【専門家監修】「静かにしなさい」をわが子にどう伝える? 子どもが騒ぐ3つの理由から効果的な方法を解説

今すぐできる公共マナーの伝え方を幼児教育の専門家が解説

海外キャラクター編集チーム

バスや電車で静かに過ごすマナーは子どもにどう伝える?  写真:photo AC
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子育てをしていると、社会の目の厳しさに緊張してしまう場面も多々。外出のたびに「今日は静かに過ごせるだろうか」と不安を抱えながら過ごすママやパパも多いことでしょう。

成長とともに子ども自身にも理解できるようになってほしいのが、公共マナー。なかでも、本記事では電車やバスのなかで静かに過ごすマナーにフォーカスして考えてみたいと思います。

お話をうかがったのは、0歳から小学生までを対象とする子ども教室の運営に長年携わっておられる吉田久子さん(以下、吉田さん)です。マナーとはなにか、そして具体的なマナーの伝え方について解説いただきました。

「今の親御さんたちは昔よりも子育てがしにくいだろうな、と感じています」と、子育てと向き合う方に寄り添いながら話してくださった吉田さん。社会のなかで子育てするヒントとして、ぜひ参考にしてみてください。

「静かにする」マナーそのものを考える

そもそもなぜ静かにしなければならない?  写真:photo AC

公共の場では、「走らないで」「静かにしなさい」と目の前のことばかり気になって声をかけがちですが、吉田さんによれば、制止することだけがマナーではないといいます。

「マナーとは、自分や周りの人が気持ちよく過ごすためにはどうしたらよいか想像して行動すること。“こうしなければならない”を身につけるより、“こうすると気持ちよく過ごせたね”の経験を重ねることが大切です。まだ言葉が通じなくても、声をかけることがコツ。マナーを身につける土台は、0歳から始まっています」

たとえば、「ママとパパはバスに乗るのにドキドキしてたけど、○○ちゃんと静かに乗れてうれしかったよ」「窓から見える雲をゆっくり静かに眺められてよかったね」などの声かけが、“気持ちよく過ごせた”の経験となって積み重なっていきます。

「静かにしなさい」と強く言えば、その場では静かになるかもしれません。しかし、それは親の顔色をうかがって静かにしているだけ。理由がわからないままその場が過ぎてしまいます。理由がわからないと、次に同じ状況となった際に自分で考えることができません。「静かにして、周りの人といっしょに穏やかに過ごせた心地よい経験」として、成功体験を積み重ねることが重要だと解説いただきました。

言葉が通じるようになれば、「バスのなかではアナウンスが流れているね。大きな声で話したらどうなるかな」と自分で考えるきっかけを与えるのも効果的。想像できるようになることがマナーを身につける第一歩です。

子どもが公共の場で大きい声を出す3つの主な理由と対応策

子どもが大声を出すのには理由がある  写真:photo AC

では、公共の場で子どもと静かに過ごすためには具体的に何をすればよいのでしょうか。子どもが泣き叫んだり駄々をこねたりする理由を考えていくと、それぞれの理由に対応して事前に準備できることもあると教えていただきました。もちろんすべてのケースがこの限りではありませんが、主な理由と対応策について紹介します。

(1)欲求を押さえつけられているから
空腹時や眠いときなど、欲求が今すぐ満たされないことへのストレスから大きい声で泣くケース
《対応策》
突然の欲求を満たせるように、事前準備をしておくことがコツ。おやつや飲み物のほか、すぐに眠れるようブランケットなどを用意しておくのがおすすめです。普段から使っていて安心できるおもちゃも持参しておくとよいですね。

(2)先のことがわからず、見通しがつかないから
電車やバスに乗っている時間がどれくらい続くか分からないストレスや不安から大きい声で泣くケース
《対応策》
「あと2つの駅で到着するよ」などと事前に声をかけておくと、今の状態がどれくらい続くのか予測できます。心の準備ができていないのに振り回されるストレスを軽減する方法として有効です。

(3)自分に目を向けてほしいから
大好きなママやパパと密着できる移動時間に、気を引きたい思いで大きい声を出し注目されようとするケース
《対応策》
事前にできることとして、普段から絵本を読んだりスキンシップをとったりして、親子のかかわりを大切にしておくことが挙げられます。いつも読んでいる絵本を乗り物のなかでもいっしょにながめれば、ママやパパと同じ時間を共有していると感じやすくなります。

子どもに効果的な伝え方はほかにもたくさんある

あそびながら伝えることが大切  写真:photo AC

親が事前にできることは、ほかにもたくさんあるといいます。たとえば、普段から「しーっ」をあそびとして取り入れる方法や、静かにすることを意味する親子の共通語を持っておく方法など。いずれも、公共の場でとっさに伝えたいときに便利ですね。「静かにしなさい」ではない方法で効果的に伝えるヒントにしてみてはいかがでしょうか。

◆まねっこあそび
「ありさんの声ってどんな声かな?」「まねっこしてみよう」と話しながら、静かに過ごす“まねっこ”であそぶ方法。

◆魔法の言葉「う・さ・ぎ」
【「う」るさくしない・「さ」わがない・「ぎ」ょうぎよくする】の頭文字を取って「うさぎ」。親子の共通語として「今日は“うさぎ”で過ごそうね」「どっちが上手な“うさぎ”ができるか競争しよう」などと伝えれば、やわらかい表現で使えて便利。

◆忍術あそび
忍者になりきって、「静かにする忍術」であそぶ方法。忍術を競って、ママやパパがわざと先に負けるのも面白い。

「小さなお子さんには、“ツール”を活用することもおすすめです。言葉がまだ通じないころには、静かに過ごせるツールを親が事前に準備しておくとよいでしょう。静かに過ごす方法として、できるだけ子どもにガマンを求めないことがコツです」とお話しいただきました。

あそびながら「しーっ」が身につくボードブックもおすすめ

視覚的に&あそびながら「静かにする」を伝えられるのが魅力

自分や周りの人が気持ちよく過ごすためにどうしたらよいか想像する力を育む方法として、絵本を活用するのもおすすめ。『いっしょに しーっ プーさんの あかちゃんえほん』は、まだ言葉が通じない子どもにも、「しーっ」の概念をわかりやすく伝えられる一冊です。

本書では、くまのプーさんの仲間たちといっしょに「しーっ」とした後には、「ちょうちょがびっくりしちゃうから」などの理由が必ず書かれています。吉田さんによれば、静かにしなければならない理由までわかるのが本書の魅力だといいます。「小さなお子さんにはまだ早い気がするかもしれないけれど、絵本として親しんでいくうちに、静かにする理由を考えるきっかけになりそうですね」

さらに、本を読んだ後には「ありさんのように小さな声の反対で、ライオンの声は?」と応用させる方法もあるといいます。「身を守るべきタイミングにはライオンのように大きな声で「助けて!」と言えるように、普段から伝えておく活用方法もありそうですね」

「くまのプーさん」の温かい世界で、身につけたい公共マナーをお子さんに伝えられる一冊

『いっしょに しーっ プーさんの あかちゃんえほん』
定価:990円(税込)
対象:0歳から
サイズ:150ミリ×150ミリ
ボードブック、8見開き16ページ
講談社刊

なぜ静かにする必要があったのか、理由がわかるのも本書のポイント
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かいがいきゃらくたーへんしゅうちーむ

海外キャラクター編集チーム

「うみキャラ」ではなく「かいキャラ」です。講談社 海外キャラクター編集チーム。 ディズニーのゴールド絵本や書籍、東京ディズニーリゾートガイドブックを中心にジブリなど「おもしろくてタメになる」書籍を刊行中! Twitter : @KODANSHA_dish Instagram : @kaigai.character_kodansha

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