2025年に、日本は戦後80年をむかえました。しかし世界では今も、各地で争いが絶えません。
過去の戦争を知り、日本と世界に目を向け、平和について考えることが、これまで以上に必要になる──そんな今だからこそ、子どもたちへ伝えたい「戦争と平和」をテーマにした講談社の児童書を集めました。
「広島・長崎」「沖縄」「現代から考える平和」「日本国憲法・第九条」「世界の戦争と平和」など、テーマごとに作品を紹介。「窓ぎわのトットちゃん」や「かこさとしさんが伝える戦争」、そして「ムーミン」シリーズなどの名作と、その背景にある戦争と平和についても解説。
あなたの読みたい作品・次の世代へ伝えたい作品が、きっとみつかるはず。
1945年8月6日に広島、8月9日に長崎へ原子爆弾が投下され、多くの犠牲者が出ました。人類史上初めての原子爆弾使用であり、爆心地は壊滅的な被害を受け、市街は焼け野原となりました。
原爆が投下された当時の広島・長崎と、そこで生き、亡くなっていった人たちのことを伝える物語を紹介します。
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第二次世界大戦末期、沖縄では日米両軍によって、激しい地上戦が繰り広げられました。
沖縄戦による甚大な被害の実態を伝える作品や、懸命に戦った女子学徒隊「ひめゆり学徒隊」の物語を紹介します。
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戦争の苦しみは、子どもたちに大きな影響を与えます。空襲、疎開、そして、親との別れ──。
東京大空襲を生き延びた子どもや、戦災孤児の物語、そして、戦時中の動物たちや建造物の物語を紹介します。
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戦争とは何か、平和とは何か。子どもが手に取りやすい詩の絵本、現代の人気作家による小説や漫画、戦争体験者や著名人による証言をもとにしたノンフィクションなど、さまざまな視点で「戦争と平和」を伝える本を紹介します。
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平和憲法の精神を表している「前文」と「第九条」を、子どもにも読める言葉に「翻訳」し、憲法の内容を心で感じられる作品と、「日本国憲法」を人間に見立ててユーモラスに描き、その大切さを訴える作品を紹介します。
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世界に目を向けると、今このときも、多くの子どもや大人が命の危機にさらされている地域があります。
海外の作家による「戦争と平和」をテーマにした作品や、世界各地で起きた戦争・紛争をとりあげた作品を紹介します。
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日本の戦後最大のベストセラー『窓ぎわのトットちゃん』。世界中で翻訳され、アニメ映画にもなり、多くの読者に愛されていますが、この作品が〈戦争をえがいた本〉だということは、意外にもあまり知られていません。
◆トットちゃんと戦争のお話◆
『窓ぎわのトットちゃん』は、黒柳徹子さんが、ご自身が学んだトモエ学園を描いた自伝的物語。
「君は、ほんとうは、いい子なんだよ」と言い続けてくれた校長の小林先生、ユニークな授業、友だちとの交流など、楽しく感動的なエピソードがつづられています。
戦争の足音が聞こえてくるのは、物語の後半です。
学校からの帰り、トットちゃんは毎日家の下車駅ではない大岡山駅で降り、キャラメルの自動販売機にお金を入れてみるのですが、キャラメルは出てきません。物資が少なくなっていたからです。
また、ある日家に帰ると、トットちゃんが家族のように大切にしていた飼い犬のロッキーがいなくなっていました。それも戦争によるものだったとのちにトットちゃんは知るのです。
そして、大好きなトモエ学園は──。
戦中の子どもだったトットちゃん。その生活も、静かに描かれています。
◆作品について詳しく見る◆
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『からすのパンやさん』や『だるまちゃんとてんぐちゃん』などで知られる、絵本作家のかこさとしさん。2018年に92歳で亡くなるまで、日本中の子どもたちに読み継がれる名作を数多く残しました。
そんなかこさんが、戦争を伝えるために遺した幻の作品が、絵本『秋』と『くらげのパポちゃん』です。
かこさとしさんの長女で、加古総合研究所の鈴木万里さんが、作品整理中に見つけた未発表作品を絵本化。
この作品の最初の原稿執筆が1953年、なんと構想から実に、半世紀以上を経て初めて世に出るオリジナル作品です。
テーマは、かこさんが終生、憎んでいた「戦争」です。太平洋戦争のとき、高校生だったかこさんが体験した実話です。
戦争の悲惨さに怒り震えるかこさんが、いつまでも忘れないようにと子どもたちに伝えようとした作品です。平和を願うかこさんの強い思いが込められています。
子どもたちの未来を考えるすべての皆さんに、天国のかこさんからの贈り物です。
『くらげのパポちゃん』の原稿も、鈴木万里さんが自宅で古い原稿を整理していたとき偶然に発見されたもの。絵本作家としてデビューする前の、1950~55年ごろに書かれているものでした。
見つかったのは原稿のみで、絵はついていませんでしたが、かこさんの孫である中島加名さんが遺志を継ぎ、絵を描きました。
『くらげのパポちゃん』に描かれているのは、戦争を二度と起こしてはならないというかこさんの強い思いです。
2025年は、終戦から80年にあたります。しかし、世界を見渡せば、この瞬間にも戦争が継続しており、多くの人々が命を落としています。
「戦争経験を語り継ぐ」「平和への想いをつなぐ」ことが重要なテーマとなっている今だからこそ、多くの人に伝えたい絵本です。
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◆トーベと戦争、ムーミンの誕生◆
トーベ・ヤンソンは1914年8月9日、フィンランドの首都ヘルシンキ生まれ。父は彫刻家、母はグラフィックアーティストという芸術一家に育ちました。幼いころから芸術の才能を開花させていたトーベが画業のキャリアをスタートしたのは、なんと14歳のときでした。
1939年に第二次世界大戦がはじまり、トーベの母国フィンランドは、ソ連の侵攻により戦争に巻き込まれていきます。
戦争に強く反対していたトーベは、15歳から作品を寄稿していた政治風刺雑誌「ガルム」で、独裁者を痛烈に風刺するイラストを描くようになりました。
トーベは風刺画を発表する際、実名を隠しませんでした。そして署名の横には、しばしば「鼻の長い生きもの」が描かれるようになります。
トーベがムーミンの物語を書きはじめたのは、その第二次世界大戦のさなか。トーベは「ムーミン」の小説誕生のきっかけを、次のように明かしています。
「1939年、戦争の冬のことです。仕事はぱたりといきづまり、絵を描こうとしてもしかたがないと感じていました。
『むかしむかし、あるところに』で始まるなにかを書こうと思ったのも、わからないではありません。(中略)でも、なんだかもうしわけない気がしたので、王子さまや、王女さまや、小さな子どもたちを登場させることはやめて、風刺画を描くときサインがわりに使っていた、怒った顔をした生きものを主人公にして、ムーミントロールという名をつけました」
(トーベ・ヤンソン・著 冨原眞弓・訳 ムーミン全集【新版】『小さなトロールと大きな洪水』より)
ムーミンの物語は、著者のトーベ・ヤンソンが第二次世界大戦中、自身の心を慰めるために物語を書き綴ったことからはじまりました。
困難なときにこそ心の支えとなるこの物語は、世界が揺れ動いている今こそ、人々に求められているに違いありません。
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