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我が子が戦場に立つ日が来たら『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』が伝える知られざる真実

戦火が絶えない今こそ必要な物語

▲映画『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』はヴェネチア国際映画祭(第83回)コンペティション部門への正式出品、トロント国際映画祭(第51回)スペシャル・プレゼンテーション部門への正式出品が決定、世界で注目を集めている©Mr. Nelson, Did You Kill People? Film Partners ©Allen Nelson/KODANSHA
▲映画『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』はヴェネチア国際映画祭(第83回)コンペティション部門への正式出品、トロント国際映画祭(第51回)スペシャル・プレゼンテーション部門への正式出品が決定、世界で注目を集めている ©Mr. Nelson, Did You Kill People? Film Partners ©Allen Nelson/KODANSHA
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もし今、戦争になったら? 自分や我が子が、戦場に行くことになったら? 

「戦争に行くと何が起こるのか」をリアルに教えてくれるのが、9月11日公開の映画『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』です。

原作は2003年に出版された同名の児童書。著者は、18歳でベトナム戦争に従軍したアフリカ系アメリカ人アレン・ネルソンさんです。本には、実際に戦場を体験した「加害者」としての、葛藤や痛みが赤裸々につづられています。

この作品に大きな衝撃を受け、7年の歳月をかけて映画化を実現したのが、監督・俳優として国内外で高く評価される塚本晋也さんです。

「幼いころ、『はだしのゲン』を読んで戦争の恐ろしさを知った」という塚本監督が、「加虐の恐ろしさ」に正面から向き合い完成させた今作は、「戦争の悲惨さや平和の大切さ」を考える親子にぜひ見てほしい作品です。

ここでは映画とともに、もともとは児童書だった原作にスポットを当ててご紹介します。

ネルソンさんを変えた「運命的な質問」

映画『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』より ©Mr. Nelson, Did You Kill People? Film Partners ©Allen Nelson/KODANSHA

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〈ストーリー〉貧困や差別から抜け出すために18歳で入隊したアフリカ系アメリカ人のアレン・ネルソン。ベトナムという苛烈な戦地で学んだのはただひとつ、いかに多くの人を殺せるか。その対価として得たのは、ごくわずかな賃金とPTSD(心的外傷後ストレス障害)だけだった。23歳で家を追い出され、ホームレスとなったアレンをこの世につなぎ止めたのは、退役軍人病院でカウンセリングを行っていたダニエルズ医師の存在だった。
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物語は、ベトナム戦争から帰還した青年アレン・ネルソンが、教師をしている同級生に頼まれ、小学校でベトナム戦争について話すところから始まります。

戦争によるPTSD(心的外傷後ストレス障害)を抱え、家族との折り合いが悪くなっていた当時のアレンは、家を追い出されホームレスのような生活をしていました。

気乗りしないまま依頼を渋々と引き受けたアレンは、子どもたちに一般論的な戦争体験を語ります。しかし、当たり障りのない話でその場が終わりそうになったとき、ひとりの少女がアレンに質問を投げかけました。

「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?」

少女の純粋な問いに、アレンは思わず言葉を失い、打ちのめされてしまいます。

しかしこの問いが、彼が自らの過去と向き合い、どん底の生活から抜け出すための大きなきっかけにもなったのです。

母にも拒絶され…戦争が変えてしまうもの

アレン・ネルソンは1947年、ニューヨーク州ブルックリンの貧しい家に生まれました。

満足に身繕いもできない貧困、そして、アフリカ系アメリカ人に対する人種差別に耐えかね、18歳で海兵隊に入隊します。

ここなら十分な食事と衣服、国を守る職業としての「敬意」が得られると思ったからです。しかし教え込まれたのは、上官への「絶対服従」と「殺人の方法」でした。

映画『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』より ©Mr. Nelson, Did You Kill People? Film Partners ©Allen Nelson/KODANSHA

もとは陽気で家族思いの青年だったアレンも、軍隊の訓練で「殺人兵器」となるよう思考を書き換えられ、​一度戦場という環境に置かれると、「殺人をなんとも思わなくなる」精神状態に変わってしまいます。

アレンが戦地から一時帰国したとき、息子をひと目見た母親が「私の子どもではない」と拒絶するシーンは、戦争によって変わってしまった人間が味わう悲しみや苦しみをリアルに物語っています。

「なぜ、わたしたちを殺すのか?」ベトコン青年の言葉

母親には拒絶されたアレンでしたが、戦地ではアレンが「殺人兵器」の状態から人間の心を取り戻し、「ここから離れよう」と決心するきっかけとなる出来事も起こりました。

戦場の極限状態の中で体験した出来事――ベトコン※の青年が投げかけた言葉、防空壕で目撃した衝撃的な光景が、アレンの価値観を根本から揺さぶることになります。

「アジア人には魂がない。いくら殺しても罪にならない」と教え込まれたアレンが、「そうではない。彼らもまた同じ人間なのだ」と実感させられていくのです。

その後、カウンセラーのダニエルズ医師とともに、自らの過去に向き合っていく道のりは、とても険しいものでしたが、アレンは決して目を背けませんでした。

※南ベトナム解放民族戦線:ベトナム戦争期に南ベトナムで活動した共産主義のゲリラ組織

▲23年前に児童向けの単行本(ハードカバー)で刊行された『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』(左)、現在は文庫本(右)として刊行されている
▲23年前に児童向けの単行本(ハードカバー)で刊行された『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』(左)、現在は文庫本(右)として刊行されている

原作ではアレン自身の過酷な戦場体験が、時系列で丁寧に綴られています。いっぽう映画では、ダニエルズ医師との対話を通して過去を振り返る「回想形式」で描かれていきます。

カウンセリングを通して内面を深掘りしていく映画のドラマ性と、子どもの目線に合わせて事実をまっすぐに伝える原作の読みやすさ。アプローチは異なりますが、どちらも「戦争の恐ろしさを伝える」という切実な思いに満ちています。

自らの罪に向き合い 平和活動を続けたアレン

アレンが患っていたのは、当時はまだあまり知られていなかった「PTSD(心的外傷後ストレス障害)」という症状でした。

戦争の後遺症により、小さな物音など些細なことが強い刺激になったり、ときには家族に向けられる抑えきれない暴力となってアレンを苦しめました。この重い精神の病は、20年以上にわたる治療を経ても完治することはなかったといいます。

©Mr. Nelson, Did You Kill People? Film Partners ©Allen Nelson/KODANSHA
映画『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』より ©Mr. Nelson, Did You Kill People? Film Partners ©Allen Nelson/KODANSHA

自身の過去と深く向き合うなか、アレンは1995年に沖縄で起きた暴行事件に衝撃を受け、1996年には30年ぶりに沖縄に来日。

その後は日本各地で1200回以上の講演を行い、戦争の現実や悲惨さ、無意味さを伝えてきました。

2005年にはベトナムの地にも降り立ち、告白と謝罪の講演を行ったアレンは、2009年に枯葉剤の影響による多発性骨髄腫のため61歳でこの世を去りました。

タイトルに込めた思いと、ネルソンさんの歌

『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』が刊行された当時のことを、23年前にこの本の制作を担当をした編集者に聞きました。

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なぜこのタイトルになったのか?

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