ひろただいさく・みどりの絵本『ピカゴロウ』制作日記

第37回 講談社絵本新人賞受賞からデビューまで 第1回「間に合いません」

※この記事は、講談社絵本通信(2016年1月)掲載の記事を再構成したものです。
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はじめまして

はじめまして。「ピカゴロウ」で新人賞をいただいた、ひろた だいさくです。
私たちは二人で絵本を作っていて、私がお話をつくり、ひろた みどりが絵を描いています。

先輩方が書かれた制作日記には、二人で活動をしている方のものはまだないようですので、そのあたりの違いも伝えられたらと思っています。よろしくお願いします。

今の状況を説明すると、ちょうど(受賞作を出版するための)ラフに最終的なOKが出た直後です。

ラフというのは大きな絵コンテのようなもので、これで俯瞰することで全体の流れをつかむことが出来ます。

きちんと出来ていれば、あとは絵を描くだけでいいというくらい大事なもので、これが完成して初めて絵を描き出すことができるのです。

本当は12月中に済ませてしまいたかったのですが、最後の山場のシーンが難航して、結局越年してしまいました。まだ絵が一枚もできていないので、このまま作っていって間に合うのかなあと、ちょっと不安です。

彼女(ひろた みどり)の絵を描く速さと、提出期限までの日数を数えると……数えたくなくなります。

ひととおり描くだけなら間に合いますが、描き直さなければいけない絵も出てくることを考えると、時間が足りません。

夏休みの日記の一日目から「宿題が間に合いません」と書かざるをえないのは、そもそもプランに問題があるような気がしないでもないですが、この絵本に一番適した時期に発売したいということなので、やるしかありません。

ずいぶん先のことなのに慌てるのだなあと思われる方もいるかもしれませんが、絵が描き終わってからも、デザインや印刷等、自分たちだけでは出来ないことが、まだたくさん予定されています。

それに自分たちだけで出来ないことが多いということは、それだけたくさんの人が関わって出来上がるということです。尚更手を抜くことはできません。

ただやることは多いですが、今まで経験したことのない作業に携われるのは楽しみでもあります。時間はぎりぎりですが、せっかく出版できるのだから、そういうところも楽しみたいと思っています。

二人の編集担当

今回、私たちには編集部からふたりの担当がついてくださいました。別にこっちが二人だから、向こうも二人というわけではないようですが、正直これほど頼りになることはありません。

人の価値観は違って、尺度もそれぞれ違うので、たくさんの方に読んでいただく絵本を作るのに、担当さんが二人というのは恵まれていると思います。

私は編集の方というのは、考えるきっかけをあたえてくれるプロだと思いました。

メインの担当のTさんは感じたことを何でも言ってくれるので、こちらに改善する意思があれば作品はどんどん良くなります。もちろん衝突することもありますが、衝突して生まれるものもあります。ここまでは、上手くやれている方ではないかと思っています。ですよね?  Tさん?(もちろん! どんどん面白くなってますよ!→担当より)

でも他の方の日記をみると、図書館へ行ったり、公園へ行ったりしているので、案外ドライな関係なのかもしれません……。なんだか恋愛の相談みたいですね。ちなみにTさんは男性です。(わかりました! 今度図書館に行って、そのあと公園でボートに乗りましょう!→担当より)

普段は電話でやり取りするのですが、喫茶店等で打ち合わせをするときは四人になります。
基本的には私とTさんが話をして、Nさん(穏やかな印象ですが、ときどきズバッと必要なことを言ってくれる方です)が度々補足して下さって、みどりさんは……あれ?

絵描きはしゃべらなくていいと思っているようです。(むしろそこまで職人に徹してくれると頼もしいです)彼女は口下手ですが、絵は確実に四人の中で一番上手いですし!!

ふたりで絵本をつくるときの手順

今後、多少変わってくるような気もしますが、ふたりで絵本を作るときの手順を紹介しておこうと思います。
おおまかには、まず私が物語のテキストと必要な絵のいくつかを彼女に提案して、気に入ってもらえれば、小さな絵コンテのようなものに描き出してもらいます。

このとき物語のイメージを、テキストとは別に口頭でしっかり伝えておかないと、ポイントのズレたお話になってしまうことがあります。かといって絵の指示を出しすぎてしまうと、今度は想像していたもの以上の良さが引き出されなくなってしまうので、どの程度指示するかは気を遣います。一度場面の印象を確定してしまうと、なかなか新しい発想も生まれにくくなってしまうからです。

基本的には感覚が近いので大丈夫なのですが、たまにそのイメージの差異が、あるていど絵の書き進んだ頃に発覚することがあって、そのときには、衝突することもあります。それなりに激しい衝突です。

次にラフを制作します。
先ほど作った小さな絵コンテを、絵本の形にして大きくしたものです。絵ももっとしっかり描くことになります。

受賞するまでは、ここをすっ飛ばして直接下書きに入っていたのですが、今となっては、ここをすっ飛ばすとは何事かというくらい大事なものです。

時間のかかる困難な作業になります。(皆さんそうじゃないかな?)限られたページ数を、お話のどのパートに、どれだけ割り振るのかを決めていきます。

読みやすい流れになっているか、盛り上がりどころを作れているか、足りない絵があれば描き足して、分かりにくい構図があれば直します。

絵が変わると、テキストも変わることになります。そのため、ラフの制作中もいちいち絵に合わせたテキストに作り変えていきます。

そして、担当からOKをもらえれば、ラフを編集長さんに見せてくれます。そこでもOKが出て、やっと絵を描くことが出来ます。今がまさにここです。
たくさんたくさん描いていただきました。ちなみに、ひろたさんはいつもラフをお手紙で送ってくださいます。情緒があっていいですね! (担当)
新人賞を受賞した方が担当する、毎年恒例の年賀状。
恒例の年賀状です。
にぎやかで、よくないですか?
絵本の制作と違って、彼女が自分の好きなように描きました。
こういう絵を見ると、物語にも何にも縛られない絵も、たまには描いてもらいたいなと思います。

以上で、制作日記の第一回になります。半年間くらい続くようなので、また見てもらえれば嬉しいです。
ありがとうございました。

こちらができあがった絵本です。

『ピカゴロウ』
作:ひろただいさく 作:ひろたみどり 講談社

ひろたさんの新作絵本!

ある、しずかな夜、はなちゃんがねていると、 コトコト コトコト おしいれからものおとが聞こえてきました。そこにいたのは、まいごのおばけ、まんまる。

『おばけのまんまる』
作:ひろただいさく・ひろたみどり 講談社
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ひろた だいさく

Daisaku Hirota
絵本作家

大阪芸術大学芸術学部文芸学科卒業。2013年より、ひろたみどりと共作で絵本の創作を始める。講談社絵本新人賞佳作(2014年)をへて、『ピカゴロウ』で講談社絵本新人賞受賞(2015年)。翌年、同作でデビュー。

大阪芸術大学芸術学部文芸学科卒業。2013年より、ひろたみどりと共作で絵本の創作を始める。講談社絵本新人賞佳作(2014年)をへて、『ピカゴロウ』で講談社絵本新人賞受賞(2015年)。翌年、同作でデビュー。

ひろた みどり

Midori Hirota
絵本作家

大阪芸術大学芸術学部文芸学科卒業。2013年より、ひろただいさくと共作で絵本の創作を始める。講談社絵本新人賞佳作(2014年)をへて、『ピカゴロウ』で講談社絵本新人賞受賞(2015年)。翌年、同作でデビュー。

大阪芸術大学芸術学部文芸学科卒業。2013年より、ひろただいさくと共作で絵本の創作を始める。講談社絵本新人賞佳作(2014年)をへて、『ピカゴロウ』で講談社絵本新人賞受賞(2015年)。翌年、同作でデビュー。