子どもが絶対ハマる「はやみねかおる」 時代を超えて愛される『都会のトム&ソーヤ』の魅力とは?

出版ジャーナリスト・飯田一史がはやみねかおる作品を解説 (3/3) 1ページ目に戻る

出版ジャーナリスト:飯田 一史

はやみね作品は各時代の読者に愛され続けている

最近では、2025年に宇都宮市立図書館で講演したとき、市内の小学5・6年生が選定委員となって「友だちにすすめたい本」を選ぶ「うつのみやこども賞」のことを教えてもらいました。

約40年間の受賞作品のリストを見ていたら、はやみね作品が通算4回と最多受賞ではありませんか! さらに驚いたのが、最初の受賞年は平成12年「いつも心に好奇心」。4回目の受賞年は、平成30年「奇譚ルーム」。

なんと初回と4回目の間が約20年もあるのです。その時代、その時代の小学生にずっと推され続けてきて、しかも4回とも全て違う作品を受賞するとは、本当にすごいことです。

いつも心に好奇心! 名探偵夢水清志郎VSパソコン通信探偵団

いつも心に好奇心! 名探偵夢水清志郎VSパソコン通信探偵団

はやみね かおる(著)  松原 秀行(著)  村田 四郎(絵)  梶山 直美(絵)

発売日:2000/09/25

価格:定価:本体950円(税別)

他にも、出版社に勤める文芸の編集者から読書遍歴について聞いてみると「小学生のころは、はやみねかおるさんの『夢水清志郎』と松原秀行さんの『パスワード』直撃世代のミステリーばかり読んでいた」という人もいれば、その下の世代からは「怪盗クイーン」や「マチトム」の名前が出てきたりもします。

そして五人がいなくなる 名探偵夢水清志郎事件ノート

そして五人がいなくなる 名探偵夢水清志郎事件ノート

はやみね かおる(著)  村田 四郎(絵)

発売日:1994/02/09

価格:定価:本体1030円(税別)

年代は幅広く、さらには性別にも関係なく読まれている。ゲームやミステリーの仕掛けに特に注目して読んでいる人もいれば、クセの強いキャラクターたちの掛け合いが好きだという人もいる。はやみね作品には、間口の広さ、読者の関心を惹くフックの多さを感じます。

また、児童文学作家として史上初だという公式ファンクラブ「赤い夢学園」が2024年9月に発足しました。こちらもやはり年齢や性別問わず参加者がいると聞いています。

子どものころに読んで卒業していく人もいますが、長年にわたってずっと読み続け、語り続けられる沼の深さもある。

こうして改めてまとめていると、「はやみねかおるとは……。いったい何者なんだ、この作家は?」という気がしてきました。

「都会のトム&ソーヤ」には創也と内人をねらう「頭脳集団(プランナ)」という謎の組織が登場しますが、シリーズもののミステリー作品に出てくる黒幕のように、不可解かつ非現実的な存在に思えてきます。

将棋の藤井聡太棋士や野球の大谷翔平選手は、戦績がすごすぎて「フィクションだったら『リアリティがない』と言われる」と小説家や脚本家から冗談まじりに言われていますが、私ははやみねかおるさんもそれに近い気がします。

そんな魅惑的なはやみね世界、足を踏み入れたくてもシリーズが長いので1巻に手を付けづらいと思った人も大丈夫。「マチトム」は何巻からでも読めるように書かれています。

いきなり22巻の最新刊からでもよし! 最近だとオーディオブック版もあるので音声で1巻から聴くもよし! 興味をもったら、ぜひ手に取って読んでみてくださいね(とはいえ、やっぱりおすすめは1巻からですが……)。

文/飯田一史

【好評連載】出版ジャーナリスト・飯田一史のこの本おススメ! 過去記事はこちら

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飯田 一史
いいだ いちし

飯田 一史

Ichishi Iida
出版ジャーナリスト・ライター

青森県むつ市生まれ。中央大学法学部法律学科卒。グロービス経営大学院経営研究科経営専攻修了(MBA)。 出版社にてカルチャー誌や小説の編集に携わったのち、独立。国内外の出版産業、読書、子どもの本、マンガ、ウェブカルチャー等について取材、調査、執筆している。 JPIC読書アドバイザー養成講座講師。 電子出版制作・流通協議会 「電流協アワード」選考委員。インプレス総研『電子書籍ビジネス調査報告書』共著者。 主な著書に 『町の本屋はいかにしてつぶれてきたか』 『「若者の読書離れ」というウソ』 (平凡社)『マンガ雑誌は死んだ。で、どうなるの?』(星海社)『ウェブ小説30年史』(講談社)ほか。 ichiiida.theletter.jp

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青森県むつ市生まれ。中央大学法学部法律学科卒。グロービス経営大学院経営研究科経営専攻修了(MBA)。 出版社にてカルチャー誌や小説の編集に携わったのち、独立。国内外の出版産業、読書、子どもの本、マンガ、ウェブカルチャー等について取材、調査、執筆している。 JPIC読書アドバイザー養成講座講師。 電子出版制作・流通協議会 「電流協アワード」選考委員。インプレス総研『電子書籍ビジネス調査報告書』共著者。 主な著書に 『町の本屋はいかにしてつぶれてきたか』 『「若者の読書離れ」というウソ』 (平凡社)『マンガ雑誌は死んだ。で、どうなるの?』(星海社)『ウェブ小説30年史』(講談社)ほか。 ichiiida.theletter.jp