――涙がボロボロ? なぜだったのでしょう?
東村さん:あのときはわからなかったけれど、原画展をきっかけに『イッツ・ア・スモールワールド』をデザインしたのがメアリー・ブレアだと知って、理由がわかった気がしました。メアリーが女性として、母として作り上げた“愛”の世界に包まれた瞬間、大きな幸福を感じると同時に、世界中で起きている悲しい状況を憂いてしまったんじゃないか、と。
子どもたちで、世界の平和を願う。愛にあふれたテーマですよね。今でも『イッツ・ア・スモールワールド』は、ディズニーランドの中でいちばん感動するし、泣けてしまうアトラクションです。
「子育てをしながらの創作活動」の壮絶さ
ふたりの男の子を育てながら、数々の名作を創り上げたメアリー。東村さんもまた、仕事と子育てを両立しながら、話題作を描き続けてきました。中でも、現在は高校生という息子・ごっちゃんの育児中に描いたエッセイ漫画『ママはテンパリスト』(集英社)は、爆発的な大ヒット。今でもママたちに笑いと勇気を与える1冊として愛されています。
――子育てをしながらの創作活動、今、振り返っていかがですか?
東村さん:息子が生まれてすぐに週刊誌の連載が始まって、月刊誌の連載もあって……。人生でいちばん、しんどかった時期ですね。もう二度とあんなことはできない、<地獄の日々>でした。特に乳児のうちは寝る時間も短いので、寝ている45分の間に必死で何枚か描いて、起きたら、抱いて描く、おんぶして描く、どうにかこうにかして描く。育児って、何の裏技も抜け道もないんですよね。
――たしかに……。壮絶さが伝わってきます。
東村さん:息子が保育園に入ってからは「預けている間に描けるでしょ?」とも言われたけど、朝、保育園に預けて家に帰ってくるだけで、軽く1時間は経ってるじゃないですか。で、朝ごはんの片づけをして、すぐに原稿に向かっても、電話がリーンって鳴って「ごっちゃん、お熱出ました」と。37.5度でも帰されちゃいますからね。
で、迎えに行って、すでに2往復ですよ。疲れている上に息子がそばにいるわけだから、もう終わりですよ(笑)。ごはんも食べさせなきゃいけないし、しょっちゅう病院に行ってたし。そのすき間で仕事をしていた感じです。ごまかしごまかし、やり過ごしてましたね。
でも、そういう働くママって、いっぱいいらっしゃると思うんです。私はまだ自宅仕事だからラクだったほうで、お勤めの人はどうしてるんだろうなって思いますもん。