
【自閉症】の妹がいても「私だけ我慢している」と思わなかった理由 「きょうだい児」「家族の距離感」を作業療法士の姉が明かす
「きょうだい児」と家族のあり方【第1回】 (3/3) 1ページ目に戻る
2026.09.15
自分で選んだ「作業療法士」の道
城:私はもともと教師になりたくて、高校生のころは教育学部を目指していました。教師というのは、普通の中学校の教科担任などでも良いし、あるいは妹との関わりで知っていた支援学校の教師でも良いなと思っていて。
大学のオープンキャンパスに参加するくらいのタイミングで、母が「長崎大学には作業療法学科というのがあるよ」と教えてくれたんです。その一言で興味を持ったことが、作業療法士の道に進むきっかけになりました。
「妹に障がいがあって、作業療法士の道を選んだ」というと、「なるほどね」とどこか“妹のための美談”として捉えられがちですが、私としては「それだけではない」という思いが強くあります。
妹は確かにきっかけのひとつでしたが、今こうして7〜8年近く働き続けていられるのは、私自身この仕事を通じて子どもたちと関わることが好きになり、自分の意思で続けているから。
もし、「妹のためだけに」と仕事を選んでいたら、落ち込んだり挫折したりしたときに「妹のせいでこうなった」と思ってしまったかもしれません。それは私も嫌なんですね。
だからこそ、「これは自分で選んだ道だ」という意識を忘れずに、「自分の軸」を持っておくことは大切かと思います。私は現在、長崎の実家を離れて上京していますが、母は「あなたの好きにすればいいじゃない」と、常に私の選択や生き方を尊重し、口出しせずにいてくれました。
悩んでいる保護者や 「きょうだい児」の子どもたちへ
――作業療法士として、また「きょうだい児」の当事者として、福田隆浩先生の新作童話『ふたりでおでかけ』をどう読まれましたか。
城:福田先生とはこの機会に対談(※)もさせていただきましたが、『ふたりでおでかけ』を読んで少しでも前向きになれる方や家族がいたら素敵だな、と思いました。
(※後編記事:作家・福田隆浩と作業療法士・城日菜子さんの対談)
この本ではいわゆる障がいを持つ人たちのための「視覚支援(※言葉だけでなく絵や写真、文字、実物などを使って、見て分かる形で情報を伝える支援方法)」について伝えています。
「視覚支援」は有効な方法ですが、まだまだポピュラーではありませんし、やれば必ず成功するという方法でもありません。それでも、失敗を繰り返す中に成功はある。失敗を取り上げるより、成功をとりあげた方が前向きになれますよね。
もちろん努力は必要ですが、それでも成功したときは、この本のようにとっても素敵な気持ちになれるのです。
だから、これを読んで「外に出ようかな、挑戦してみようかな」と思ってくださる方がひとりでもいたら嬉しいです。
城:そして、今「きょうだい児」である子どもたちに伝えたいのは、兄弟姉妹のあり方に「正解はない」ということ。仲良くしてもいいし、うまく理解できなくて距離を置くならそれでもいいのです。
大切なのは、「自分で決めること」。血が繋がっている以上、完全に気にしないことは難しいし、「嫌だ、キライだ」と思っていても、すべての関係を断ち切るのは難しい。最終的に関係を絶ってしまう場合もありえますが、本当にそれを望んでいたかを一概には判断できない、難しい問題だと思います。
だからこそ一度、家族のためではない「自分の道」をよく考え、決めることが大切なのではないでしょうか。そうすれば大人になったとき、お互い対等な人間として付き合えるようになるのではないかと思います。
私の場合は、「自分の道」のなかに妹がいることで「あ、楽しいな」と感じられた。だからこの仕事を選んでいます。
私の役割は、関わっている子どもたちや家族と「何か楽しいこと」ができるように、少しの交通整理をしてあげること――。そんなスタンスで、これからも寄り添っていければと思っています。
全2回の1回目
2回目を読む※2026年9月●日より公開
【プロフィール】
城日菜子(じょう・ひなこ)
作業療法士。1996年12月31日生まれ。長崎大学医学部保健学科作業療法学専攻卒業。TASUC横浜教室 教室長。
福田隆浩(ふくだ・たかひろ)
作家。2007年『熱風』(講談社)で第48回講談社児童文学新人賞佳作受賞。『香菜とななつの秘密』が2018年度厚生労働省社会保障審議会推薦児童福祉文化財に、『たぶんみんなは知らないこと』が第60回野間児童文芸賞(2022年)に選ばれる。その他、『さよならミイラ男』『くすのき学級の魔女』(以上、講談社)などの作品がある。
【内容】しっかり者のお姉ちゃんと、特別支援学校に通う弟くんのふたり旅……。世間からは、「たいへんそう」「かわいそう」と、不安の声があがるかもしれません。
けれど、愛情あふれる工夫と、出会う人たちのやさしさが、ふたりの旅をそっと支えてくれます。
ドキドキハラハラ、そして、たくさんの笑顔がつまった『おでかけ』ストーリー。
【関連書籍】



小川 聖子
東京都出身。アパレル系企業に勤務したのちライターに。雑誌やWeb系メディアにてファッション関連記事や人物インタビュー、読み物記事の構成や執筆を行う。長男はついに成人、次男は中学生に。1日の終わりに飲むハイボールが毎日の楽しみ。
東京都出身。アパレル系企業に勤務したのちライターに。雑誌やWeb系メディアにてファッション関連記事や人物インタビュー、読み物記事の構成や執筆を行う。長男はついに成人、次男は中学生に。1日の終わりに飲むハイボールが毎日の楽しみ。

































福田 隆浩
1963年、佐賀県唐津市生まれ。兵庫教育大学大学院修了。2003年『この素晴らしき世界に生まれて』(小峰書店)で第2回日本児童文学者協会長編児童文学新人賞、2007年『熱風』(講談社)で第48回講談社児童文学新人賞佳作受賞。2012年『ひみつ』が第50回野間児童文芸賞最終候補作に、『ふたり』が2014年度青少年読書感想文全国コンクール課題図書に、『幽霊魚』が2016年度読書感想画中央コンクール指定図書に、『香菜とななつの秘密』(以上、講談社)が2018年度厚生労働省社会保障審議会推薦児童福祉文化財に選ばれる。その他、「おなべの妖精一家」シリーズ、『手紙 ─ふたりの奇跡─』(以上、講談社)などの作品がある。
1963年、佐賀県唐津市生まれ。兵庫教育大学大学院修了。2003年『この素晴らしき世界に生まれて』(小峰書店)で第2回日本児童文学者協会長編児童文学新人賞、2007年『熱風』(講談社)で第48回講談社児童文学新人賞佳作受賞。2012年『ひみつ』が第50回野間児童文芸賞最終候補作に、『ふたり』が2014年度青少年読書感想文全国コンクール課題図書に、『幽霊魚』が2016年度読書感想画中央コンクール指定図書に、『香菜とななつの秘密』(以上、講談社)が2018年度厚生労働省社会保障審議会推薦児童福祉文化財に選ばれる。その他、「おなべの妖精一家」シリーズ、『手紙 ─ふたりの奇跡─』(以上、講談社)などの作品がある。