「タコ」と「大根」が主役!? 絵本新人賞579作品の頂点に「傑作」のおスミつき

2021年度 第42回講談社絵本新人賞

幼児図書編集部

「講談社絵本新人賞」歴代の受賞作(一部)、左から第27回受賞作『おもちのきもち』、第30回佳作受賞作『まないたに りょうりを あげないこと』、第36回受賞作『ほしじいたけ ほしばあたけ』
新人絵本作家の登竜門として知られている、講談社絵本新人賞。

出版の実績がない人のみ応募ができるこの公募新人賞は、1979年から続く歴史ある賞です。新人賞を受賞した作品は、単行本として刊行されるため、絵本作家デビューを目指す多くの人が、こぞって応募します。

歴代の受賞作には、絵本「だるまさん」シリーズでも大人気、かがくいひろしさんの『おもちのきもち』、シゲタサヤカさんの『まないたに りょうりを あげないこと』(佳作)、石川基子さんの『ほしじいたけ ほしばあたけ』など、書店でもよく見かける名作たちが勢ぞろい。
第42回 講談社絵本新人賞贈呈式 会場の様子
昨年2020年はコロナウイルスの影響で中止となってしまったため、今年は2年ぶり、42回目の開催となりました。

今年の応募総数は、579作品。
その中から選ばれたのは、新人賞が1作品。佳作が2作品でした。

新人賞を受賞し、絵本として刊行される作品は、果たしてどんな作品だったのでしょうか。贈呈式の模様と合わせてご紹介します。

タコがだいこんを盗む!?

第42回講談社絵本新人賞に選ればれたのは、こちらの作品!
『タコとだいこん』伊佐久美
ある日、大根を食べたくなったタコが、大根を求めて、海からはるばる畑を訪れるという、なんとも不思議で奇妙な作品が新人賞に選ばれました。

「タコが大根を盗む」という伝説は、全国各地で言い伝えられ、テレビや本でも取り上げられています。

作者の伊佐久美さんは、小さい頃に本で読んだこの奇妙な伝説が忘れられず、今回思い立って自分の脳内にある伝説のイメージを描いたとのこと。シンプルですが、味のある絵と、吟味された色合いやバランスが心地よい作品です。

「自分の作品として発表したいくらい、悔しいと思いました」

今年の新人賞選考委員である絵本作家の村上康成先生は、『タコとだいこん』をこのように大絶賛。詳しい選評については、次ページでご紹介します。

ハイレベルな戦いを勝ち残った2作品

第42回講談社絵本新人賞、佳作に選ばれたのは、この2作品!
『じごくの 2ちょうめ 5ばんち 9ごう』 玉田美知子
『ハンバーグたべて~』 メグミミオ
『じごくの 2ちょうめ 5ばんち 9ごう』は、時午区(じごく)2丁目5番地9号に住む、九鬼(くき)さんに荷物を届ける郵便屋さんのお話。

郵便屋さんは、届け先の住所に到着するまで、近所の人たちから、九鬼さんにまつわる話を聞き、怖い想像をしながら配達に向かいます。やっとの思いでたどり着いた九鬼さんの家から出てきたのは……

ページをめくるドキドキが楽しい作品でした。


『ハンバーグたべて~』は、とあるレストランにきたハンバーグが大好きなタベスケさんが主人公。隣の席に座ったおじさんが、頼んだハンバーグセットのハンバーグを、なかなか食べないことが、どうしても気になってしまいます。

おじさんは、ハンバーグを食べずに、ついにデザートのパフェまで食べてしまいます。最後におじさんは、ハンバーグを食べたのか……

「ハンバーグたべて~」という純粋な気持ちを、32ページにしてしまうメグミミオさんの力量を感じる作品でした。

選考会では、「今年はかなりレベルが高い」と選考委員の4名の先生方が悩む中、この2作品が見事佳作に選ばれました。
次のページへ 受賞作品の魅力について 選考委員による選評を紹介
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