絵本賞・文学賞2冠! 映画のような絵本『海のアトリエ』の魅力とは
2022年度 第53回講談社絵本賞
2022.07.05
講談社絵本賞
1年間に刊行されるたくさんの絵本の中から、4ヵ月もの選考を経て、たった1冊だけが選ばれるこの賞は、絵本において新分野を開拓し、質的向上に寄与した優秀な作品に対して贈呈されます。
歴代の受賞作には、『ねずみくんのチョッキ』(作・なかえよしお 絵・上野紀子 ポプラ社)、『こんとあき』(作・林明子 福音館書店)、『あらしのよるに』(作・きむらゆういち 絵・あべ弘士 講談社)など、だれもが読んだことのある名作絵本たちがずらりとならんでいます。
2022年度第53回講談社絵本賞には、果たしてどんな絵本が選ばれたのでしょうか。贈呈式の模様と合わせて、受賞作品をご紹介します。
絵本賞・文学賞2冠!
2021年5月に発売後、第31回Bunkamuraドゥマゴ文学賞を受賞し、たちまち話題になりました。
「私にとって、思いがけないおおきな励ましになりました。これからも豊かな物語をもつ絵本を生みだすために、日々の生活をだいじにしながら、『ひらめき』を得るべく考えることを続けていきたいと思っています。」と、受賞のことばをよせられました。
3年ぶりのリアル贈呈式
贈呈式では、選考委員の先生方より、登場する「おばあちゃん」「絵描きさん」「わたし」の心地よい距離感、それを見事に表現した色彩や構成への賞賛のコメントが寄せられました。
選考委員代表として、高畠純先生からは「まずは、ありがとうという気持ちです。」という受賞作への感謝の気持ちから始まる、あたたかい選評をいただきました。
「なんともすがすがしい気分になる。この読後感は今まで感じたことがない。絵は、それぞれの場面、とても丁寧である。細かい配慮がそこに感じられる。堀川さんは決して技巧を見せつけていない。こんなに描くことに達者なのに、さらりと見る人に気持ちよさを与えてくれる。これからも見る人に、目を楽しませ心感じる絵本を描き続けてください。いい絵本をありがとうございました。」(高畠純先生)
堀川さんのお言葉の端々に、広松さんへの思いが込められていて、『海のアトリエ』が二人三脚で出来上がった素敵な絵本であることを感じた贈呈式でした。
「堀川さんの人生に対する豊かな感受性と、そのうえに自らの絵を求めて描き続けてきた画力があってこそ生まれた絵本だと思います。それがこのような大きな評価をしていただけたことがうれしいです。堀川さん、おめでとうございます。」
(広松健児さん)
堀川理万子(ほりかわりまこ)
1965年、東京都生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科修了。画家。絵本作家。
おもな絵本に、今昔物語絵本『権大納言とおどるきのこ』(偕成社)、『くだものと木の実いっぱい絵本』『おひなさまの平安生活えほん』(あすなろ書房)、『けしごむぽん いぬがわん』(ひさかたチャイルド)、『びっくり まつぼっくり』(文・多田多恵子 福音館書店)、『氷河鼠の毛皮』(作・宮沢賢治 ミキハウス)、『よみきかせ日本昔話 いっすんぼうし』(文・令丈ヒロ子 講談社)、『バレエ名作絵本 くるみわり人形』(原作:E.T.A.ホフマン 文・石津ちひろ 講談社)などがある。
講談社絵本賞
絵本において新分野を開拓し、質的向上に寄与した優秀な作品に対して贈呈される賞。第50回を機に、講談社出版文化賞絵本賞から名前が変わりました。
選考委員
・きたやまようこ
・高畠純
・武田美穂
・長谷川義史
・もとしたいづみ