「仕事は“絵本の魅力を伝えること”」『第1回 読者と選ぶ あたらしい絵本大賞』特別審査員・ 磯崎園子(絵本ナビ編集長)〔前編〕

絵本ナビ編集長・磯崎園子さんのメッセージ

磯崎 子どものころに読んでいた絵本が今もまだ売れ続けている。親、子、孫の3世代にわたって愛され続けている絵本がある。そういった「ロングセラー絵本」の存在感の大きさこそ、このジャンルの特徴だと言えますよね。ロングセラー絵本に共通しているのは、時代が変化しても変わることのない普遍的な感覚が描かれているということ。何年たっても記憶に残るような印象的な場面があること。どの絵本にも長く愛され続ける理由があるんだと思います。だからこそ、絵本ナビではロングセラー絵本の紹介も大切にしています。

一方で、それらの絵本の中にだって、発売された当時は「こんな絵本見たことがない!」とか、「絵本らしくない」など、多くの大人に散々なことを言われてきた作品もあったはずです。

──確かにそうかもしれないですね。

磯崎 だからこそ、私たちはロングセラー絵本と同じくらい新しい絵本を大切に扱っていきたいと思っています。

絵本ナビでは、寄せられたレビューの評価や数、販売実績など絵本ナビ独自のロジックで算出された人気作品上位1000作品を「プラチナブック」として、3ヵ月に一度選書会議を行い、毎月発売される新作絵本の中から「次のプラチナブック」として自信を持って推薦する作品を、「NEXTプラチナブック」として紹介しています。今目の前にあるこの新しい絵本が、この先何十年も子どもたちに読まれ続けるかもしれない……そう思うと、本当にワクワクしますよね。

絵本ナビの企画「編集長・磯崎が新作絵本を推薦!【NEXTプラチナブック】」

──そんなふうにたくさんの絵本を読んでいる磯崎編集長が、記憶に残っている絵本、印象に残っている絵本は何でしょうか?

磯崎 実はこの質問が一番難しいですよね(笑)。普段、いろいろな方に聞いちゃっていますけど。子どものころに読んで、大人になった今も私の感覚に大きな影響を与えているんじゃないかと思っているのは『11ぴきのねことあほうどり』かもしれません。欲が深く、飽きっぽく、でも面白そうなことには目を光らせてしまうねこたちの飄々とした姿は、当時も今も「しっくりくる」としか言いようがないくらい大好きです。この絵本を息子に読んだときも、ひっくりかえって笑ってくれていたので「さすが私の息子」と頼もしく思ったものです。

『11ぴきのねことあほうどり』 作:馬場 のぼる、こぐま社
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