出版の実績がない人のみ応募ができるこの公募新人賞は、1979年から続く歴史ある賞です。新人賞を受賞した作品は、単行本として刊行されるため、絵本作家デビューを目指す多くの人が、こぞって応募します。
歴代の受賞作には、絵本「だるまさん」シリーズでも大人気、かがくいひろしさんの『おもちのきもち』、シゲタサヤカさんの『まないたに りょうりを あげないこと』(佳作)、石川基子さんの『ほしじいたけ ほしばあたけ』など、書店でもよく見かける名作たちが勢ぞろい。
今年の応募総数は、579作品。
その中から選ばれたのは、新人賞が1作品。佳作が2作品でした。
新人賞を受賞し、絵本として刊行される作品は、果たしてどんな作品だったのでしょうか。贈呈式の模様と合わせてご紹介します。
タコがだいこんを盗む!?
「タコが大根を盗む」という伝説は、全国各地で言い伝えられ、テレビや本でも取り上げられています。
作者の伊佐久美さんは、小さい頃に本で読んだこの奇妙な伝説が忘れられず、今回思い立って自分の脳内にある伝説のイメージを描いたとのこと。シンプルですが、味のある絵と、吟味された色合いやバランスが心地よい作品です。
「自分の作品として発表したいくらい、悔しいと思いました」
今年の新人賞選考委員である絵本作家の村上康成先生は、『タコとだいこん』をこのように大絶賛。詳しい選評については、次ページでご紹介します。
ハイレベルな戦いを勝ち残った2作品
郵便屋さんは、届け先の住所に到着するまで、近所の人たちから、九鬼さんにまつわる話を聞き、怖い想像をしながら配達に向かいます。やっとの思いでたどり着いた九鬼さんの家から出てきたのは……
ページをめくるドキドキが楽しい作品でした。
『ハンバーグたべて~』は、とあるレストランにきたハンバーグが大好きなタベスケさんが主人公。隣の席に座ったおじさんが、頼んだハンバーグセットのハンバーグを、なかなか食べないことが、どうしても気になってしまいます。
おじさんは、ハンバーグを食べずに、ついにデザートのパフェまで食べてしまいます。最後におじさんは、ハンバーグを食べたのか……
「ハンバーグたべて~」という純粋な気持ちを、32ページにしてしまうメグミミオさんの力量を感じる作品でした。
選考会では、「今年はかなりレベルが高い」と選考委員の4名の先生方が悩む中、この2作品が見事佳作に選ばれました。