――創作というアウトプットをするには、インプットが必要なのかなと思うのですが、東村さんの場合はいかがでした?
東村さん:ドラマを観たり、映画館に行ったりなんてまったくできなくて。「そんな時間があるなら寝たい!」って感じで、何のインプットもせずに仕事と子育てだけの数年間でしたね。
でも、それでよかったなと。息子が保育園の年長になったらだいぶ落ち着いて、子連れで旅行ができるようになりましたし、“ノーインプット”な時期があったから、その後、何をやっても楽しくて。カラッカラに乾いたスポンジみたいに吸収が激しかったし、感受性も豊かになりましたよね。
ずっとおもしろいことをし続けていたより、意外とそういう数年間があったほうが、私の人生ではよかったのかもしれないです。
――母になったことで、変わったことはありましたか?
東村さん:独身の頃は自分のことにしか興味がなかったのに、子どもを産んでからは「みんなが幸せであってほしい」と思うようになりました。母親って「世界が平和じゃないと、うちの子も不幸になっちゃう」と、どこかで感じるんでしょうね。昔は天気が荒れるとちょっとワクワクしていたのに、息子が生まれてからはイヤなんですよ。自分の子に何か危害があるかもしれないと思うと、本当に。そういう意味では、すごく保守的になりました。
自分と同じように苦労して子育てしているのがわかるから、よその子どももかわいいと思えるようになったし、やっぱり仕事でも描くものが変わりましたよね。メアリー・ブレアもきっと同じで、母親になると“愛”の捉え方そのものが、相当大きく変わるんだと思います。『イッツ・ア・スモールワールド』からも、その大きな愛が伝わってくるなって私は思うんです。
メアリー・ブレアの世界が1冊の絵本に
この度、刊行された『Disney メアリー・ブレア イッツ・ア・スモールワールドができるまで』(講談社)は、そんな女性として、母としての愛にあふれた、メアリー・ブレアの生涯を描いた絵本です。
2019年にアメリカで発売されて以降、世界中で人気を博した絵本『Mary Blair's Unique Flair』の日本語版で、画家を夢見ていたひとりの少女、メアリー・ブレアが「ディズニー・レジェンド」になるまでを描いています。
子育てをしながら、精力的に創作活動に取り組んだメアリー・ブレアの物語。東村さんも大好きだという『イッツ・ア・スモールワールド』の世界観をぎゅっと閉じ込めたような、美しい色たちにも元気をもらえる1冊です。ぜひ手に取ってご覧ください。
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東村アキコ
ひがしむらあきこ 漫画家。1975年生まれ。1999年『フルーツこうもり』でデビュー。2007年に連載がスタートした育児エッセイ漫画『ママはテンパリスト』(集英社)が大ヒット。映像化された『海月姫』『東京タラレバ娘』(共に講談社)、『偽装不倫』(文藝春秋)など多数のヒット作を手がけ、2020年には、第70回芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞。
星野 早百合
編集プロダクション勤務を経て、フリーランス・ライターとして活動。雑誌やWEBメディア、オウンドメディアなどで、ライフスタイル取材や著名人のインタビュー原稿を中心に執筆。 保育園児の娘、夫、シニアの黒パグと暮らす。
編集プロダクション勤務を経て、フリーランス・ライターとして活動。雑誌やWEBメディア、オウンドメディアなどで、ライフスタイル取材や著名人のインタビュー原稿を中心に執筆。 保育園児の娘、夫、シニアの黒パグと暮らす。