ひろただいさく・みどりの絵本『ピカゴロウ』制作日記
第37回 講談社絵本新人賞受賞からデビューまで 第3回「やっぱりまゆげが大事」
2022.03.23
やっと暖かくなってきましたね。
野花が咲き出すと、春の息吹を感じに散歩がしたくなってきます。でも、いよいよ絵本づくりが佳境なので、もう少し、がんばります。
制作のほうは、原画の締め切りが近いので追い込まれていますが、なんとか先が見えてきました。今まで細かい修正の連続でしたが、ここからはもう手を加えられないことが出てくるので、後悔の無いようやりきりたいです。
細かい修正といえば、表情などはとくに微調整をくり返してやってきました。
表情を直すときは、修正前の絵と修正後の絵を見比べたいので、まず絵をコピーしてから描き直してもらいます。
そして比較しながら直すことで、少しずつ理想的なものに近づけていきます。表情をつくる作業は、私たちの絵本制作でもっとも大事な作業といえます。
今回、ひなちゃんが「やるぞ!」という顔をするシーンを描いたのですが、気持ちが強すぎると怒っているように見えてしまい、弱めると今度はやる気がないように見えてしまって、何度も何度も描き直すことがありました。
このときにポイントだったのが「眉」でした。眉はちょっとした角度で、全然違った感情を表します。
以前の受賞者の種村有希子さんが、制作日記で「まゆげが大事」という回を書かれていますが、まさにそれで、眉の細く頼りない線が、感情の機微を表しています。
(ちなみに私は種村さんの『きいの家出』に出てくる、きいちゃんの絵を描くのが好きで、ご本人にも何度か見せているのですが、やっぱりまゆげが大事です!)
担当さんから、過去に受け持った方のラフを見せていただける機会があったのですが、それを見て、完成間際だったラフの一部作り直しを決めたことがありました。自分たちのものも、まだ何かやれると思えたからでした。
ラフの完成というのは、これをやったから完成という決まりがあるわけではなくて、自分たちで決めることができます。言いかえると、自分たちが完成したと判断したら、いつでもその作品はそこで終わってしまうのですね。
そのとき、既に遅れが出ていたので、私たちはもとより、担当さんも内心まだ直すのかと思われたかもしれませんが、その場ですぐにいくつか変更点を提案させていただいて、担当さんも承諾してくださいました。
おかげで出来た表現は、今でもお気に入りのひとつとなっています。私たちは先輩から勝手に激励を頂いたことで、もうひとふんばりすることができました。
「勝手に」ではなくて、半ば「強引に」お世話になったこともあります。
私たちが佳作をとった年のことです。
授賞式のあと他の受賞者の方と宿泊先が同じになることがあるのですが、そのとき新人賞をとられた石川基子さんを見つけてお話をさせていただきました。
お話しさせていただいたといっても、私が一方的に突撃して、次回新人賞をとるにはどうしたらいいですかと乱暴な質問をしただけのことなのですが、石川さんはいろいろご自分の体験を語って聞かせてくれました。
石川さんも佳作をとった次の年に新人賞をとられていたので、私も熱っぽく語ったことを覚えています。覚えていらっしゃるかどうか。(恥ずかしいので、むしろ覚えていないで欲しいです!)
遅くなりましたが、あらためまして、私たちの作品を新人賞に選んで下さった方々、そして応援して下さった方々、本当にありがとうございました。いろいろな出会いが刺激になり、いま私たちはがんばることができています。
順調にいけば次回、原画はほぼ完成している筈です。本格的な春の訪れとともに、良いお知らせができるよう、がんばります。それではまた。
こちらができあがった絵本です。
ひろたさんの新作絵本!
ひろた みどり
大阪芸術大学芸術学部文芸学科卒業。2013年より、ひろただいさくと共作で絵本の創作を始める。講談社絵本新人賞佳作(2014年)をへて、『ピカゴロウ』で講談社絵本新人賞受賞(2015年)。翌年、同作でデビュー。
大阪芸術大学芸術学部文芸学科卒業。2013年より、ひろただいさくと共作で絵本の創作を始める。講談社絵本新人賞佳作(2014年)をへて、『ピカゴロウ』で講談社絵本新人賞受賞(2015年)。翌年、同作でデビュー。
ひろた だいさく
大阪芸術大学芸術学部文芸学科卒業。2013年より、ひろたみどりと共作で絵本の創作を始める。講談社絵本新人賞佳作(2014年)をへて、『ピカゴロウ』で講談社絵本新人賞受賞(2015年)。翌年、同作でデビュー。
大阪芸術大学芸術学部文芸学科卒業。2013年より、ひろたみどりと共作で絵本の創作を始める。講談社絵本新人賞佳作(2014年)をへて、『ピカゴロウ』で講談社絵本新人賞受賞(2015年)。翌年、同作でデビュー。