書店)で第2回日本児童文学者協会長編児童文学新人賞、2007年『熱風』(講談社)で第48回講談社児童文学新人賞佳作受賞。2012年『ひみつ』が第50回野間児童文芸賞最終候補作に、『ふたり』が2014年度青少年読書感想文全国コンクール課題図書に、『幽霊魚』が2016年度読書感想画中央コンクール指定図書に、『香菜とななつの秘密』(以上、講談社)が2018年度厚生労働省社会保障審議会推薦児童福祉文化財に選ばれる。その他、「おなべの妖精一家」シリーズ、『手紙 ─ふたりの奇跡─』(以上、講談社)などの作品がある。